一面の銀世界
初投稿です。
目標は完結させること。
目が覚めるとそこは銀世界だった。
何を言ってるか分からないと思うが、俺も何が起こっているのかわからない
「...?」
俺、姫路博峻は、日本の高校に通う平凡な高校2年生。昨晩は、翌日から始まる
中間テストに備えて、自室で英語の勉強をして日付が変わる前に眠りについた。
しかし、肌寒さから目を覚ますと、月明かりに照らされる雪原の真っ只中にいた。
「夢か...?」
俺は、夢かどうか確かめるためにお約束どおり頬をつねってみた。が、わずかな痛みがその部分に走るだけだった。どうやら夢ではないようだ。
まぁ、頬をつねって実際に夢から覚めた描写を見たことはないのだが。
ぼーっとしながら身を起こす。
ふと空を見上げると、今夜は満月のようだ。月の光が雪に反射して、そこまで暗いとは感じない。
雪の上に寝ていたので背中が冷たい。俺の寝ていたところからは茶色い地面が少し見えている。
どうやらそんなに積もっているわけではなさそうだ。
一度状況を整理しよう。
目が覚めたら雪原にいた。眠っている間に何者かに連れて来られたのか?
服装は変わっていない。いつも寝る時に着ているスウェットだ。8分袖なので今の状況はちょっと寒い。
この場所に見覚えはない。そもそも今は5月だ。雪が積もっているとなると相当遠くまで連れてこられたようだ。北海道か、はたまた外国か。
「あんまり寝た気がしないんだよなぁ...」
遠方まで連れて来られたのであれば、相当長い時間眠っていたはずである。
薬などで強制的に眠らされていた可能性だって十分にある。
今が夜ということは、一日以上眠っていたのかもしれない。
しかし、俺は、まだ眠ってから1時間くらいの眠りが浅い時間帯に急に起こされたような
時のような感覚がしてならず、そのことに違和感を感じるのであった。
「異世界召喚かもしれん」
アニメ脳でそんな冗談も思いながら、正面をじっと見つめると、遠くに小さいが人工的な明かりが見えた。とりあえずそこまで移動しようかと考えた矢先、ふと後ろから刺すような気配を感じ振り返った。
振り返った15mくらい先、岩陰から巨大な何かがこちらを見つめていた。
2~3mはあるだろうか。両目は光り、荒い息が聞こえる。
目を凝らしてよく見る。
熊だ。
「マジかよ...!」
目と目が逢う瞬間ヤバいと気付いた。
こちらを警戒しているのか岩陰から出てくる様子はない。
お前冬眠はどうした。
冷や汗をかきながら、瞬時に頭をフル回転させる。
今の俺には剣も防具も回復薬もハチミツさえ無いので一狩りいくわけにはいかない。
そうだ!野生動物と出くわした時は、目を合わせながらゆっくり後ずさりだとどっかの
テレビで見た気がする。
俺は熊と目線を逸らさないようにしておもむろに後ろ歩きを始めた。
しかし、あろうことか熊は岩陰から身を出しゆっくりとこちらに歩いてきた。
「ーーッツ!!」
バクバクと鳴る心臓の鼓動を必死で抑え込みながら、俺は後ずさるスピードを速める。
少しずつだが、熊との距離が離れていく。
ーーーよし、このままいけば逃げ切れる...
ーーーーーーーーーーー カツッ ーーーーーーーーーー
地面の小石が踵に当たり、俺は熊から目線を逸し下を見た。
瞬間、熊は即座に速度を上げこちらへ全速力で向かったきた!!!!
ーーマズいマズイマズイマズイ!!!
俺は勢いよく踵を返し、後ろへ駆け出した!
ーードッドッドッドッドッ!!!!!
熊の足音はだんだん近づいてきている!
ーーーどっかのテレビで見た気がする。熊の走る速さは時速60km
そアドレナリンが大量分泌された脳内で瞬時にそんなことを考えながら後ろを振り返る。
熊は牙を剥き出しにしてすぐ後ろまで迫っていた。
ーーー終わった
今までの記憶が走馬灯のように脳内をめぐり、俺は目を閉じた。
温度の高い何かが俺の左側を通り抜ける。
ーーーーーーザシン!!!
ーーーーーーーーーあれ....? 死んでない....?
斬撃音から目を開ける。
そこには、正面から吹き飛ばされ仰向けに倒れた熊と、炎を身に纏い右手に剣を持つ見知った顔の
女の子が立っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
神崎 佳蓮。成績優秀、容姿端麗、運動もそこそこできる学年でも
なかなかスペックの高い女の子だ。しかし、あまり目立つ行動を取るようなやつ
ではなく、男子ともほとんど話さないので、いわゆる『高嶺の花』といった感じか。
俺も女子と話すほうではないので、1年の時は関わり合いは無かったが、
2年になってから同じクラスになった。
まぁ、2年になってからもほぼ関わり合いは無いのだが
...話したことあったっけ? あ!クラス委員決める時!
そんなことを考えていると、彼女は腰に下げた鞘に剣をしまいながら振り返る。
彼女が纏っていた炎が徐々に消えていく。
足元を見やると、彼女の周囲だけ雪が融けている。
「...大丈夫?」
彼女は長い黒髪をかきあげながら疑問と少しの心配が入り混じった表情で尋ねてくる。
動揺で反応が遅れるが、なんとか返答をした。
「お、おう... 大丈夫だ。怪我はしていない。ありがとう助かった。神崎...さん」
さんをつけるか否か距離感を測りかねながら感謝の言葉を返すと、彼女は怪訝な顔をした。
「どこかで会ったことあった?」
ーーマジか、こいつクラスメイトの顔を覚えていない。いや、正確にはほとんど話したことのない
俺の顔を覚えていないのか...
多少ショックを受けながら言葉を返す。
「...同じクラスの姫路博峻です。」
直後、彼女は しまった という表情になり、小声で「あー...」と呟いた。
「...そうだったわね」
嘘つけ、絶対わかんなかったぞ。こいつ意外と顔に出るタイプだな。
俺が非難の目を向けると、彼女はバツが悪そうに顔を逸した。
神崎の服装はあまり現代の女子高生っぽくない。
黒を基調とした中世風のデザインで、言うなれば、ファンタジー世界に出てくる
女の子といった感じがする。そういう趣味の私服かもしれないが。
しかしながら、腰から下げている剣は紛れもなく本物だ。なんか炎も出てたし。
少なくとも、寝間着で運ばれて来たわけではなさそうだ。
何かこの状況について知っているかもしれないと思い質問を考えていると、彼女の方から
尋ねてきた。
「あなたはどうやってここに来たの?」
やはり何か知ってる風だ。助かった...
「わからない。寝て起きたらここにいた。」
さらに続ける。
「ここはどこなんだ?神崎は何か知ってるのか?」
彼女は少し考えて、それからある意味最も予想通りの返答をしてきた。
「ここは異世界よ」