第4話
手に取った剣をくるりと器用に回すと、軽く上下に素振りを行い、久しぶりに手に持つ愛剣の感触を確かめると、軽く頷き、剣を肩に担いだ。
「さて、アホども。今から格の違いを見せてやる。目を開けてよく見ておけ。」
悟はそう言うと、ルシフェルに魔力を込めた。すると、悟の魔力をこれでもかという程喰った。剣は再び己が主の魔力を喰えたことを、喜ぶかのように輝きをより強くした。そして、剣から魔力が伸びていき、悟の腕に魔力でできた、衣のような物が纏わり付いた。しかし、皆は気づいていた。まだ、これが彼の本気ではないと。
あまりにも圧倒的過ぎる存在感に、ルードラスを含め、オルガやアイリスでさえ、悟のことを視認することができなかった。それは絶対的な強者のみが持つ特権。威圧の上位互換とでも言うべきその特権は、その力を見ることを恐れ、己の存在すらも欺く。
「なっ!消えた、だと!?あり得ない!そこにいるはずなのに、なぜ、見ることができない!」
「言っただろう?今から、格の違いをを見せると。それと、これからは勝負ではない。ただの教育だ。」
「きょ、教育?」
「その通りだ。俺とてただの教育のつもりだからな。ま、せいぜい、死ぬなよ?」
悟はそう語ると、ルードラスに神速の一振り。刃が返ったかすらわからないほどの剣速。だが、ルードラスも幾重の困難にも立ち向かってきた、ベテランの冒険者だ。それを、ほとんど感に近いもので弾く。....が、弾いた自分の剣がおれていた。それに驚愕した途端、弾かれた悟の剣が返って、ルードラスの胸を切り裂いた。
『箕島流剣術 "重ね"』
はじかれた剣を、はじいた時に生じる力に合わせて再び斬る。相手の力を利用した2度斬りである。
「一枚目を弾いたのはなかなかだが、剣が折れたことに動揺し、隙を見せた。まだまだ甘いぞ?。」
『箕島流剣術 "光閃"』
次の標的は、バルバであった。"光閃" それは、剣を、ただの横に振っただけのもの。ただ、違うのは、その速さだろう。剣が反射する光が、横振りの剣筋に残像のように残り続けることから、付けられた名前だ。当然、バルバはその剣を防ぐことなど出来るはずもなく、吹っ飛ばされる。
「仲間がやられた後に、自分もやられると、予測が足りなかった。常に予想を立てておかないと勝ち残れないぞ?」
『箕島流剣術 "炎刄"』
お次はアクアスへの一撃。その名の通り、炎に包まれた刄による、斜め下から斜め上へと切る逆袈裟だ。剣の切っ先を土に当て、そこで生まれた摩擦を炎へと昇華させた、ありえない一撃。オルイアは水属性の障壁を張るも、秒殺で破られ、こちらも胸に傷を負った。
「障壁が弱過ぎる。しかも、優属性なのに、劣属性に負けるとかもってのほかだ。だから、もっと強くなれ。せめて、魔力を使っていない炎刃くらい防げないと話にならんぞ。」
『箕島流剣術 "炎舞"』
炎刄によって、できた炎を纏いつつ、それを舞うようにして切りつける連続切り。フウガは、最初こそ対応して切り結んび、悟を驚かしたが、次第に捌ききれなくなり、体にいくつもの傷を負った。
「んー、なかなか見込みがあるんじゃないのか?今の防げるようになると、大概の攻撃には対応出来るようになる。そして、最後の一人......オルイア。お前は初めに言っておく。アイリスを襲わせたことは何よりも思い。」
悟は、他の四人にもそこそこ怒っていたが、やはり一番はオルイアだった。アイリスを襲わせた、こいつだけは、何があっても許すつもりはなかった。
「今からやるのは、滅多に見れるものじゃないからな?しっかり、目ひらいとけよ。『箕島流秘術 "幻想武剣"』」
箕島流の秘術が一つ幻想武剣。それは切りつけられたことすら、認識することができない幻の剣。オルイアの意識は、闇へと堕ちていった。
悟は、倒れた5人を見て考え事をしていた。
(まあまあ、おもしろいのもいるじゃないか。確かに、こいつらの言うとうり、この世界はレベルが低すぎる。それはこの世界の人間に限ったことではないんだろうとは思うけど。だからこその国取りなんだろうけど、俺がいなかったら、出来たのかもしれないな。まあ、運が悪かっただけだ。)
「さて、アイリスと、そのお兄さん?終わったぞ?」
何気なく、そう声をかけた悟だったが、アイリスたちは、そんなことに耳を傾けていなかった。確かに、悟の実力をアイリスは知っていた。自分を助けてくれた時もルードラスのブラックホールを消し飛ばした時も・・・・・・だが、今見た光景はそれすら上回っていた。それを聞いていた、オルガもそこそこの実力はあるのだろうと思っていたが、ここまでだとは思っていなかった。なにしろ、オルティアの最高戦力であるS級の冒険者である。それが、五人いるのだから。その5人が負けるとは思ってもいなかった。思わず鳥肌が立った。
「俺は夢を見ているのか?こいつらは、俺の幼馴染で、しかも、互いに切磋琢磨してきた仲だ。あいつらは弱くない。あいつらの力は俺がよく知っている。それが、何も出来ずに、瞬殺と言えるほどにやられただと...... そんなことは、特S級の人間でも無理だ。不可能だ。できる可能性があるとしたら、十二神級レベルだ。詮索してはいけないとわかっている。だが、あえて聞かせてもらう。あなたは一体何者なんだ?」
オルガの問いは、アイリスにも気になるところだった。何しろ出会ってから、まだ、半日程度しかたっていないが、それでも彼の異常さには目を見張るものがあった。だからこそ、オルガの問いに答えてほしいと、悟に目で訴えていた。
悟は溜息を一つつくと、仕方ないなぁという風に頭を掻き、口を開いた。
「教えてやるよ。仕方ないしな。けど、教えるのは、俺が何者かという事だけだ。それ以外は話さないし、俺の魔法や能力も、今の時点では、一切話すつもりはない。そこは了承してもらう。」
悟は、ここでもう一つ話を区切ると、アイリスとオルガを見た。二人とも興味津々、好奇心を抑えきれない表情で、こちらを見ている。そして、倒れているルードラスたちも耳が聞けるほど回復しているのを確認すると、悟は名乗った。
「俺は、元評議員会が一人にして、元十二神級が一人、序列第一位、金剛悟。それが俺の名だ。大した肩書きでもないだろう?」
「「「「「「「え、え、え、えええええええええ!」」」」」」」
七人の声が一斉に響き渡った。悟は、それをうるさそうに耳を塞ぐと、迷惑そうに言い返した。
「お前らうるさいぞ。たかが、十二神級の一人だろ?しかも元だ。そんなすごくないぞ?だいたい、序列制度があるが、そんなに実力差変わらんしな。」
「いやいや。十二神級は、4年前の魔界との戦争において、多大な功績を残した十二人に贈られた、ほぼ二つ名に近い、冒険者ランクだと聞いております。十二神級というだけでもおすごいのに、更に、序列一位ですか!流石は悟様......ですが、それほどお強いのになぜ、十二神級をお辞めになったのですか?」
「アイリス。すまないが、それは言えない。俺の、評議員会の一部のみが知る秘密だ。」
悟が、異世界転移をして、こちらの世界に来て帰ったことは元々、第一世界アルカディアの中でも、一部の人間しか知らないのだ。それを無闇に広げるほど、悟は馬鹿ではなかった。アイリスは残念そうな表情を見せるも仕方ないと諦めた。次に口を開いたのは、ルードラスだった。
「本当の十二神級の人間だと!?それに、元序列一位と言えば、《 戦神 》と呼ばれていた、あの方だけだ。まさか、このアンタが?」
「はははっ。《 戦神 》か。懐かしいな。そう呼ばれていた時期もあったよ。俺の過去の話なんて、どーでもいいんだよ。大事なのは、お前ら五人のバックにいる連中たちだ。お前達5人悪いけど、洗いざらい吐いてもらうぞ?こう見えて、拷問は得意なんだ。」
悟はニタァと笑うと五人を魔法で一箇所に集め、絶対に解けることのない縄(スレイプニルの縄)で、一人一人を縛りあげると、拷問行うのであった。
ありがとうございます!