010話〜スキル〜
「ちょっと待って欲しい
そのスキル取得の本を俺が読んで
カルノになんのメリットがあるんだ?」
「メリットですか
それは簡単ですよ
スキル取得を行ってもらったあと
私達にスキルの解析をさせて欲しいのですよ。」
「スキルの解析・・・
どんなスキルか分からないのか?」
そう言うとカルノは少し申し訳なさそうな顔をした。
「はい・・・
残念ながら私達の技術では内容までは分かりませんでした。」
(なるほど、どんなスキルか知りたいから
俺に読ませて能力を知ろうって言うことか。)
「その本を読んだ後はちゃんと帰れるのか?」
「その点はご安心ください
解析が終わり次第
元の場所にお送りします。」
俺は悩んでいた。
正体のよく分からない奴らから渡された本を読んで嵌められたらただの馬鹿だ。
(でも・・・)
「わかった
その本を読もう。」
「そうですか!
ありがとうございます
と、その前にひとつ言い忘れていたことがあります。」
「言い忘れていたこと?」
「はい、それは本の位についてです」
カルノはゆっくり立ち上がると俺の周りで歩き始めた
「本には先程言った通り位があります
位が高ければ高いほど習得できる能力の質が上がっていくのです。」
カルノは少し歩いて俺の目の前でピタリと止まった。
「例えばあなたが読んだ本です。
あなたが読んだのは序ノ本というものです
序というのは1番位が低く負担が少ないと言われています
これから読んでもらう覇はこの世界では1位2位を争う程位が高くその分負担もかなり大きいと思われます
それでも読まれますか?」
(俺が読んだ本より負担がでかいのか
そんなの本当に耐えられるのだろうか。
それでも、読まなきゃ俺は弱いままだ。)
俺は覚悟を決めた。
「あぁ、1回読むって言ったからには読むよ。」
「わかりました
もしもの場合は私共が手助けに入りますので
くれぐれも自我を保ってくださいね。」
カルノとザラは少し距離をとった。
「いくぞ!」
俺は本を手に取って一気に開いた。
その瞬間、体の中に太陽が生成されたのかと錯覚するほどの激痛と熱が迸った。
前のような感情の嵐は激痛の影に消えて
痛みと熱だけが残った。
(熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱いあついあついあついあついatui...atui...)
俺は地面に倒れると全身を掻きむしりながら転がり回った。
「ああああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああ!」
視界が赤く染まる。
恐らく痛みで頭を掻きまくったせいで血が出て目に入ってしまったのだろう。
もう何も出来ない。何も考えたくない。
─────もう死にたい─────
そう思い俺は生きることを諦めた。