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BANDAGE WAR  作者: タカクテヒロイ
5/9

出会い

3人で、廃墟になったビジネスホテルを目指していた。


「ねぇ、さっき言い忘れてたけど……2人とも、助けに来てくれてありがとう……」


「どういたしまして。こいつが『俺の愛する美沙を絶対に助けるんだ……!』とか言って聞かなくてよーっ!」


「はぁ!?カズ、アンタ何言ってんの?!この変態!」


「んなこと言ってねーよ!おい翔吾!てめー勝手に捏造するんじゃねぇ!」


「いやいや、マジで似たようなこと言ってたから!」


「確かに助けたいとは言ったけどよ……」


「え、あっそうなんだ…… ふーん……」


美沙がボソボソと呟いた。


「ほら言ってんじゃねーか! いやー、みせつけてくれるぜー!」


「お前の言い方には語弊があるんだよ!それよりあんまデカイ声出すな、ミイラに見つかるだろうが!」


「お前の声が1番デカイけどな……」


俺の声に反応したのか、少し遠くにいたミイラに気づかれたようだ。


「……やべっ! 早く行こう」


俺たちは駆け足で廃墟ホテルに向かった。


× × ×


廃墟ホテルまであと少し。


最後の曲がり角を曲がろうとした時、先頭を歩いていた俺はミイラの集団を見つけ、後ろを2人を制した。


「しっ」


俺は口元で指を立て、2人に静かにするよう促した。


「ここで様子を見よう」


小声で話す。 2人はこくこくと首を縦に振った。


俺たちは物陰に身を潜めながらミイラ達の様子を伺った。



みたところ、ミイラ3人が1人の体格のいい男性を襲っているようだった。



「大人しくしろ!」


「くるなお前ら!ぶっ殺すぞ!」


男は武術の心得があるらしく、1人のミイラを投げ飛ばした。


「うおっ」


思わず驚きの声が出てしまい、慌てて口を紡ぐ。



「ちっ、厄介だな」


1人のミイラが近くの工事現場から鉄パイプを拾ってきた。 おいおいマジかよ。


「うらぁっ!」


「ぐああああああああっ!!!」


ガスッ


鈍い音がしたと同時に男は倒れ、頭部を中心に血溜まりができた。


「手間かけさせやがって」



倒れた男の背中に触れ、包帯が伸びて身体に巻きついていく。 ミイラ化が始まった。


俺はミイラ化が終わるまでの時間を数えていた。 109秒。 2分弱かかるのか。



ミイラになってしまった男は頭部の包帯が血で赤く染まっていた。


3体のミイラは倒れているミイラ化した男性を引きずりながら去っていった。



「おい、なんだよあれ……」



「抵抗したらあんなことされちゃうのかな……」


後ろで見ていた2人が言った。


「少し違うんじゃないか。奴らはミイラ化させるためにあの人を無力化したんだと思う。」


つまり、それだけの知能は持ち合わせているということだ。



「まあいい、早く行こう」


こうして俺たちは廃墟ホテルに入っていった。



× × ×



入り口に買い物カゴを置いて中に入る。


廃墟ホテルの中は暗かったが、1つだけ明るい部屋があった。


「おい、あの部屋明るいぞ、誰かいるんじゃないか?」


「みたいだな、でもミイラかもしれないから慎重にいくぞ、美沙は離れないようにしてくれ」


「うん……」


3人でで明るい部屋に入っていった。


そこにはいろんな資料が積み上げられた机があったが、人の気配はなかった。


「おかしいな、誰もいないのか?」


「いや、これを見て」


美沙が机の上を指差す。机の上には紙コップのコーヒーがあり、まだ湯気が出ていた。


「この建物には必ず誰かいるぞ、上の階も見て……」



「おい、君たちは誰だ?」


「!?」


振り返ると何者かが立っていた。



「うわあああああっ!!」



ピシュピシュピシュ!


翔吾は得体の知れない人物に向かって水鉄砲を乱射した。



「おい、なにするんだやめろ!」



「あれ?」


落ち着きを取り戻した俺たちは暗い中

目を凝らして男をみた。


部屋から漏れる明かりに映し出されたのは

ずぶ濡れの男性だった。


× × ×


「全く、いきなり自分の家に上がり込まれて水までひっかけられるとはなー」


「「「す、すいません……」」」



3人で謝った。



「それで、なにをしにここに来たんだ?」


男はタオルで顔を拭いながら聞いてくる。



「あの、それは……」


「ああ、その前に自己紹介をしておくよ。私の名前は堂島銑十郎(ドウジマセンジュウロウ)。 2年くらい前からここの廃墟ホテルに住み着いているんだ。」



「ここに……住み着いているんですか?」


美沙が質問した。


「ああ、そうだよ。元々は大学で医学や薬学など様々な分野の研究をしていてね、ひょんなことから大学を追い出されちゃって。私には身寄りがいないからここで1人で細々と研究を続けながら生活していたんだ。 まあ、ホームレスと変わらないけどね」


ケラケラ笑いながら堂島さんは話してくれた。身寄りがいなくてホームレスって……なかなか悲惨だな。



「それじゃあ、君たちがここに来た理由を教えてもらおうか」


しかしおかしいな。これだけ大変なことにっているのに外の異変に気付いていないのか?


俺たちは今までにあったことを全て堂島さんに話した。


× × ×



「そんなことが……ずっと部屋にこもっていたから気がつかなかったよ。それじゃあ君たちは避難する場所を求めてこの中に入って来たわけか」


「そうなんです。それで……」


俺が少し言いにくそうにしていると

堂島さんはニコッと笑った。



「ああ、それならここを拠点にしてくれて構わないよ。 2階から4階は自由に使ってくれたまえ。」


「本当ですか!?ありがとうございます!」


「ただし、今までは貯金を切り崩して生活してきたけどもう底をつきそうでね。食べ物も無くなりそうだったんだ。そこで君たちにはこの事件が解決するまで外から食べ物を運んできてほしいんだ。それが条件だよ」



俺たちは考えた。 外はかなり危険だが、どちらにしても食べ物は必要だ。今日モールから持ってきた食料も数日で尽きてしまうだろう。 何より八嶋や天野、伊集院さん達もどこかに隠れているかもしれない。


ここなら広いしみんなで協力していけばこの状況が続いてもなんとかなりそうだ。


みんなを助けるためにも戦わなければいけない。


「わかりました。よろしくお願いします」


「よし、交渉成立だな。そういえば聞いていなかったけど君たちの名前は?」


「俺が二神一真で、こちらが神楽坂翔吾と如月美沙です」


「そうか。二神くん、神楽坂くん、如月さん、こちらこそよろしく頼むよ」



「はいっ!」


今日からこの廃墟ホテルは俺たちの本拠地だ。必ず生き残ってみせる。俺はそう心に誓った。

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