第5話
今、悟がいるのは、全面黄金色に装飾された部屋であり、馬鹿みたいに縦にも横にも上にもでかい部屋にいた。壁には、色々な形をした像が建っており、それに作られている材質は、ミスリルやら、オリハルコンやらと、贅の限りを尽くした部屋であった。目の前には、一人だけが座ることが許された椅子、すなわち、玉座。現在、悟やアイリスたちがいる場所は、第五世界オルティアの国王がいる王城であり、今謁見中であった。
「これより、陛下からのお言葉を頂く。」
控えていた、騎士が高々に告げた。
悟は、なぜこうなったのかを考えてみると、それはルードラスたちから情報を得た時まで戻らなくてはいけない。
「なるほどね。まさか、こんなにメンドくさいことになっているとは思わなかった。」
本日、何回目かわからない溜息をつきながら、そう呟いた。今回の国取りは、悟やアイリス、オルガが思っているほど、単純な話ではなかった。国取りを行おうとしたのが、オルティア出身の者ではなく、他世界からのものだということがわかり、悟はどうするか、判断をつけづらいとこだった。
「ッ!!アイリスにオルガ気をつけろ。何者かが、こちらに向かっている。それに、この気配一つだけ一際強いものがある。」
しばらくして、随分派手な馬車が登場すると、その中から、マントと王冠を付けた一人の男が登場した。
アイリスやオルガは、その男を見ると、顔に汗粒を出しながら、膝まづいた。いや、膝まづかされた。その男の持つ、強者としての風格が彼らにそうさせていた。その男は、唯一膝まづいていない悟を見て感心した。
(俺を見ても膝をつかないとは。何も感じていないのか、それとも・・・・・・)
「俺は、第五世界オルティアの国王をしている、ルーラ=オルティアだ。名も知らぬ青年よ、我が国を救っていただき感謝する。王城へ招待しよう。馬車へ乗ってくれ。」
悟は言われた通りに馬車に乗った。彼の性格上、普通ならば断っていたところだが、この国王のもつ雰囲気に興味を抱き、ついていくことにしたのだった。
そんなことで、現在に至る。国王から、今回起きた事件について、臣下たちに伝えられた。臣下達は、自分たちの気づかない間に起こった事件に背を汗で濡らした。
「この度は、俺の留守の間に起こった事件に対して、解決の協力をしてくれて感謝する。よって、金剛悟に爵位を与えたいと「結構だ。」なに?」
「爵位は結構だ。そんなものはいらんし、報酬もいらない。」
国王の言葉を遮り、はっきりとそして、嫌悪感を示した。
「貴様!国王陛下の前で頭を下げないだけでなく、そのような態度はとるとは!断じて許さぬ!陛下!この私、ギルバート=ファンにこの者の処罰を!」
「はぁー、相変わらず貴族はメンドくさい。そんなに爵位がえらいか?全くもって、腹ただしい。お前たちはいつもそうだ。そんなに貴族がえらいのか?」
悟は、侮辱する視線をギルバートに向けた。悟は、一度目の異世界転移の時に、様々な貴族を見てきた。その中にも、このような貴族は存在したし、実際に何度か対立したこともある。
「この私に対してそのような態度をとるとゎ!貴様は殺してやろう!貴様がいかにとんでもない魔力を持っていようと、この部屋には、認められていない者の魔力を封じる魔道具が使われている。。認められていない者、それは貴様だ。残念だったな。魔力を封じられた貴様は、魔力を扱える私には勝つこ……とが……?」
ギルバートは最後まで言い終えることができなかった。なぜなら、悟の体から膨大な魔力があふれ出ていたたからだ。
「この程度の結界で、俺を封じることができるとでも?笑わせるな。国王……先ほど言った通りにやるぞ?」
「ああ、許可する。すまないが、お前に任せた。」
国王が言い終えると同時に、悟の呟きが響いた。
「国取りの終わりだ。臣下全員覚悟しろよ?」
「陛下!このように言っている男の処刑の許可を!」
今度はギルバートだけではなく、他の貴族からも声が上がった。
「別に構わんが、お前らでは絶対勝てんぞ?そやつは俺と同等……いや、それ以上の強さだしな。そもそも、俺がこの男に頼んだのだ。此度の件における、この世界の裏切り者をあぶり出すためにな。この部屋には、裏切り者をあぶり出すための結界が悟の手によって、かけられている。それに反応しているのが、ギルバート……貴様なのだが、弁明はあるか?」
「へ、へ、陛下!まさか、そのような者の言葉をお聞きになると言うのですか!皆の者、あの陛下は偽物だ!とらえ……」
ギルバートの言葉を遮ったのは国王だった。国王の全身から溢れ出す魔力に、ギルバートは最後まで言葉を発することができなかった。アイリスやオルガが浴びた、絶対的な強者の威圧にギルバートは耐え切れなかった。S級のオルガでさえ、耐えることの出来なかった、威圧である。貴族如きが耐えれる道理がない。
「黙れ。既に国盗りの主犯である5人は繋がっている貴族について証言した。この俺は、長年王の椅子に座り続けた。当然そのものが嘘をついているのか、そうではないのかぐらい見分けがつく。観念しろ。大人しく裁かれろ!」
国王の威圧に、言葉をつくことすら出来なかった。しかし、国王が威圧を解いた瞬間、悟に襲いかかった。
「し、し、し、し、死ねェエエエエエエエエエエエエ」
しかし、悟がそんなやつをまともに相手するはずがなかった。悟に向かって初級魔法を放ってきた。
「うるさい。」
その一言で、魔法は消え去り、いつのまにか、手に持っていた剣で、体を切られていた。
「さて、こうなりたくないやつ。今すぐ出てこい。そうすれば、死ぬことはない。それに、俺から逃げられると思うなよ?裏切り者のいる場所はすでにわかっているんだ。大人しく出てくることをオススメする。」
ぞろぞろと数人の貴族が、後ろの方から現れた。国王が、騎士たちに捉えるように指示すると、大人しく貴族たちはそれに従い、大人しく連行されて行った。もちろん捕縛に使った縄はスレイプニル製なので、暴れることも出来なければ、抵抗することができないのだった。
「此度の件、本当に感謝するぞ悟。」
王の間とは違う、国王のプライベートルームで、悟と二人っきりで話をしていた。
「お前のおかげで、裏切り者は捕まえられたし、国は助かったしと、いいこと尽くしだ。元々、こう言うことが起きるとは思っていたんだ。色々な不安分子もあったしな……おかげで、かねてよりの懸念がなくなり、よかった、よかった!あっ、俺のことはルーラと呼んでくれ!」
国王は上機嫌だった。先程までの厳格な雰囲気はまるでなく、普通のおっさんのノリだった。元々の性格は、この通りであり、オンとオフの切り替えが出来るだけだった。
「気にするな。しかし、よく俺の事を信じたな。普通信じないものだぞ?」
「ワッハッハ。俺は4年前になるのか?お前を直接見た事があるからな。当時と変わらぬ雰囲気、そして姿に、衰えぬその力。本物だと証明するには簡単なことだ。それで、話は変わるが、本当の黒幕はわかっているのか?」
「もちろんだ。実は……」
悟の出した名前は意外な名前だった。
「まさか!そのようなことが!」
「さぁな。俺にもよくわからん。だか、そいつを相手出来るのは、お前にもキツイだろ。俺がやるしかない。」
そういって、立ち上がり部屋を出て行き、自分に与えられた部屋に戻ると、転移してきた以来の久々の睡魔に身を任せるのだった。
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