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34.

そこからどうやって街まで行ったのかは、今でもよく覚えていない。セルベルがポーチの中で鳴り続けていたが、発信元に心当たりがあったため出る気にもならなかった。

気付けば僕は繁華街の中心で雪に打たれていた。眩しさに目を眇めれば、それは周囲のイルミネーションの光だった。そう、今日はクリスマスだ。重奏するように、けたたましいノエルが夜の闇を賑わわせている。

 見渡せばそこかしこに、小さな腕に一杯積まれたプレゼントを抱えて揚々と父親の前を歩く少年。二人連れ添って、ホワイトクリスマスに感じ入りながら愛の睦言を囁き合うカップル。五人、六人が集まって高らかに調子外れのノエルを歌い上げる男子学生の群れ。

 いずれの集団も、今宵が最上の夜だと信じて疑わない。彼等には今があり、今日があり、そして未来がある。つい先程、地獄の業火に焼かれて召されていった少女など、きっと誰も知るまい。

 だが、僕は知っている。知ってしまった。彼女が何故死ななければならなかったのか。何故見栄えもしない理不尽が易々とまかり通るのか。何故今の世界は、魔女裁判という過去の遺物を掘り出して制度を確立させたのか。

 簡単な話だったのだ。

 今、僕等の世界では戦争、内紛、飢饉、異常気象、感染病、ありとあらゆる災害に見舞われている。しかしそれらは、首を回せばわかる事だが町へは影響を及ぼしてはいない。

大都市ではまだ豊かに、ぎりぎりのラインを保って生きてこられた。そして余波は大都市の外へ降り掛かる。僕達が被るはずだった災害が、代わりに周りに落ちるのだ。災害総数が減ったのではない。分母は変わらない。一歩外へ向ければそこは地獄だ。中で住んでいる僕達はそれを見て見ぬ振りをするけれど、上手く割り切れる者はそう多くない。心の中では視えない未来に対する漠然とした不安が、本当にこのままでいいのかという焦燥が靄のように広がり、伝染している。

 だから僕等には、捌け口が必要だった。

 時代は進んでも、中世の失敗から何一つ学んでいない。いや、知っているはずなのに、理解できない振りをして、そうして澄まし顔でまた同じ過ちを繰り返している。

 そしてそれを、善しとしている。

 この世界はとうの昔から狂っている。

 気付いた時にはもう遅い。

 破滅の足音は、もうすぐそこまで迫っている。


 これをイヴ流に言い換えるならば、“化け物の共食い”といったところになるのだろうか。

出来るだけすぐに、本人の意見を聞いてみたいものだと思う。



   了


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