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第3話 暗黒騎士フウガ? 人違いです!

「殺処分って、まさか殺されるってことじゃないよな!」


 赤い鎧の女は僕から目をそらす。


「本当は新しい暗黒騎士を異世界から召喚しなければならないのに、術の最中に私がフウガを思い浮かべてしまったから……」


「異世界? 今、異世界 って言ったのか?」


 異世界って何だ! 遠い宇宙の星か? 四次元の世界みたいなものか?

 ロシアどころか日本から近いのか遠いのかも分からない。そんな話を鵜呑みにするほど子供じゃない。


「そう、このコロナ国はお前の住む国とは異なる世界に存在している。私たちは将軍フウガの死に伴い新暗黒騎士の召喚を行った。結果失敗し、お前がここにいるのよ」


 何を言ってるんだ? ドッキリ? 狂人? でも……もしかしたら本当なのかも。こんなに大掛かりな仕掛けで僕を騙す必要があるとも思えない。


「本来なら強い戦闘力を持った幼子を私たち三聖騎士が召喚して、暗黒騎士として育成するのだけど……私の雑念が混じってお前が……」


「……僕は帰れないのか?」


 彼女の真剣な顔がこの状況がリアルだと語っている。僕は絶望的な状況に膝から崩れ落ちた。


「一月後にもう一度召喚をやり直す。暗黒騎士が2人いてはいけないので、お前が生きていると……」


「そんなバカな……」


 この娘も、他の2人の少女たちも、こんな理不尽で残酷な仕打ちが許されると思っているのだろうか? 何とも思わないのだろうか?

 呆然自失、意気消沈とはこのことか。この理不尽な扱いに抗議して是が非でも解放してもらわなければいけないのに、その気力が全くでない。


「……」


「……」


 お互い下を向いて黙り込む時間が続いた。


「お前……名前は?」


 少女が唐突に尋ねる。今更名前を聞かれてもと思うが、反発する気持ちも起きない。


「光岡……悠馬だ」


「ユーマか、……何だかフウガに響きが似ている」


 そう言った少女の表情に少し微笑が浮かんだ気がした。


「そいつ、そんなに僕と似てたのか?」


「いや、顔と名前だけだな、フウガは“僕”なんて言わないし、もっと横柄で横暴で粗野で乱暴で……とにかく皆に恐れられていたから」


 僕の顔で恐れられるって何の冗談だよ! この顔で凄んでも幼稚園児だって怖がらせられないよ!

 何でそんな正確が正反対の別人の替わりに呼び出されなければいけないんだ!


 頭を抱えて唸っていたら、カチャっという音がした。

 顔を上げると牢の扉が開いている。


「左に進むと地下道に降りる階段がある。急いで行け」


「逃がしてくれるのか? 逃げたといって後ろから刺したりしない?」


 少女は答える代わりに両手を開いて上にあげた。丸腰だよと言うことだろうか。

 それを信用する材料は何もないけど、ここに居たら確実に殺される。

 僕は震える足に無理やり力を入れて、牢の外へ駆け出した。

 暗い廊下を必死に走る。もちろん、時々後ろを振り返って赤い鎧の少女が追って来ないことを確認する。

 少女は胸の前で手を合わせ、今にも追いかけて来そうに見えたので、僕は彼女の視界から一刻も早く消えるように加速した。


 --------------------


 どのくらい走っただろうか? 多分5分も走ってないだろう。

 いくら命がかかっていても全力疾走なんてそんなに続くはずがない。

 走っているのだか歩いているのだか分からない状態になった時、遥か前方に壁のランプの暗い灯りに照らされた上り階段が浮かびあがって見えてきた。

 手をついて、四つん這いになりながら急な階段をよじ登る。

 狭い小屋の中に出た。棚の上に様々な道具が所狭しと並んでいる。物置のようだ。

 木の扉を蹴破って外に出ると、外は既に夜だった。風が涼しくて気持ちいい。

 僕の世界とほとんど変わらないけど少し大きめの満月があたりを照らしている。


 地面に白線が引かれた運動場のような広場に木の杭が何本も立っていて、中には麻紐がぶら下がったものもある。


「処刑場じゃないよな」


 涼しさが一転して寒気に変わってしまった。

 逃げるにしても何か身を守る物が欲しい。棒切れ一本でもいいから何か武器になるものがないと心細くて進めない。

 急いで周囲を見回すと、4~500メートル先に少し大きな倉庫のようなものがある。

 もしかしたら武器庫かもしれない、うまくすると銃なんかが手に入る可能性もある。

 可能性というより、かなり都合の良い願望ではあるが、とにかく忍び込んでみることにして態勢を低くして中腰で駆け出した。


 倉庫の中は薄暗く無人だった。

 音をたてないように家探しすること数分、なんという幸運! 作業台の上で本当に銃を発見した。

 ライフル銃のようなその鉄砲を抱えあげて観察すると、何だか古い骨董品のような銃だ。

 火縄銃まではいかないが、かなり年代物のマスケット銃みたいな代物だ。


「う、撃ちかたがわからん……」


 こんなものより、剣か何かがあった方がありがたいのに。

 僕は銃を作業台にそっと戻してもっと奥を探してみることにした。


 倉庫の真ん中に不自然に立っている鉄の柱を回り込んで進むと目の前に突然、巨大な人影が現れた。


「ヒィーッ!」


 情けない叫び声が出て尻もちをついた。

 見上げる巨大な人影は鎧を着込んだように角張り、至る所に突起がある。


「確か、ランサー……」


 昼間、建物の上から見下ろしたロボットだった。


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