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出会い

 ある朝、いつも通り灰色の青春を浪費するために、学校へ登校する少年の姿があった。

 学生服はところどころ着崩されており、彼が真面目な生徒と言うわけでもない事がうかがえる。

 少年の名前は「天野(あまの) (まもる)」。

 バッグの中にも教材は殆ど入っていない。


「仮病って事でサボれないかなぁ……」


 そんなことを呟きながら最低限遅刻だけはしないように学校へ向かって歩いていた。

 その時胸に違和感を感じた。

 本当に体調が悪くなったか?などと守が考えていると、違和感は胸の激痛によって確信へと変わった。


「あっ……ぎぎっ!」


 いつもは意識しない胸の鼓動が早鐘のように痛みを伴って感じた。

 守は胸を押さえながら道端に倒れた。

 周りの誰かが心配そうに駆け寄り話しかけてる様な気がしたが、守は胸の痛みで正しく状況が認識できなかった。


「い……嫌だ……」


 守は死ぬ事が怖い訳ではなかった。

 ただこのまま何にもなれず何もできないまま消えてしまうのが嫌でしょうがなかった。

 視界は真っ白になり胸の痛みも薄らいでいった。





「守様……守様……」


 真っ白な視界に景色を取り戻し始めた頃、守は自分を呼ぶ声を感じていた。


「だ、誰だ……」


 そこは上空も地面もない只々星空が広がる空間だった。

 まるで宇宙の中にいる様な未知の感覚に、守は本当に自信が死んだことを確信した。


 その何もない宇宙に一人の少女が立っていた。

 この世のものとは思えない輝きを持つ桃色の髪が足元までふわりと伸びていた。

 全てを見透かす様な桃色の瞳を収めた少しばかり幼さを残したまぶた。

 唇もハリのある美しい桃色をしていた。

 体の線を意識させる様に、しかしいやらしさを感じさせない程度に全身を覆う純白の布。

 背中からは全てを暖かく包み込む様な光の輪を発している。

 守は神という存在がいるのならこの様な姿をしているんだろうなと考えた。


「守様!よかった!無事召喚は成功しました!」

「……?」


 少女は祈る様に手を組みながらホッとした様な笑顔をこちらに向けている。

 守はこの少女のいう事が理解出来なかった。

 自分は心臓麻痺か何かで死んでここに来たのではないかと考えていた。


「守様!先程は申し訳ありませんでした!」

「へ?」


 急に頭を膝まで下げる様な深々としたお辞儀をしながら少女は謝罪してきた。


「私の神としての力が足りないばかりに……この空間に召喚する為とはいえ心臓麻痺まで……」

「え?あれあなたの仕業ですか!?」

「は!はひぃ!」


 少女は守の発言に対して頭を覆う様に怯えながら答える。

 その仕草も可愛らしいと守は感じていたが、今はそれどころではなかった。

 

「あなたはなぜ俺をここに呼んだんですか?」

「はい、それは話せば長くなるのですが……率直に言うとあなたの力が必要なんです!」


 少女は急に守に接近してその手を握り締めながら上目遣いで訴えた。

 守は近づいた女神から花のようないい香りを感じた。

 思わず近づいてきた女性に守は顔を少し赤らめつつ答えた。


「と、とりあえず話は聞きますから落ち着いてください!」

「あ、はい!ありがとうございます!」


 少し距離を置きつつ少女はペコペコ軽くお辞儀をした。

 お辞儀し終わると急に神妙な顔をして少女は話しだした。


「まず世界というのは一つではありません。それぞれを神様が管轄するという形で成り立っています。さらに生きとし生けるもの魂は様々な世界を選んで生まれる事が出来ます。ここまではいいですか?」


 少女が突拍子も無い事を言いはじめる。

 だがその発言には有無を言わせず信じさせる力があった。


「実感湧かないですけど……続けてください」

「はい!ですが私の世界が私の管理が及ばないほどに暴走を始めてしまいまして……このままじゃ私の世界に転生を希望する魂がいなくなってしまいそうなんです!」

「なるほど、でもそれと俺の心臓麻痺に何の関係が?」

「それはあなたの類いまれなる能力が関係してます!あなたの魂は現世では封印扱いされていますが魔力の適正がずば抜けて高いのです!」


 魔力?そんなものファンタジーの世界の話だと守は感じたが、また謎の説得力のようなものに流されて続きを聞くことにした。


「そして私の世界を助けて欲しいのです!もしよろしければの話ですが……守様ほどの力ならばきっと……」


 そう言いながら視線を下ろす少女、心なしか背中の光も輝きを失っている気がした。

 少女が自分の言うことを信じてくれないのでは?頼みを聞いてくれないのではと怯えていると守は感じた。

 彼女をなんとか安心させたかったが彼女も作った事がない、というか女子とまともにコミュニケーションをとった事がなかった守。


「大丈夫です!信じますよ!あなたのいう事」


 守はとりあえず彼女のいうことを信じてあげることにした。

 しかし自分に世界を救えだなんて無理を言うなぁとも守は感じていた。


「本当に!?ありがとうございます!」


 また少女はペコペコ頭を下げた。


「では早速肉体ごと私の世界に転移させます!」


 頭を下げまくったあと少女は意気揚々と右手を振り上げる。

 すると足元の一つの星が凄まじい速度で近づいてくる。


「うぉおお!!」

「大丈夫ですよぶつかって死んだりはしませんから!」

「……はい」


 急な景色の変化に守は焦ったが少女が平気そうな顔をしてるのですぐ落ち着いた。

 近づいた星は地球のようだったが瞬く間にその星の空に入り込み、続いて何か大きな建造物、そして地面まで降りてきた。


「ここは私の世界の中心地にある都市部の一角です。ここでまずは世界の混沌の原因を探してみてください!」

「待ってください!探すったってどこを!?それにあなたは!?」

「私はいつでもあなたを見守っています!我が名は女神アイガ。大丈夫です!その力を求めて、あるいはその力を恐れてそれらは自ずと現れるでしょう!」


 そう言い切るとアイガの体は薄れて消えた。

 唖然とする守。

 これからどうすべきか、そもそも言葉は通じるのか?などと考えていると。


「貴様!そこで何をしている」


 突然どこかから女性の声がした。

 声のする方を向くとそこには鎧を着込んだ女騎士のような出で立ちをした集団がいた。

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