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亡霊少女と沈黙の騎士  作者: 桃花鳥
転生から幼少期
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彼と私の初めての出会いについて

「正確には一番初めの君だね。」


「一番初め?」


「そう。話始める時に僕は君を知っているけれど君が覚えていないのは無理もないって言ったのは覚えてる?僕は、君が君になる前から君を知っている。」


「どういうこと?」


「輪廻転生って知ってるだろう?人は死ぬと魂となり体という器から抜け出し、違う存在へと生まれ変わる。あ、因みに君は死んだから今は魂だけの状態だよ。少し体が軽いと思わない?」


そう言われて思い返すと、確かにそうかもしれない。

結構な距離を歩いたが、疲れをあまり感じなかったように思う。


「話を戻すけど、君は何回も輪廻転生を繰り返してるんだ。全ての生き物は転生すると大抵記憶は無くなる。けれど僕は死なないからね。忘れることはないし、不思議と君を必ず見つけられる。」


「何度も私を見つけてくれたの?」


「うん。僕の姿が君に見えても見えなくても、僕は君を見つけて傍にいた。今回の君は僕の姿が見えなかったようだけど、ずっと見守ってたんだよ。…君は本当にすごく頑張っていたね。お疲れ様。」


その声はただただ穏やかで優しくて、私は胸が締め付けられて泣きそうになった。


ずっと誰かに言われたかった。

上辺だけの言葉を聞くのが辛かった。

出来て当たり前と思われていたから、誰も本当の意味で私に心を配ってくれる人は居なかった。

けれど、彼はずっと本当の私を見てくれていた。

そのことがすごくすごく嬉しかった。


「ありがとう。」


「どういたしまして。いつもいつもハラハラしてたんだ。今回の君は一人で何でもしようとするから、いつか壊れてしまうんじゃないかって不安だった。そしたらこんなに早く死んじゃうなんて…。しかも少し嬉しそうだったし。」


「ごめんね。」


申し訳なくて謝ると、彼はため息をついた後、頭を撫でてくれた。


「まぁ、今回の死は君のせいじゃないし、謝らないでよ。それに、あの世界はきみにとって生きにくいようだったしね。僕は君が苦しむのを見るのは好きじゃないんだ。」


一つ謎が解決すると、違う疑問が浮かび上がった。


「ありがとう。貴方が私を知っている理由は分かったけれど、最初の私はどうして貴方の世界に入れたの?さっき誰も入らないように世界を閉じたって…。」


「うん。だからね、僕たちはすごく驚いたんだ。」


小さな人型達は大きな人型の周りをわたわたと回る。


「精霊たちは混乱するし、君は僕の上から動かない。そして僕は眠りについたまま。あの時は本当に混沌としてたね。しかも君は僕の力を奪った神が創った世界から落ちてきたから余計にね。一番面白かったのは一人の精霊が混乱しすぎて別の子に魔法で攻撃しちゃったことかな。酷く慌てて謝ってたよ。それを見て、他の精霊たちは落ち着いたんだけどね。」


当時の事を思い出したのだろうか、彼は暫く笑い続けた。

どうして彼は眠りについたままなのに、その様子を見たかのように話すのだろうか。

そんな思いが顔に出ていたのか、彼は私を見遣り、首をかしげた後、あ、と声を漏らした。


「ごめん、説明してなかったね。僕は世界そのものっていったでしょ?僕が眠っていても死にかけていても、僕の心臓が完全に止まらない限り世界は変わらず存在している(いきている)。だから寝ていても意識が無くても世界の全てが分かるんだ。」


意識のない状態であっても世界は回り、知っていく。

それはどんな感覚なんだろうか。

分からないけれど、何となく苦しいような気がした。


彼はそんな私の手をぎゅっと握った。

私も、強く握り返した。

少しでも、思いが伝わるように。


「それでね、精霊たちが落ち着いた頃、君はいきなり僕を包んで隠してしまったんだ。」


「え!?」


「ふふふ、これには世界も驚いたよ。だって僕と世界の繋がりが絶たれてしまったんだからね。」


人型に目を落とすと、紫色の薄い膜が、大きな人型と紫色の人型を包んでいた。

大きな人型から出ていた水の糸は全て無くなっていた。


「世界との繋がりが無くなったからね、僕はそのあとの事は分からないんだ。だからここからは精霊たちに聞いた話になるよ。」


私が頷くのを確認した後、彼は話を再開した。


「僕を包んだ膜は、どんなに精霊たちが攻撃しても、世界が自然の猛威を振るっても、びくともしなかった。膜の中は相変わらず僕の上から動かない君と、眠ったままの僕。」


水の球体は震え、嵐を、雷を、地震を起こす。膜の外にいる小さな人型は色とりどりの球体を膜へとぶつける。

膜は動かず、そのままだった。


「暫くすると、君の体が光りだした。」


紫色の人型が光り出し、周りを照らす。

そしてその光は吸い込まれるように大きな人型へと入っていった。


「君の光は僕へ降り注いだ。すると、僕の傷はどんどん癒えていく。それを見て精霊も世界も攻撃の手を止め、魅入ったそうだよ。」


膜の中は柔らかな光が溢れている。

世界は沈黙し、精霊たちはその様子をじっと見ていた。


「完全に傷が癒えると、光も膜もはじめからなかったかのように消えていった。残ったのは相変わらず動かない君と再び世界と繋がった僕。我に返った精霊たちが僕に駆け寄って騒ぎ出すと、僕はゆっくりと目を開けた。そして初めに視界に映ったのは、僕の服を握って眠る君だった。」


彼は愛おしそうに紫色の人型を撫でた。



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