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解析

 守は右腿の手当てを受け無事処刑場から出ることが出来た。

 少し右足に違和感を感じながら歩いていると、後ろからレザープレートメイルの擦れる音と駆け足が聞こえた。

 振り返ると兜をしているが守はそれがラムホだと気づいた。


「あのぉ……さっき案内は受けましたから魔法研究所には自力で行きますよ」

「そう言う問題ではない!貴様は未だ身分怪き者のままなのだからな!監視は付けなければ!」

「だからって普通一番偉い人が監視するんですか?」

「さっきの貴様の力から考えて騎士隊で最も優れた私が監視を行うしかないだろ!」

「随分自信があるんですね?俺はそんな自信もてないですよ」

「上に立つものの条件であり義務であり当然のことだ!それだけの鍛練もしている」


 二人が話している間に案内された扉の前に到着した。

 すると扉が突然開いた。

 守は自動ドアかと何も考えずに入った。

 後ろを振り返るとラムホが不審そうにドアの周りを見て回っている。


「召使いもそれらしき仕掛けもないのに開く扉か……よく恐れもせずに入るな」

「怖いんですか?」

「な!お前の心配をしただけだ!私は恐れてなどいない!」


 兜に隠れていたが恐らく顔を真っ赤にして怒ってるであろう声が聞こえたので守はそれ以上無駄話はしないことにした。

 足元に案内光が出た時も、エレベーター状の台に乗って登った時も確実にラムホはびっくりしていたが、守はそれに触れることなく歩みを進めた。


「あー聞こえるかねー?」


 頭上から声が聞こえたのに対しラムホは聞こえるか聞こえないかでひゃん!とか言うので笑いそうになったがそれを噛み殺して返事をした。


「聞こえます!俺は天野 守っていいます!」

「ボクはここの所長、ルーベ・ソジエだよ。まず君達の要件を聞きたいのだけど」

「わ、私は騎士隊長をしているラムホ・ンエ・ドーヴァだ!この男を貴方の研究に役立てるよう姫様から命じられている!」


 なんとか持ち直したラムホが威厳を持って虚空に話す。


「ふーん。ただのモルモットって訳でもなさそうだね。人間種みたいだし。普通なら……長耳種を連れてくるはずだしね」

「こいつは道具も詠唱も無しに魔法を発現させた怪しい奴だ!見た目に惑わされないことだな!」



「ふーん……の癖に……」

「え?なんか言いました?」

「な!なんでもないよ!そうかーそれは凄い人間だね!」

「?」


 守はルーベの最後の方の言葉が聞き取れず聞き返したが、ルーベははぐらかすような返事をするだけだった。


「じゃあ次の部屋に天野君一人で入ってもらおっかー」

「なっ!こいつは私の監視の下で動くのを許可してるだけだぞ!そんな事は!」

「姫様のご命令なんだよねー?じゃあボクの指示には従ってもらわないとー」

「んぐぐ……わかった!ただし検査が終わったら即こちらに身柄を返すように!」

「いーよー」


 守の返事などうかがわず早々と話はまとまっていった。


「よし!という訳だからさっさと行ってこい!」


 ラムホはそう言うと守の背中を強く押した。


「わっ!なにすんですかもー!」

「彼女は思い通りにいかなくて不機嫌なだけなのさ。さぁ案内光に従ってついてきてね」

「ふ、不機嫌になどなっていない!」

「ふふふ……初対面、というか対面もしてないけどわかりやすい性格だね隊長様は」

「き、貴様っ!」


 二人は引き続き何かの会話をしていたがそれを気にしないで案内光に従い先を進んで行った。




 しばらく進むと守は天井が見えないくらい暗く、大きなドーム状の空間にたどり着いた。

 周りの素材は何かの金属で覆われている。


「わーすっげぇ……」

「ふふふ……凄いだろう。国内最大級の魔力測定装置だ。地面から壁までを耐魔鉱で覆っているから好きな魔法を好きなように放つといい。測定は……今回は君の未知数さを考慮して非目視の魔力圧測定にしようか」

「は、はぁ」


 守は言ってることの殆どがわからなかったが好きなように魔法を放てと言われたので、どうすればいいか考えることにした。


「えーと……某野菜のZ戦士みたく体からパワーを吐き出すように……」


 守は前回盾を生成した時に自分の内側にあるエネルギーの様なものを引き出す感覚を得ていた。

 なので今回はそれを具現化するのではなく、ありのまま外へ吹き出させようとした。


「んんんんん……んぎぎぎ」


 まず守は自分の身体にあるすべてのエネルギーを内側に、内側にと集め始めた。


「そ……そろそろか……ハアァアッ!!」


 次に守は溜め込んだエネルギーを自分の身体を通し、爆発するイメージを込めて放った。

 次の瞬間、ドームの金属が軋む音を立てて亀裂を走らせたと思えば天井、守には見えなかったがそこにある蓋になった部分が空の彼方へと弾け飛んだ。


「う……うわぁ……星空がよく見えるー……じゃないよ!なんかドーム壊しちゃった感じだよどうしよう……」


 よく見ると自分が入ってきた扉も廊下の壁まで吹き飛んでいた。


「な!なにが起きた!……貴様が!貴様がこれを……!」


 その吹き飛んだ扉のあった所からラムホが走ってきたと思うと状況を察したのか、剣を抜き守に切っ先を向けてきた。


「国庫の莫大な財を費やしてやっと完成したばかりの施設を破壊するとは……貴様は敵国のスパイか!!」

「ち、違いますよ!……これは……」


 守は自分の無罪を訴えようとしたが状況が状況なだけに言い訳しようにもどうしたらいいか悩んでいた。

 その時、ドームの今は星空が見えるドームの天井から椅子が降りてきた。


「いやーまさかこの装置で測定不能とは……」

「その声……貴様がここの所長か!」


 ラムホが視線を椅子の方に向けたので守もそちらを確認した。

 椅子には黄緑色の髪をした、耳元に大きなカバーのついている豪華な装飾の丸眼鏡をかけている、幼女とも取れそうな少女ことルーベ・ンソジエがいた。


「すっごいな君は!本当に人間種なのか!長耳族でもこれほどの魔力の物はそうはいないぞ!実は魔族なんじゃないか?」

「え?あ!ちょ!そこは!」


 ルーベは椅子から降りると身体中をまさぐり始め特に尻を念入りに触っていた。

 守は急に触ってきたルーベに何もできずにいた。


「尻尾も切られた痕跡もない。本当に混じりっけのない人間種だわこの子」

「きっ!貴様っ!淑女が殿が……男の体を!その……触るとは何事だ!」

「ん?へー……隊長様そういう事気にする子なんだー」

「え!?あ!いや!その……違う!それよりもこの状況をどう報告するつもりだ!」


 ラムホは兜で隠れてはいたがあからさまに動揺しているところをルーベにからかわれていた。


「んー修繕費はこの子持ちで良いんじゃない?」

「へ?」


 守はモルモットから借金持ちにジョブチェンジした。

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