優しい時間、優しい歌
これはね、遠い遠い…昔?未来?でもどこか遠いところの話なんだ…
優しい優しい女の子がいたんだよ、その子はね、愛らしくて可愛らしい女の子だったんだ
だから彼はその女の子に恋をしてしまったんだろうね…
あのね、彼女は歌が好きだったんだ、彼は彼女が歌う声が好きなんだ
でも…彼女は彼を好きではなかった、彼は彼女に恋をした…
恋って言っても、子供のおままごとのようなかわいい恋…
つまり気持ちの勘違いみたいな物だったんだ
彼は歌う声への気持ちを彼女に向けたものだと勘違いしたんだよ
彼女もそれを理解していた、だから彼のことを好きにはならなかったんだろうね
彼女はくれた好意をちゃんと返す人だから
ああ、懐かしいなぁ…
でもね、おままごとの恋は、いつか本当になったんだよ
一緒にいるうちに、さよなら言いたくない、離れたくない、隣に居たい
なんて、思っちゃんたんだよなぁ…
叶うはずないのに、叶えさせてもらえないのに
彼の願いの期限が切れて、彼女と離れ離れになった彼は代償を支払った
それは、永遠のように感じる時間をスキなひと、彼にとっては彼女を…
何度も何度も殺すこと…
カミサマは本当に悪趣味だ…
あんな苦痛はもう味わいたくないよね…
え?体験談みたいだなって?
そりゃそうさ、これは僕の体験談だからね…
あれ、お迎えが来ちゃった…
彼は彼女に会えたかって?
それはどうだろうね?
気になるなら…
「何してるの?」
え?
いやー…
「私に話してくれないの?」
は、話すってば…
僕の、昔の話をしてたんだ、君と出会う少し前の話を…
「あなた私には昔の話ししてくれないくせに…知らない人には話すんだから…」
え…?
「私、そんなに頼りない…?」
上目遣いは反則だよ…
頼りなくないよ…
ただ、僕がまだ立ち直れてなくて、君に話すのに勇気がいるだけだよ
もう少しだけ待ってて、そうしたら話してあげる…
それでいいかな?
「…今はそれで許してあげる…でもいつか絶対に話してもらうんだからねっ!」
あはは、うん、話すよ
それまではそばにいてね?
絶対だよ、約束…
「…約束ねっ!」
先に戻っててよ、この人にお別れしてから行くから
「ちゃんと晩御飯の時間には戻るのよっ?」
…ちゃんと追いつくって!
さ、行って?
え?
イチャラブを見せつけられたって…
え、あ…ご、ごめんね…
で、でも、今のでわかったでしょ?
彼は彼女に会えたのか、僕から言うとなんか胡散臭くなりそうだけど…
僕は、あの子に会えたんだぁ、だからね、僕は今幸せなんだよ
ねぇ、君も、そろそろ思い出した?