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吸血姫は薔薇色の夢をみる  作者: 佐崎 一路
第一章 新生の大地
18/164

第十二話 麗姫降臨

アクセス数とか評価とかΣ(゜Д゜;)


みなさまのお陰でございます。


てか、みなさん前後の作品と間違えてませんかとガクガクブルブル((;゜Д゜))。


「――死にましたな」


 天涯(てんがい)が面白くもなさそうな口調で事実を告げた。


「そうだね。まったく最後の最後まで格好つけて・・・格好いいのと、格好つけは違うって言うのに履き違えてさ。君なんてその他の雑魚(モブ)なんだから、格好つけたらこうなるとわかってたろうに――」


 思わず愚痴をこぼしてから、ふと、天涯もボクと同じものを見ていたことに気が付いた。


「天涯、君がジョーイのことを気にかけてたなんて意外だねえ」


「・・・別に気になるというほどのものではありませんが、数日間姫とともにあの無礼な口を聞いていましたので、ふと目に入っただけでございます」


 うわっ、なにこのツンデレ?!


「それはともかく、戦況もほぼ魔物側に傾いたようですな」


「そうだね」


 人間側はほぼ総崩れと言っていいだろう。

 本部周辺は冒険者の精鋭と、正規軍とでなんとかこう着状態を保っているけど、所詮は多勢に無勢。包囲されたらそれで終わりだろう。


 こうして見ていて、この地の人間の冒険者の実力も、モンスターの力もほぼ把握できた(『E・H・O』エターナル・ホライゾン・オンラインなら、せいぜいチュートリアルが終わった後、2番目に着いた街近辺にいるモンスター程度だろう)。

 ここで必要なことはほぼない、と思うんだけど……。


 なんだろうね、この胸の奥で渦巻くモヤモヤは?


 別にボクが元人間なので、人間に味方したいとかそういうわけではないと思う。

 だいたいこっちに転生してから逢ったモンスターを見ての感想は、獣型を抜かせば思考パターンは人間と変わらないし、区別する必要ないじゃんといったところだ。


 そりゃ全長が3mで、皮膚が緑で、目玉が8個、牙の生えた口が3個で火を吐き、腕が頭から生えてるのを合わせて7本とか、多少見た目は違うけど――というか夜中にトイレから戻る途中でばったり出会った時なんか、「~~~~っ?!?」と声にならない悲鳴をあげつつ、行く前だった完全に漏らしていたなぁとか思ったけどさ――怒り笑い嘆くその行動は、人間のような余計な損得とかしがらみがない分、よほど正直で好感が持てる。


 なので眼下の光景は、ボクにとっては遠い外国の戦争を見ているようなもんだ。


 ・・・だけど、なにか釈然としないんだよねぇ。


「ところで姫。あくまで私見なのですが――」


「うん? なんだい?」


「この地の魔物は、我が『インペリアル・クリムゾン』配下に収めなくてもよろしいのでしょうか?」


 その言葉に、ボクの胸でくすぶっていたモヤモヤが弾けた。


「――そーいえばそうだったね。一方にばかり確認して、もう一方にも確認しないのは片手落ちだったねぇ。よく指摘してくれたよ。じゃあ天涯、悪いけど念話で城から2~3人、お話し合いの助っ人に来てくれるよう話してもらえるかな?」


「承知しました」


 それからボクは戦場の片隅に転がる、小さな遺骸を再度確認した。

「・・・それから君にもまだ依頼料を渡してなかったね」




 ◆◇◆◇




 勝敗はほぼ決したと言っていいだろう。

 次々と運ばれてくる負傷者を前に、ガルテ副ギルド長は指揮官としてこの場から退却すべきか、それとも万に一つの可能性をかけ、残った全戦力をまとめ上げ大鬼王(オーガキング)相手に、最期の特攻をすべきか思い悩んでいた。


「ガルテ副ギルド長っ!」

 そこへ聞きなれた部下の若干焦りを含んだ声が掛けられた。


「ミーアか、まだこんなところにいたのか!? 負傷者を連れてさっさと後方へ避難しないか!」


「あの…ジョーイ君は、負傷者の中にジョーイ君がいないんですけど、こちらに来ていませんか?!」


 必死なその様子に一瞬胸を突かれたが、ガルテ副ギルド長は首を横に振った。

「いや、前線に行ったままだ。少なくとも俺は見てない」


「そう……ですか」

 それだけで少年の安否がわかったのだろう、ぐっと唇を噛んだミーアだが、ふと味方に肩を借りてこちらに向かってくる人物を確認して、大きく目を見開いた。


「ギルド長っ! ご無事だったんですか!!」


 ガルテ副ギルド長もその声に慌ててその人物――コラードギルド長のところへ駆け寄っていた。

「おうっ、生きてたのか!」


「・・・ええ、お陰さまで悪運は強い方でして」

 とはいえ魔力も底を尽き、疲労困憊で歩くこともままならない様子であった。


「だが、ちょうど良いタイミングだったな。――ミーア、ギルド長を連れて後方へ下がってくれ。ギルド長、悪いが少しでも体力が戻ったら、俺の代わりに現場の指揮を頼む」


「あなたは・・・どうするんですか?」


「まあ、どこまで出来るかわからんが、最期の悪あがきと行こう」


「「………」」

 にやりと獰猛に笑うガルテ副ギルド長とは対照的に、コラードギルド長、ミーアともにその意味を悟り、無言で俯いた。


 と――


「な、なんだあれは――――!?!」

「・・・エ、真龍エンシェント・ドラゴンだと?!」

「いや、違うっ! あんなバカでかい奴なんて聞いたこともないぞ!!」


 周囲の驚愕の騒ぎに3人が視線を向けたその先で、巨大な――翼幅200m、頭の先から尻尾の先までも同じくらいの長さがある――黄金に輝く龍が、いままさに天上より舞い降りようとしていた。


 だが、3人の視線を釘付けにしたのはソレではなく、その頭部に傲然と立つ、ドラゴンの巨体に比べあまりにもちっぽけな、しかしそれ以上の存在感を発する、漆黒と赤薔薇に彩られたドレス姿の少女であった。




 ◆◇◆◇




 全身がぽかぽかと温かくなる、ぬるま湯のような気持ち良い感覚に浸っていたジョーイは、ゆっくりと(まぶた)を開いた。


「やあ、ジョーイ。体の調子はどうだい?」


 地面に横たわった自分に覆いかぶさるようにして中腰で座って、淡く輝く掌を向けていた緋雪(ひゆき)の屈託のない笑顔に、ジョーイは一瞬ここが天国で、目の前にいるのはやっぱり女神様なんじゃないかと疑った。


「おま……どうして…俺、死んだはずじゃ……」


「うん。死んでたねぇ。こっちの世界でも完全蘇生(リザレクション)が使えるかどうかわからないから、ぶっつけ本番だったんだけど、効果があったみたいだよ。運がよかったねえ」


完全蘇生(リザレクション)・・・? なんだそりゃ?」


「ああ、私のスキルだよ。そういえば私の職業(ジョブ)を教えてなかったけど、実はダブルジョブでねえ。剣士の最高峰である『剣聖』と聖職者の最高峰の『聖女』を取得してるんだよこれが。

 なかなかスパイスが効いてると思わないかい? 闇の眷属の最高峰たる吸血姫(ヴァンパイア)が『聖』って名のつく職業を2つも持ってるんだから。仲間(ギルメン)からは良く「種族詐欺(サギ)」「暗黒詐欺(サギ)」って言われたもんさ。失礼だね、まったく」


 そう言ってぷりぷり怒る緋雪の姿に、いつもの日常を感じてジョーイは笑った。

「ははっ、なに言ってるかわかんねーや。でも、お前ってやっぱり凄い奴だったんだな」


「『凄い』の一言で片付ける君もなかなか大物だと思うけどねぇ。それはそれとして、黄泉の国から引き戻したのには訳があってね。考えてみれば今回のゴタゴタで、私はまだ君に依頼料を払ってなかったろう? だからまあ…三途の川の渡し賃みたいだけど、いまのうちに払っておこうと思ってね」


 そう言って、腰のポーチから大陸共通銀貨を3枚出す緋雪。


「確か平均が銀貨2枚に割り増し料金が8掛けだったけか? じゃあ延滞分も含めて3枚にしておくよ」


 目の前に差し出された小さな掌に乗る銀貨を前に、ジョーイは困惑の面持ちで黙り込んだ。


 そんな二人(正確には龍形態の天涯が周囲に睨みを利かせているが)の背後で、遠巻きに様子を眺めていた人間側の集団の中から2名、いや――もう1人が大柄な男の背中に背負われているので――3名が大慌てで飛び出してきた。


「ジョーイ君!」

「ジョーイ、お前、無事だったのか?!」

「なぜ貴女がここに・・・?」


「おや、皆無事だったんだねえ。とはいえあなた方には興味はないので、少し静かにしてもらえないかな?」


 淡々としたその言葉に、近寄ろうとした3人の足がピタリと止まった。


「さあ、ジョーイ。この後も別件で用事があるので、受け取ってくれないかな」


「・・・・・・嫌だ」


「――? 金額に不満があるのかい?」


「そうじゃねえ。やっぱ仕事もしてないのに依頼料は受け取れねえよ。だからそいつはもらえない」


「いや、依頼主である私が十分だと判断してるんだけど。――ねえ、こういうケースってどうなるのかな、ミーアさん?」


 不意に話を振られてミーアは一瞬うろたえたが、気を取り直して答えた。

「そうした場合の対応について、先に明確に書面で契約していない以上、依頼主と冒険者双方の話し合いとなります」


「ふーん、じゃあ結局は君がうんと言わないと宙ぶらりんか。どうすれば受け取ってくれるのかな?」


 訊かれたジョーイは数呼吸ほど考え、

「だからきちんと俺に街の案内とかさせろよ。それが終わったら依頼料も受け取るから」

 そうきっぱりと言った。


「・・・いや、案内といっても、街もこんな具合だし、私も次の目的地に向かうつもりだしねぇ」


「じゃあお前がヒマになった時でも、案内すればいいんだろう?」


「そんなのいつになるかわからないよ?」


「いつだって構わないさ。だいたい『期間は未定』って言ったのはお前じゃないか、だったら何年先でも契約上は問題ないってことじゃないのか?」


 その言葉に目と口を丸くする緋雪の唖然とした顔に、ジョーイはこれまでさんざん振り回されてきた溜飲が下がった思いで、悪ガキのような笑みを浮かべた。


「・・・参ったね。確かにそう言ったねぇ。それじゃあ仕方ない、次に来るまで契約は続行しておくよ。――これじゃあ観光が終わるまで街を壊すわけにいかなくなったじゃないか。まったく、こういう天然のが、小賢しい理屈とか跳び越えてくるんだよねぇ」


 軽く肩をすくめて一人ごちた緋雪の言葉に、はっとした表情で顔を見合わせるコラードギルド長とガルテ副ギルド長。


「さて、では別件も片付けないといけないので、私はそろそろ行くよ」


 すくっと立ち上がった緋雪に向かい、ようやく上体を起こせるようになったジョーイが寂しそうに訊いた。


「――また、来るんだろう?」


「前にも言ったろう、ここには君が一人前になるまで私のお金を預けておくんだから、君が一人前になる頃取りに来るさ」


「そうだったな。じゃあ、またな」


「ああ、君も元気で」それからちらりと後方に立ち尽くす3人を見て続けた。「君達もね。――ミーアさん、ジョーイはこの通り言っても聞かない様なので、きちんと手綱を握った方がいいよ。ガルテ副ギルド長、同じく訓練で頭よりも体に覚え込ませておいてね。コラードギルド長、あなたは上に立つものとしては問題だけど、人としては立派だと思うよ」


 最後にそう言って、後ろ手にひらひらと手を振って、大鬼王(オーガキング)が率いるモンスターたちが待つ方角へと、散歩にでも行く気安さで歩いていく緋雪。


 ジョーイはもう一度口の中で「じゃあな、ヒユキ」と別れの言葉を告げ、残り3人は黙ってその背中に一礼した。

今回で第一章終了予定だったのですが、もうちょっと続きます。

あと前書きにもありましたけど、本当に夢のようです!

なんか狐にでもつままれている気分です(´д`ι)


あとこの展開についてはご批判もあるかと思いますけど、当初から予定していたプロットに従いまして、このような形となりました。


8/19 修正しました。

×配下に治なくても→配下に収める


9/22 誤字修正を修正しました。

ルビで、○オークキング→×オーガキング

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― 新着の感想 ―
[一言] 結局復活させたんかい…。つまらん
2023/11/16 00:41 ただの社畜
[一言] なんだ結局助けたのか。この展開にはがっかり。期待はずれな主人公。
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