第一話 円卓会議
な、なんか1日であり得ない人数の方から評価やアクセスをいただいてるんですけど(;´Д`A
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その日、常闇に包まれた虚空紅玉城は100年ぶりに沸き立っていた。
――帰って来たのだっ。我ら臣民が敬愛する神に等しい至上の主が!
――還って来たのだっ。我らの血肉魂魄を捧げるあの尊き永遠の美姫が!!
――戻ってきたのだっ。我らが魔の王国『インペリアル・クリムゾン』に再び栄光と戦いの日々が!!!
◆◇◆◇
ボクはいろいろと後悔していた。
・・・なんでこんな趣味に走っちゃたんだろう。
まあもともとの切っ掛けは吸血姫としての固有スキル『魔眼』――MOB・プレーヤー関係なく対象に使用することで攻撃の意思をなくすことが出来る(対象とのレベル差により成功率は変動)――がMOBの捕獲確率にも影響があることがわかって、調子に乗ってゲーム内の捕獲可能MOBをコンプリートしたり。
次に、ちらっとボクは玉座の隣に控えるメイド姿の命都の横顔を見た。
最初にやったガチャで運良くSRの従魔・熾天使を当てて舞い上げって、以後従魔が景品の時には必ずガチャをやったり。
ついうっかりギルチャ(ギルド・チャット)で、課金で限界まで増やした個人倉庫の枠からも従魔があふれそうだってこぼしたせいで、レベルカンスト済みで暇をもて余していたギルメン(ギルドメンバー)が調子こいて。
で、古代機械文明の名残という『廃棄庭園』のMOBがたまにドロップする『空中庭園』の設計図の破片36枚をいつの間にか全部集めて復元していて。
そこからさらに必要な材料――それこそカンスト組が10人くらいで行かないと途中で全滅するという『次元迷宮』のボスやMOB、宝箱や鉱物から数%の確率でしかドロップしない激レアな材料20種類を集めることになり――それが1種類に付き50個とかいうマゾ仕様だよ!
自分の為ということで、この辺りでボクも参加して材料を集めて、それを世界各地に点在する機械職人や錬金術師、仙人のところに持って行き、そこでおつかいクエストをさせられたりして、やっと材料を加工してもらい、たまに加工に失敗してまた材料を取りに行ったりと・・・ええ、ボクも途中から楽しんでたしムキになってたのは否定しませんよ。
で、やっとこすっとこ空中庭園が完成したのが4ヵ月後だよ!
自慢じゃないけど、ボクがいたギルド『三毛猫の足音』は全員三次転生カンスト済で、特別称号である『爵位』を持っていたのも5人もいるというサーバ内でも知らないものが居ないくらいの高レベル。
だってのに、それが4ヶ月! ・・・まあ皆良い暇つぶしになったってギルメンは喜んでたし、転移魔方陣から浮き上がった島に転移した時は正直ボクも感無量だったよ。
隣でギルメンが「バルス!」「バルスッ!」ってバルス砲を連発してたのと、気がついたら運営から『空中庭園』最初の保持者ということで、『天嬢典雅』なんていう恥ずかしい称号が贈られ、爵位持ちになって、世界チャットで流されたのが「なにこの公開レイプ?!」って感じでアレだったけど・・・。
さらにその後調子に乗ったギルメンによって島は暗黒の城塞都市へと変貌し――そういういうのが好きな職人が好き勝手に魔改造したからねえ。
ボクとしては島に専用倉庫を置けて、お陰で倉庫枠がトータルで2,000個近くになったということで他の事は割りとどーでも良かったし、その上、島や城内のあちこちに捕獲した従魔を100体展示しておけるということで、さらにレアな従魔を集めまくって展示したもんだから、なんか仲間内から『魔王城』とか『怪物ランド』とか呼ばれたけど当時はスルーしてた。
うん、タイムマシンがあったら当時のボクに文句を言いたい。
こうなるとわかってたら絶対に高レベルモンスターやダンジョンボス級モンスターは集めなかったのに――――っ!!!
玉座――課金家具アイテムの『覇王の玉座』という黄金と宝石で飾り立てられた派手なそれ――に腰を下ろしたまま、冷や汗を流しっ放しで、目の前にずらりと並んで跪拝するモンスター軍団を眺めながら、ボクは内心絶叫していた。
と、ちょんちょんと二の腕の辺りに合図を送られ、見ると天涯が微かに目配せをしていた。
ああ、なんか喋れってことだね。
・・・どーしよ。なんか偉そうに演説したほうが良いのかな? でもボクそんな語彙ないし、てゆーか、さっさと切り上げて頭から布団かぶって寝たい。
いいや、もう適当で・・・
「――皆の者、大儀である!!」
あれ? 日本語の使い方間違ってないかな???
『はは――――――――っ!!!!』
一斉に頭を下げるモンスターたち。中には勢いを付けすぎて床に頭をぶつけて床にヒビを入れてるのまでいる。
・・・この建物って破壊不能アイテムのはずだったんだけど、アレって後で修理できるのかなぁ。
どうでもいいことを思ってたが、天涯がそんなモンスターたちを見渡し、満足そうに口を開いた。
「姫のご尊顔を拝す栄誉を与えるっ。皆の者、面を上げよっ!」
途端にこれまた一糸乱れることなく、ばっと顔を上げるモンスターたち。
うわわわわわわわわわっ。こ、怖~~~~~っ!!!
いや、確かに全員見覚えはあるんだ。ボクが捕獲して従魔にしたモンスターだから。
面影はあるし思い入れもあるんだけど、なんてーの……熊のヌイグルミと正面から対峙したグリズリーの違い?
ゲームのモニター越しだと緋雪の後をちょこちょこ付いてきて可愛かったあいつらが、どれもこれも夜道で逢ったら絶叫して気絶する迫力だよ。
おまけに――
ボクは試しにこの中では比較的初期能力値が低い鬼眼法師のステータスを見てみた。
種族:鬼眼大僧正
名前:九重
所有:緋雪
HP:6,255,000
MP:7,780,000
▼
「………」
これでも雑魚の方で、残りはほとんどBOSS級のモンスターばかりだよ。
どーやら円卓ってそうしたレベルの従魔の成れの果てというか、成り切っちゃった集団みたいだけど。
なんかもうボクなんて居なくても全然問題ないんじゃないの・・・?
そう思うんだけど、なんか知らないけど皆でボクをガン見して、「おおお、姫様だ」「本当にお戻りになられたのだな」「お変わりなく麗しい」「なんという眼福」「再びお目にかかることができるとは」感無量という感じで、中には実際に泣き出している奴らまでいる。
と、玉座の左側に立っていた暗黒騎士の刻耀が、手にしていた槍の石突をがしゃん!と床に落とし、さらにその隣に立っていた九尾の妖狐である空穂が、手にしていた扇で一同を指し示しながらたしなめた。
「御主ら栄えある円卓の魔将であろうに、まるで子供にようにだらしのない。姫様の御前であるぞよ、少しはシャンとせぬか」
その言葉にまたその場に緊張感が増した。
・・・いやいや、けっこう場がほっこりしてて、ボク的には少しは緊張がほぐれ掛けてたんですけど!
「それでは諸君、栄えある円卓の玉座に我らが至高の主上がお戻りになられた。これをもって長き雌伏の時を終え、地上にある全ての愚民どもに我らが王国『インペリアル・クリムゾン』の威光と栄誉を再び知らしめようぞ!!」
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!』
天涯の激に全員が唱和し、その衝撃で玉座から転げ落ちかけたボクは咄嗟に肘掛に手をかけ、反動で床の上に降りた。
その途端、全員のものすご――――――――い期待に満ちた視線が集中した。
・・・こ、これはつまり、なにかパフォーマンスしないとトンデモナイことになるという意味だよね。
このままなかったことにして、退場とかできないだろう・・・ねえ。
あー、もういいや、適当に天涯の尻馬に乗っておこう。
「――立てっ、皆の者よ! 私と共に進み、勝利し、勝鬨を上げんがために!!」
一瞬の間をおいて、跪いていたモンスターたちは一斉に立ち上げり、
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――――っ!!!!!!』
さっきの倍以上の声量で咆哮をあげた。
「――――――――」
・・・はっと気が付いた。なんか数秒間、立って目を開けたまま気絶してたっぽい。
正気に戻ったボクは当然、腰を抜かしてストンと玉座に腰を落としたのだった。
ちなみに、暗黒騎士の刻耀は限定イベント【暗黒皇帝の復活】のBOSSドロップ(低確率)品。
九尾の妖狐である空穂も季節イベントの週間1位の者に贈られる限定従魔
この二人に天涯と命都を合わせて四凶天王となります。
4人の特徴としては全員激レアでまず二度と手に入らないオンリーワンに近いこと。そのため命名としても「空」「時間」など形のないものを題材にしています。
12/18 誤字脱字修正いたしました。
×なんでこんな趣味に走っちゃんだろう→○なんでこんな趣味に走っちゃったんだろう。
×そいういうのが好きな職人が→○そういうのが好きな職人が