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女の恋

作者: 上中 志織

異形の女の恋物語です。苦手な方、嫌悪感を覚える方は、読まれないようお願いいたします。

私はとても細かった。

筋肉さえも削ぎ落とされた肢体には、虹色に輝く鱗がある。

鱗の存在はまばらで、鱗のない地肌は血管が透けて見えるほど、白い。

瞳孔は縦に伸びている。

舌が二股に別れていないことだけが、救いだった。


人は皆とても美しい。

それに対して、醜い私。

吐き気さえする。


そんな私を、彼は選んでくれた。

数限られた人しか見たことのない私でさえ、彼が人並み外れた美しさを持っていることを知っている。


カラリ。と、小さな音を立て、彼が忍んで部屋にやって来た。

「いらっしゃい」

声をかけると、彼は大層美しい顔を、更に美しくさせた。


彼の目が一番好き。

深い黒。時折見せる煌めきは、私の鱗の薄気味悪い輝きとは全く違って、夜空に瞬く星のよう。


私が最も厭う足の鱗が、虹色に輝くのを見て、彼は目を細めた。

「綺麗だね」

彼は、ゆったりとした動きで私の足をなで、最後に足の甲の鱗と爪先に唇を落とす。


それを見て、それを感じて。

悦びとも、恐怖ともいえない感情が、私の中で暴れる。


私は、この感情を表現する言葉を知らない。


だから私はたった一言だけ、彼に告げる。


「好きよ」


彼は、私のその言葉に、一瞬驚き、そして喜びを溢れさせた。

瞳を輝かせ。頬をほのかに桃色に染め。口は、ゆっくりと笑みの形を描く。


ああ、本当に。


彼の頬に手を添え、私は彼を私の方へと向ける。


なんて、美しい人だろう。


私はそっと彼のまぶたに口づけた。


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