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吸血姫は薔薇色の夢をみる  作者: 佐崎 一路
第四章 帝国の混迷
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第三話 迷宮探索

久々に勢いだけで書いてみました。

多少後悔してます(`-д-;)ゞ

 西部域のアミティア共和国首都アーラにいるはずの冒険者ジョーイと、ここ大陸を半周した中央部の南側、クレス自由同盟国の暫定首都ウィリデの冒険者ギルド本部で偶然再会したボクなんだけど、それよりも驚いたのが、ジョーイに連れがいたこと、それも同い年くらいの女の子だということだった。


 ミーアさんはどうしたの?! 若い子に乗り換えたの!?


 そう問い詰めたい気持ちを視線に乗せて、ジョーイと女の子に交互に眺めると、ジョーイはなぜか慌てた様子で両手を振った。


「――ち、違うぞ! 誤解しないでくれ、こいつとはなんでもなくて! ……話し合おう」


「ほう。弁解があるなら聞きましょう」

 ミーアさんの為にも。あと、何が違って、何が誤解なんだかよくわからないけど。


「師匠~っ、なんでもないなんてひどいですよォ~」


 と、人見知りするタイプなのか、おどおどした態度でジョーイの背中に半分隠れながらも、軽く抗議する彼女。


 ……しかし、なんだね。この子。背は大してボクと変わらないのに、特定一部分の自己主張が激しい体つきをしてるねぇ。――具体的に言うと(オッパイ)。何カップあるんだろ、あれ。

 魔法使いなのかローブを着てるんだけど、下に着ている短衣の胸元がいまにもはち切れそう。背は小さいくせに胸はおっきいという、けしからんスタイルをしている。


 そーか、なんかミーアさん相手にイマイチ反応が鈍いと思ってたけど、胸か、胸が原因だったのか。この俗物め!!


 と、思わずやっかみが先に立つ。……う~む、友人として彼女ができたことを素直に祝福すべきなんだろうけど、相手がこの巨乳となると微妙に感情が納得できないものがあるねぇ。こっちなんて、たまに自分のをさわってみるけど全然楽しくないし。こんなことならもうちょっと盛っておけば良かったかな? でも最近2センチばかり増――と、思考が明後日の方へ行きかけたのを制して、ジョーイの顔を見た。


 ちなみにクロエさんや、天涯たちは気を使ってか、少し離れた椅子に移動したので、ボクがギルドのソファーに座って、その向かい側にジョーイたちが立っているという構図になっている。


「…取りあえず座ったら? ずっと上を向いてるのも疲れるんでね」


 そう促すと、そそくさと向かい合わせにジョーイが座って、その隣にぴったり体を寄せるように少女が座り――なんか挑発的に上目遣いで一瞬見られたんだけど、なんだろね。初対面だと思うんだけどなにか気に触るような事でもしたかな? …あれかな、密かに胸をガン見してたのがマズかったかな?――なぜか、慌ててジョーイが体を拳一つ分くらいそこから離して、その間に鞘ごと外した剣を置いた。


「えーと、こいつは何回か依頼で組んだことがあるだけのEランク冒険者でフィオレ。単なる同業者なだけだから」

 なんか大事なことなのか『だけ』を2回繰り返すジョーイ。


「……は、はじめまして、ジョーイ師匠の弟子をしてますフィオレです」

 なんとなく儀礼的に頭を下げるフィオレ。ちなみにほどけばセミロングくらいの薄い栗色の髪をツインテールにした、なかなか可愛らしい顔立ちのいかにも女の子ってタイプだった。


「はじめまして、ジョーイの友人の緋雪です。――師匠?」


 ボクの挨拶に「…友人か…」となんかガッカリしているジョーイ――心の友とでも言えばよかったのかな? どこぞのガキ大将みたいに――へ、水を向けると違う違うと眉をしかめた。


「こいつが勝手にそう言ってるだけだ。俺がそんな偉そうに人に教えられるわけないだろう?」


「そう? この間は『仕事は遊びじゃない』とか『命を大事にしろ』とか、けっこう立派なこと言ってたじゃない」


「……そんなことお前に言ったっけ?」


 ・・・・・・。

「――ああああ・・・え、えーと、なんか初心者にそんなこと言ってたって、この間ガルテギルド長に聞いたんだよ」


 取りあえず誤魔化してそう言うと、ジョーイは盛大に顔をしかめた。

「ヒューの時のあれか。先生も案外口が軽いんだな……」


 ごめんガルテギルド長。勝手にジョーイの中の株を下げて。


 ボクは遠い空の下にいるであろう彼に、心の中で詫びを入れた。

 ……というか、なんでこれで気が付かないんだろうね、ほんと。


「とんでもないです! 師匠はあたしの命の恩人です。あたしも師匠を見習って、立派な冒険者になるのが目標なんですから!」

 ここは譲れない線なのか、おどおどした口調から一転して力強く言い切るフィオレ。


 コレを目標にねえ。やめたほうがいいと思うけど。

 それと、どーでもいいけど激しくポーズをとると、ゆさゆさと見事に動くなぁ。

 

「命の恩人って…冒険者同士でチーム組めば、助け合うのが当然だろう。たまたまあの時は、俺が近くにいただけで誰でも同じことしたぞ」


 当然のようにキッパリ言い切るジョーイだったけど、実際の緊急時にそれを迷いなくできる人はそうそういないんだよねぇ。


 でもまあ、なんとなくわかった。吊り橋効果かもしれないけど、危ないところを助けてくれたジョーイに憧れて、このおっぱ…もとい、フィオレが押しかけ弟子になったってところか。


「だいたいの事情はわかったけど、なんでここにいるわけ? 旅行?」


「いや、護衛依頼でアミティアからの魔導帆船に同乗してきたんだ。なにしろ今回の募集要件が『泳ぎができる者』ってことでさ。アーラだとなかなか泳げる奴がいなかったんだけど、俺、生まれが海辺の村だからけっこう泳ぎが得意ってことで選ばれたんだ。――で、こいつは魔法使いなので、居るだけでも貴重ってことで付いて来た」


 へえ、意外な特技とバックボーンがあったもんだね。


「あれ? でも帰りはどうするの? 魔導帆船の護衛って、往復なわけ?」


「いや、片道だけ」

 あっさりジョーイは首を振った。


「じゃあ自費で帰るわけ? ああいった船の相場って知らないけど、かなり高いんじゃないの?」


「まあ、最悪自費で帰ることになるかも知れないけど、ちょっと帰りのアテがあるんだ」

 自信有りげにジョーイはにやりと笑った。


「アテって?」


「ダンジョンだよ。最近、この近くで見つかったダンジョンの地下10階に転移魔法陣があるって話でさ。俺の魔力パターンはアーラの転移魔法陣に登録してあるから、上手く行けばこことアーラを行き来できるようになるんじゃないかと思って来たんだ」


「ああ、なるほどね」

 ボクは普通にセーブポイントを空中庭園へ決めてるので、『帰還』スキルでどこからでも割とホイホイ帰れるほか、手軽にセーブ&リターン可能な個人用の『転送石』も標準装備で常に複数個持っているので、けっこう気楽に転移魔法を使ってるけど、こちらの世界ではオーパーツ扱いで、たまに遺跡から転移魔法陣が見つかるくらいらしい。


 ちなみに転移魔法陣は移動させると座標がズレて使用不能になるので、基本的に先に魔法陣があった場所に街を作るというパターンになるそうだ。


 当然ながらこれ、どの国でも管理は厳重に行われ、例えばA地点からB地点へ転移する場合、先に転移先のB地点での本人の魔力パターンの登録と許可が必要になる。

 で、A地点で高額の使用料を支払いB地点へ転移するわけだけど、登録がない者や許可が取り消された者は、当然その場所へは転移できない。場合によっては時空の狭間に取り残されて、現世に戻れなくなるので、けっこうハイリスク・ハイリターンな仕様なわけなんだけど、今回ジョーイは先にアーラで登録は済ませてあるので、誰も管理してないダンジョン内部の転移魔法陣を使って、ただでなおかつ一瞬にして帰ろうって算段のようだ。


 一見いいこと尽くめの計画なようだけど……。


「……ジョーイ、君って、ダンジョンとかもぐった経験あるの?」

 そのあたりが非常に気になったので確認してみた。


「あるぞ、アーラのそばの古代遺跡。あそこの十八階までは降りた。まあ臨時のチームに入ってだけどな」


 ああ、やっぱそうか、とボクは内心で頭を抱えた。


 あそこのダンジョンは前にボクと四凶天王とで破壊しちゃったんで、大規模な――文字通りの魔改造を施した結果、20層までは素人でも死なない程度、それ以後は10層ごとに玄人向け、ベテラン向け、一流向けといった具合に難易度が上がるようになってるんだよね。ちなみにソロだと、S級冒険者だった稀人(まろうど)でもクリアできず58層で撤退した(最深部は70層)。


 そこを18層までしか、しかもパーティ組んででも行けなかったということは、ダンジョンに関してはものの見事にド素人ということになる。


 その発見されたダンジョンの難易度がどの程度かは知らないけれど、多分この二人でのクリアは無理だろう。


「まあ、さすがに二人だけでいきなり知らないダンジョンに挑むほど馬鹿じゃないので、一緒にもぐってくれるようなパーティを探しに来たんだけど」

 ああ、さすがにそこまで馬鹿じゃなかったか。


「条件が合うのがなかったんで、とりあえず二人で行けるところまで行こうかと話してたところなんだ」

 うん、やっぱ、どうしようもない馬鹿だね。


「まさか、それがここでヒユキと会えるなんてなあ。ヒユキこそなんでここへいるんだ?」


「私は仕事の打ち合わせだよ」


「へえ……こんなところまで仕事か。お前も大変だなぁ」


「まあ自分の国のことだからねぇ」


 その言葉に怪訝そうな顔をするフィオレ。

 つんつんとジョーイの袖を引っ張って、小声で質問していた。ま、吸血姫(ボク)の聴力には丸聞こえだけど。

「……あの、師匠。ヒユキさんって、よく師匠が口に出していた彼女ですよね…? 見たところ獣人ではないのに、自分の国って…?」


 別に質問があればボクに直接訊けばいいと思うんだけど、よほど人見知りが激しいのかな。あと彼女って、普通に三人称代名詞としての彼女だよね?


「――ち、違う! 早合点するな。あと、『自分の国』ってのは、あれだ、ヒユキはコラードさんよりも偉い、コーテイだかジョテイだから『自分のもんだ』って意味で言ったんだと思うぞ」


「……はあ? そうなんですか???」


 うん、この説明だと全然わからないと思うけど、ここで水戸黄門ごっこをやるのも悪趣味なので、放置することに決めた。


 それにしても、ジョーイは勢いでダンジョンに突入するつもりらしいけど、目の前でおっぱ…もとい、女の子がむざむざ犠牲なるのを見過ごすのも寝覚めが悪いねえ。第一、男が(すた)る――とっくに廃業はしてるにしても心理的なモノで――というものだね。


 10階くらいなら多分楽勝だし、多少手助けするのも悪くないかな。

フィオレはもうちょっと内向的な性格に書きたかったのですが、難しいですね。

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