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「ここが連中の隠れ里……なんだ鉱山の隣ではないか」

「すげー山だろぉ!俺たちの山神様が作ったんだ!」

「へー凄いんですね山神様って。富士山ほどじゃないけど」

「ふじさん?」

「あーなんでもないんです!さあ!俺たちを里に案内して説得の手伝いをする約束、守って下さいよ!」

「おうよ!任せろ!」


 ラムホは目的地のわかりやすさに唖然としていた。

 守はすっかりこの土童族、名前はサジオと言うらしいが、この男とすっかり仲良くなった。

 そのためラムホが言っていた討伐から説得へと作戦を変更してもらう様守はラムホに頼み込み、ついに説得することに成功した。


「忘れるな!貴様ら二人とも私の監視下だと言うことをな!」


 などと言っていたがもともと戦闘狂な訳ではなかったラムホもこの提案は有り難かった。

 そして里の入り口まで来た。

 入り口には何人もの土童族と長耳族が身構えていたが、サジオが拘束もされず入り口までやってきて話をすると納得した様に構えを解いた。

 サジオに案内されるまま里の奥地まで行く道中、様々な土童族や長耳族、特に土童族から激しい敵意を向けられ、守は生きた心地がしなかった。

 ラムホは内心襲われることを心配はしていたが、王国騎士としてのプライドがそれを押さえ込んだ。


「さて、ここが俺達の長の居る場所だ。さっ!入った入った!」

「はい!し、失礼しまーす……」

「全く、怖気付いて居るのか?失礼する!」


 入り口にあった布をめくって部屋に入る。

 部屋は薄暗かったが壁には鉱山道具の様なものが多数掛かっておりそれらは飾られるだけではなく丁寧に使い込まれたものだった。

 さらに奥に進んで行くと一人の男が座り込んでいた。

 薄明かりに照らされたその身体はサジオの数倍は屈強であり身体中至る所に傷があった。


「お前さん達か……国が寄越した使いってのは」


 その眼光は鋭く髪は正しく怒髪天を貫くと言った風であり、髭も激しく逆立っていた。

 それは普段からなのか怒りからなのかは守もラムホも彼の声色から感じ取ることはできなかった。


「いかにも!私が王国騎士炎鳥隊隊長ラムホ・ンエ・ドーヴァだ!」

「あー……天野 守です」

「二人とも遠路はるばるご苦労さんだな……用件はなんだ?我らの鉱山復興に人員を割きにきたわけでもあるまい」

「そちらも名を名乗るべきではないか!?」

「あー……いっつも長長って呼ばれてっからすっかり忘れてた。失礼した。儂の名はカンギだ」


 そういうとカンギは軽く頭を下げた。


「では我々の用件は……守!」

「え?俺から言うんですか?」

「当たり前だろう!貴様から私に頼んだのだ!責任は最後まで持て!」

「わかりましたよー……あのですね……この問題の解決に我々が尽力いたしますので、どうか王国兵士とのいさかいや誘拐などはやめていただけないかと……」


 そう言うと先ほどより鋭くなった眼光が守を見つめる。

 しばらくしてカンギは口を開いた。


「用件はわかった。だがそんなことよりお前さん……神の痕跡が見えるぞ。我が部族では山神様を信仰して居るがそんな形の痕跡は見たことがねぇ」

「は!?神?なにを言ってるんだ貴様」

「ちょっと嬢ちゃんは黙ってくれ。今この兄ちゃんと話をしてんだ」

「嬢ちゃ……分かった」


 ラムホは突然の発言に困惑するがカンギの一言で抑えられた。


「たしかに、俺は女神様の加護でこの世界に来れた様なものですから……」

「世界を超えてくる……そんなことが出来る神を俺はしらねぇ。本当なら珍しいもんに会えたと喜ぶべきだろうな……しかしだからこそ残念だ」

「残念?何が……」

「お前さん達を国に返すわけにはいかねぇ……男は鉱夫に、女は奴隷にする」

「お、おい守!不味いぞ!貴様!我が国から少しばかり人員をさらったところでその程度では問題の解決にならんではないか!」


 ラムホは剣を抜こうと身構える。


「たしかにな……でもこれは理屈じゃねぇんだ。こうしないと納得しない奴がいる、長としちゃそいつの声も聞き入れねぇといけねぇ」


 そう言うとカンギが立ち上がる。

 土童族にしてラムホや守を上回る大きさだった。


「ま、待ってください!最後まで話を……」

「こっのクソ親父っ!!」


 その時入り口の布がまくり上がり凄まじい勢いで何かが突っ込んできた。

 それはラムホと守の間を抜けカンギに衝突した。

 その瞬間カンギは部屋の際奥まで吹き飛ばされその壁を突き抜けてしまった。

 よく見ると彼を突き飛ばしたのは土童族の少女のようだった。


「人の話は最後まで聞けってばっちゃによく言われてたでしょーが!」


 吹き飛ばされた瓦礫の中からゆらりとカンギが立ち上がる。


「いててて……全くお前さんにはかなわねぇよ……しかしそんな粗暴な態度じゃいつまでたっても巫女にはなれんぞ」

「うっさいクソ親父!アタシは巫女なんかにはなりませんよーだ!」


 その唐突なやりとりに唖然としていた守とラムホに気づいたのか土童族の少女は二人に向き直った。


「あっ!ごめんなさい!アタシのクソ……父がご迷惑をおかけしてます!」

「あー……それよりお父さん大丈夫なんですか?なんか凄い勢いで吹っ飛ばされましたけど」

「大丈夫です!父はアタシより丈夫に出来てますから!」

「それよりもだ!我々の意見を族長が聞き入れないとなると困ったことになる……」


 ラムホが難しそうな顔をして守の方を見る。


「そうか……もし俺達が失敗するか帰ってこなかった場合……」

「王国軍がここへ討伐隊を送り込んでくるはずだ!姫が私の安否を心配して陛下に嘆願してでも派遣することになるはず……」

「ど、どういうことですか!?里が銃撃されるって事ですか!?」


 少女が守とラムホに話しかける。


「ああ。残念ながら鉱山の土童族はおろか長耳族のいる森林まで襲われるかもしれない」

「そ、そんな……アタシ達どうすれば……」


 誰もが沈黙してしまった時、ふと守の耳に懐かしい声がした。


「守様……聞こえますか守様」

「アイガ様!?」

「「?」」

「あ、なんでもないです」


 守は二人から少し離れた場所で誰にも聞こえないように話し始める。


「アイガ様なんですか?今すっごく不味い状況なんですけど!?」

「それは分かってますけど守様に絶対役立ついい知らせと悪い知らせを持ってきましたよ!!」

「へ?」

「どっちから聞きたいですか?」

「……悪い方から」

「私が守様を見ていたらこの前の魔力放出の余波がすごくて……今えらいことになってます」

「え!?それってもしかして……」

「そうです……この騒動の原因……守様です」

「は?」


 守は愕然とした。

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