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反逆

 守は魔力の制御に慣れつつあった。

 食事も普通のもので問題なくなった。

 というか膨大すぎる守の魔力を前に若干の魔力減衰より、守の精神衛生を守ることを優先した結果である。

 今日も守は壊れたドーム内で魔力の制御に励んでいた。


「やっ!はっ!そりゃっ!」


 今日の訓練は様々な方向に設置してあるロウソクに遠距離から着火するという訓練だった。

 昨日は水面を爪先立ちで歩く訓練をしたっけなぁ……などと守は訓練しながら関係ないことを考える余裕まで生まれていた。


「やーやー盛が出ますなー」

「最近は派手な爆発も無くて安心して監視ができるな!」

「あ、そうだ!練習してたらこんな事も出来るようになりましたよ!」


 そういうと守は指を鳴らす。

 するとさっきまで付いていたロウソクの炎が消えた。

 もう一度鳴らせば今度は全てのロウソクに火がついた。


「おーここまでの精度になるとは……こりゃ実戦訓練も近いなー!」

「そ、そうですか?へへへ」


 ルーベの発言に思わず照れる守。


「それで実戦訓練とは具体的に何をするんだ?」

「そーれーはー……反逆者討伐でーす!」

「は?反逆者ってだれですか?」


 ラムホの質問にルーベが答えたが守は意味がわからなかった。


「ああ、ずっとここに篭っていた貴様は知らんかもしれんが最近土童族がこちらに鉱石を売らず土壌悪化の原因が王国にあるだのと訴えていてな」

「それだけじゃなくて長耳族とも手を組んでるって話だよー迷惑だよねー」

「待ってください!それは話し合えば解決する問題では?」

「それがちょっとした賠償とかならまだよかったんだけどさー」

「この戦時中に兵士を鉱山復興の人員として回せと言うわけだ!冗談ではない!」


 怒りをあらわにするラムホ。


「最終的に話は決裂、痺れを切らした過激な奴がうちの兵士とやり合っちゃったりー、そのまま誘拐したりー」

「これでは我が国に喧嘩を売っているようなものではないか!我が国は特別あの鉱山の資源を優先的に購入してやっていたと言うのに!」

「それで俺の用事は話し合いではなく反逆者の鎮圧と言うことになるわけですか……」


 守は今回の件を解決すれば一つ世界の混沌とやらを解決できるのではないかと考えた。

 原因が自身の膨大な魔力の放出だったとも知らず。




「はー完全に森だわ……こんなんどうしろと……」

「ぼやいてないで行くぞ!」

「今回は随分と軽装なんですね」


 守は森の中をラムホの案内だけを頼りに歩いていた。

 今回彼女はレザープレートではなく何処にでもいる町娘のような格好していた。


「これは敵の近くに行っても怪しまれず油断を誘うようにだ。一応中には少なからず防具が装備してあるぞ、ほれ」


 そう言ってラムホは上着をめくる。すると若干筋肉質だが女性的な曲線に沿って薄いレザーの鎧が装着されていた。


「なんか……下着見せてるみたいで恥ずかしいからやめてくれません?」

「!!……っっーー!!忘れろ!」


 守が指摘するやいなやラムホは顔を真っ赤にして鎧をしまった。

 その時、守の耳に誰かの小声が聞こえた。


「……を……せよ!」


 次の瞬間火球が森の木々を焼き払いながら守達の方向へ飛んできた。


「うわっ!」


 守は咄嗟に盾をイメージして防御しようとした。


「反逆者め!そこか!」


 その時、後ろからラムホが飛び出して火球に向かっていった。


「ラムホさん危な……」

「フンッ!!」


 ラムホは剣を抜く勢いのまま火球を切りつけた。

 すると火球は真っ二つに分かれてラムホから左右の方向へ衝突し、爆発した。


「この程度の魔法で私が屈すると思ったか!」


 ラムホは切っ先を火球が飛んできた方向に向ける。

 守がよく見ると森の中に金髪の長い耳をした人間の様な存在を確認した。


「素直に投降しろ!そうすれば命は保証してやる!」


 今度はラムホから見て右側からどしどしと凄まじい足音が聞こえた。


「!!土童族か!」

「いかにもぉ!」


 茂みから飛び出した土童族の姿は守から見てラムホより小さく見えたが、ヒゲを蓄えている事から成人した男性だと思えた。


「せいっ!」

「っぐっ!」


 土童族の男はその小柄な姿から想像もつかない力で防御したラムホを剣ごと吹き飛ばした。

 しかしラムホは衝撃をうまく受け流し素早く戦闘態勢に戻った。


「どうした守!お前も早く戦え!」

「あ!は、はいっ!」


 守はラムホに檄を飛ばされた事で自分が棒立ちで戦いに見とれていたことに気づいた。

 慌てて守は思考を始めた。

 現在、守が使える魔法は炎と水の二属性のみである。

 その中でも殺傷しづらく暴徒鎮圧に向いているもの……そう考えていた守はかつてテレビで暴徒鎮圧に散水車を使っていたことを思い出した。


「ラムホさん!そいつから離れて下さい!」

「!!わかった!」


 守の声を聞いたラムホは土童族から素早く離れた。


「くらえっ!」


 守が掌を土童族に向けるとそこから膨大な量の水が発射された。


「なんでぇ!?ごぼっ!ガボボボ!!」


 突然水が発生したことに驚いた土童族は防御姿勢をとったが水は隙間をぬって視界を遮り口や鼻に入り込んだ。

 そしてその水圧の勢いたるや力でラムホを圧倒していた土童族を近くの樹木に押し付けてなおその勢いはとどまることがなかった。


「やめっ!ガボガヘッ!ごうぶぐずるっ!ブバボッ!」

「何!?やめろ!守!止めろ!」

「え?あー……はい」


 守は水の勢いを抑え、完全に止めた。

 土童族がやっとまともに呼吸ができたのか涙と鼻水を垂れ流しながら口で大きく息を吸っていた。


「残る長耳族は……逃げたか!味方を見捨てるとはなんと薄情な!」


 ラムホは誰に言うでもなく大声で叫んだ。


「さて」


 そう言いながらラムホはしゃがみこんだ土童族を見下ろした。


「ひいっ!こ、降伏はしたがお前らには何もはなさねぇぞ!この薄情もんめ!」

「そうか、守!おかわりを所望の様だ!」

「はい?……わかりました」


 守は掌を土童族の顔に向けた。


「わかった!話す!話させてくだせぇ!」


 最終的に彼が過激派の隠れ里とやらを話すのに守はラムホから五回おかわりを命じられた。


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