001話~アノ時~
「これにて冒険者試験は終了となる。」
教官が終了の合図をかけた。
(受かるといいな。)
そんなこと考えながら帰る準備をしていた。
『俺たちはあの時異世界に飛んだ。』
────────2ヶ月前────────
今でも鮮明に覚えているあの美しくも恐ろしいゲートのことを。
それはこの世のすべての『綺麗』を具現化したかのような輝きを放っていた。
もちろん、見ないふりなんてできるわけがない、人間なんて好奇心の塊だ俺たち二人は『それ』に触れこの世界にやってきたんだ。
最初は訳が分からなかった、いきなり目の前が暗転したと思ったら目の前に現れたのは見知らぬ景色と聞き覚えのない言語だった。
現実ではありえないような光景に頭が情報処理に追いつかなくなったのか今まで感じたことの無いほどの頭痛が襲ってきた。
「お・・・い、月・・・大丈夫・・・か?」
耐えられないような痛みに必死に耐えながらも健はそう聞いてきた。
「あ・・・あぁ・・・大丈夫だ。」
こんな状況でも健は冷静だった。俺なんて、痛みで何も考えたくなくなっていたのに。
少しずつ痛みが引いていくのが分かった。
人間の適応力はどうやら俺が思っているよりもすごいようだ。
「こ・・・ここはどこなんだ?」
そんな台詞しか出てこなかった。
明らかにさっきまで歩いていた道ではない、地面は石レンガで舗装されており建物には植物が無数に絡まりついていた、おそらく路地裏のような場所なのだろう。
よく見るとさっきまで持っていた鞄が何故か消えていた。
「俺にはわからないな。
月、向こうに人がいるみたいだから行ってみたいか?もしかしたら何か聞けるかもしれないぞ?」
確かに人の声は聞こえるが、確実に日本語ではない。
話を聞くのは難しいように思えた。
「う~ん、行くだけ行ってみるか。話が通じるとは思えないけどここにずっといるよりはマシだろうからな。」
正直、この狭い通路はジメジメしていてとても息苦しくているだけで辛いのだ。
健は、ここにいるのが相当いや嫌だったのか俺の返答を聞くとすぐに踵を返して「じゃあ、早く行こうぜ」と言って早歩きで出口へと向かった。
少し歩くと、大通りと思われる開けた場所に出た。
「な、なんだ・・・あれは。」
俺よりも先を歩いていた健が口を大きく開けて上を見上げて突っ立っていた。
普段そこまで取り乱した顔を見たことがなかったので何かすごいものを見たのだろう。
俺も健を見習って同じ方向を見てみる。
「お、おぉ・・・」
するとそこにはありえないものがあった。
山のような岩が無数に浮いていたのだ。
例えるなら宇宙に浮かんでいる星ような感じだ。
俺たちはよほど間抜けな顔をしていたのだろう、周りから笑い声が聞こえた。
「健、俺たち笑われてるみたいだぞ」
そう彼に告げると、ハッと我に返って下を向きながら早歩きで歩いていた。
相当恥ずかしかったようだ。
俺たちは暫く街を見回しながら歩いていると、一つの店が目に入った。
看板に本が描かれていた、本屋だろうか。
何故か、その店だけ違和感を感じるのだ。
「なぁ、健
あの店寄ってみてもいいか?」
健に許可を取ると俺は店内へと足を踏み入れた。