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吸血姫は薔薇色の夢をみる  作者: 佐崎 一路
第五章 吸血の魔神
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第十五話 楽園之蛇

 巨象に絡みつく毒蛇のように、空中庭園に取り付いた廃龍(ニドヘック)が不気味に蠢いていた。

 立ち塞がる真紅帝国インペリアル・クリムゾンの魔物たちを吸収・増殖しながら、ゆっくりと移動していた。鎌首の狙う先は空中庭園の中枢・虚空紅玉城本体である。


 10万前後の魔物たちが暮らす魔の楽園にして、緋雪の愛した箱庭がいま1匹の毒蛇によって侵食されようとしていた。

 無論、ここに住む住人達はどれもこれも一騎当千の(つわもの)ばかりであり、ごく一部を除いて全員が兵士であるのだが、この強大な侵略者に対しては正直、攻めあぐねる……というのが実状であった。


 何と言っても目の前にそびえ蠕動する肉の壁は圧倒的で、数多の魔物と戦ってきた彼らにしても、これほど巨大な魔物は経験したことがなく。それを目にした者すべてが驚愕に目を瞠り、呻き声を漏らすこととなった。

 とは言え、驚きはあっては彼らには恐怖も惰弱の二文字も存在しない。


『敵』と認定すればこれを斃すまで。即座に実行に移す。


 接近戦は厳禁との布告が早い段階で出たこともあり、全員が遠距離攻撃に切り替えて、炎や氷、毒液、風刃など景気よく浴びせ掛け、最初は調子よく効果的に攻撃が通じるかと思われたのだが、次第に効果がなくなり、逆に相手が活性化するに至り、ようやく敵の特性を理解した。


 ――こいつ、俺たちの攻撃を喰ってやがる!!


 慌ててその場から離脱しようとした彼らだが、時すでに遅く、ある者は魔眼に囚われ、ある者は触手に絡め取られ、またある者は膨大なその質量に力負けして、なすすべなく同化吸収されていった。


 無論、早い段階で廃龍(ニドヘック)の特性については、地上から説明があり円卓メンバーとそれに並ぶ『列強』と呼ばれる実力者及び軍関係者には周知されてはいたが、現場に居合わせた民間の魔物は知る由もなく、各個撃破の標的となったしまった。

 この結果、廃龍(ニドヘック)襲来から僅か15分ほどで300名近い行方不明者(吸収されたと思われる)を出す、真紅帝国インペリアル・クリムゾン本国における初の戦闘及び未曾有の惨劇となった。


 とは言え第一陣の犠牲者が出て以降、幸いにもさほど犠牲者を出さなくなったのだが、原因としては、逸早く現場に駆けつけた円卓メンバーの尽力と、廃龍(ニドヘック)の戦闘方法の変化によるものがあった。


 戦闘が開始されてから20分ほど、お互いにこう着状態になりかけたところで、臓物にも似た廃龍(ニドヘック)の表面に、細かな(いぼ)もしくは膿のような突起が生まれ、次々とそこから無数の弾丸が都市全体に放たれたのだ。


 一見すると人間の身長ほどもある弾丸。それが着弾の衝撃で、ぐちゃりと割れると、爛々と赤い目を輝かせた吸血鬼――辛うじて四肢と頭部を備えた人型であるが、もはや吸血鬼とも言えぬ腐りかかった化物――と化し、手当たり次第にその場にいた動くものに襲い掛かり、結果、本体である廃龍(ニドヘック)への対応を後回しにする形で、各地で散発的なゲリラ戦を展開せざるを得なくなってしまった。




 ◆◇◆◇




 虚空紅玉城内部、評定の間。

「敵戦力が分散……これの中身は吸血鬼というより、吸血鬼ベースに作られた擬似生物といったところですわ」

 上半身が美しい白磁の肌をした黒髪の女性が、淡々とした口調で現状の報告を空穂(うつほ)へと行っていた。アメリカ先住民の衣装を纏った彼女だが、その下半身は巨大な蜘蛛となっている。十三魔将軍の情報参謀『コクヤングティ』始織(しおり)である。

 一見黙ってその場に立っているだけのようだが、下半身の蜘蛛の手足・副椀も総動員して、現在張り巡らされた超極細の糸を使い、刻一刻と変化する状況の把握に努めていた。


「発射速度はおよそ毎分4000発。1個体として脅威としてはレベル35程度で問題になるレベルではありませんが、すでに各地に到達した分だけで6908…7026…加速度的に増えています」

「迎撃はなにをしておるか! 上空には出雲(いずも)が出張っておるであろう!?」

 空穂の怒鳴り声に、ゆるゆると首を振る始織。

「出雲殿はよく頑張っていらっしゃいます。およそ92パーセントは地上到達前に撃墜されておりますが、いかんせん精密射撃には難があるところがございます。斑鳩(いかるが)様であれば、およそ100パーセント近い数字を出すのですが、今回は運が悪かったとしか……あら。上空の親衛隊長・(さかき)からです。撃ち漏らした分について、親衛隊の天使達でカバーに回ることを提案しておりますが、いかがなさいます?」


「ふむ」2呼吸ほど思案した空穂だが、即座に首を振った。「いや、それは悪手であるな。報告によれば、アレに明確なダメージを与えられるのは『聖』関係の攻撃のみ。ならば親衛隊は現状のまま本体を攻撃させるが吉であろう。地上に落ちた分の掃討は、現場の者に任せようぞ」

 これが通常の人間や亜人の軍隊であれば、精神的な重圧からやがては総崩れになるところだが、基本的に全員が戦闘狂のこの国の住人たち。その士気と能力、そして忠誠に全幅の信頼を寄せている空穂にしてみれば、そのような心配など考えるまでもなかった。


 事実、それを裏付けるように、

「現在の敵分体の掃討率は99.97パーセント。ほぼ100パーセントと言ってもよろしいでしょう」

 始織の報告があがる。

「――100でないところが、もどかしいのぉ」

 とは言え空穂にとっては、まだ不満なようだ。


「やはり過疎地区や非戦闘員地区に落ちたものに関しては、対応が後手に回りますので。……よろしければわたしも迎撃に回りますが?」

 始織の糸は感知のみならず、切るも縛るも自由自在である。

 言わば伸ばした手足の延長線上で、敵が我が物顔で暴れ回っているのを、常時感じているに等しい。さっさとその手で、一撃を入れたいというのが本音なのだろう。


「いや、お主にはいまは状況分析と感知に全力を注いでもらおう。なにより、いまは時を待つのが肝要である。準備が出来次第、あのデカブツ相手に反撃の狼煙をあげ、キツイ灸を据えてやらねばのぅ」

「できますか?」

「……可能でしょう」

 それに答えたのは、いつの間にかこの場へ分身体を飛ばしてきた周参(すさ)であった。

「周参?」

「奴は敵吸血鬼の祖が、自らの眷属をベースに群体として作り出した合成獣(キメラ)。構成に核となる部分はありませんが、この短時間にこれほど水際立った動き及び規模での変則攻撃を行う以上、必ずや統制する個体が存在すると思われます」

「つまり敵吸血鬼の祖がいて、それがあの化物を操る張本人である。それを見つけ次第、誅殺すれば良いとのことであるな」

「はい」

 口にするのは簡単だが、それがどれほどの難事であるか――そもそも地上組が失敗したからの現状である――考えるまでもないことだが、空穂は口元に挑戦的な笑みを浮かべた。


「……お急ぎください。この場へお一人で帰還されようとする姫を、現在天涯殿以下全員で両手両足を押さえてお止めしている状況ですので」

「なるほど。確かにそれは非常事態であるのう」

 予備の扇子で口元を隠して、空穂はさらに口角を吊り上げた。




 ◆◇◆◇




 虚空に漂う空中庭園のさらに上空。

 500人近い天使達と、その5倍は居る各種色とりどりの竜種たちを統括している銀翼の機甲天使【メタトロン】榊は、両手に持った戦艦の主砲ほどもある巨大な機関砲の引金を引き続けていた。

 ガチャの景品として登場した時には、そのメカニカルな装甲や武装から、「世界観が違う」と非難された彼女ではあったが(さすがに運営の方でもクレームが多かったため、第二弾企画は没となった)、この戦場にあっては、『遠距離攻撃ができ、なおかつ属性を持たない純粋な物理攻撃』という戦闘スタイルが、絶大な効果を発揮していた。


 巨大な弾倉が回転しながら弾を打ち出す機構のこの銃を両手で軽々と扱いながら、榊は廃龍(ニドヘック)を包囲する形で展開する部下達に指示を飛ばす。

「各自、そのまま待機して、合図があったところで一斉攻撃。周りの雑魚は相手にするな。あくまで本体のみ。天使隊は化物の体を狙え。竜戦士隊は奴の背中に乗っている建造物を集中して破壊せよ。いいな、空穂様からの合図があってから攻撃だ」


 激流もしくは滝のように銃口からあふれ出る銃弾で、彼女達のさらに上空、巨大な暗黒の渦巻状をした十三魔将軍副将・出雲(いずも)の放つ暗黒物質ビームの障壁の隙間から僅かに逃れて、降り注ぐ吸血鬼弾を破砕しながら、榊は密かにため息をついた。


 ――とはいえ後手に回るのは、我々の戦闘スタイルとしてはどうにも歯がゆいな。いつまでも現状のまま進展がないと、いい加減部下達の押さえが利かないぞ。


 いつまでも終わる事のない敵の攻勢を前に、榊は厳しい顔で破壊の元凶を睨みつける。




 ◆◇◆◇




「さすがに厳しいか……」

 増殖する敵兵――崩れた顔に爛々と光る左右非対称な赤い目、穴が開いただけの鼻、紫色の舌が伸びた骸骨のような顎、そして人間と昆虫を組み合わせたような歪な骨格の体と四肢を備えたそれ――を前に、七禍星獣(しちかせいじゅう)九重(ここのえ)は果敢に戦っていた。


 いつの間にか戦場は市街地を抜けて、王宮前の広場(と言ってもちょっとした町程度の広大なものだが)へと移っていた。より正確には、廃龍(ニドヘック)の侵攻に併せて押し込まれていたと言える。

 いつの間にか都市部への擬似吸血鬼の放出は散発的になり、代わりに廃龍(ニドヘック)本体から、ずるりと抜け出すように擬似吸血鬼が地表付近に産み落とされ、それらが土石流のような勢いで迫ってくる。


 対抗して九重もアンデッド兵を召喚しているが、相手の増殖速度に付いていけないのが現状であった。

 各地の擬似吸血鬼を掃討し、危険性が低くなったと判断した味方も続々とこの場に集結しているが、それでもまだ抑え切れない。

 数に押し切られて前線の味方が崩壊する――そこへ、涼しげな少女の声が、不思議とよく通った。

「……ったく、ちょータルいんですけど。なんだって姫様も見てないところで、サービス労働とかしなきゃいけないわけー」


 乳白色の髪が風にそよいだ。嘆息するように言うワンピースを着た少女が、九重の背後に立っていた。

 面倒臭そうな動作でその左手が軽く持ち上げられ、迫り来る擬似吸血鬼の群れを指した途端、肩から先が爆発したかのように膨れ上がり、あらゆる色彩が混じりあった“混沌”と化して、そこへ襲い掛かる。


 まさにひと薙ぎ。

 一瞬で膨大な数の擬似吸血鬼の群れを飲み込んだ混沌のそこかしこが、泥沼から噴出すガスのように膨らみ、弾けたところから、吸収されかけた魔物たちが、王宮の手前へと吐き出されてきた。

 衰弱はしているが辛うじて息はある彼らの姿と、涼しい顔でさらに“混沌”の領域を押し広げる――いつの間にか両膝から下も溶け崩れて“混沌”と化している彼女を見て、九重がほっと吐息を漏らした。


真珠(しず)殿であるか……」


 十三魔将軍の一柱(ひとり)真珠(しず)。『深淵に住む者』『混沌』とも謳われ、その名を呼ぶことさえ厄いを呼ぶと恐れられた魔将の中の魔将【デモゴルゴン】。それが彼女の真の姿であった。

 ちらりと九重を横目に見た真珠は、ずるりと半身を混沌に変えながら、悠々と廃龍(ニドヘック)へ向かって進む。

 それを見た魔物たちが歓声をあげるが、まったく無視して進む彼女の“混沌”の堆積が、膨大な量の津波と化して廃龍(ニドヘック)へと襲い掛かった。


「さて、そちらの“貪欲”と私の“混沌”どちらが勝つかしらね」

 最後に残った顔の半身がそう呟いて、ずるりと溶けた。




 ◆◇◆◇




「むっ、始めたか!」

 虚空紅玉城正門前で待機していた巨大な白銀の獅子――十三魔将軍の一柱(ひとり)【バロン】森螺(しんら)が、のっそりと立ち上がった。

 空中庭園が普段航行している闇を纏った亜空間ではなく、通常の成層圏にいるために白銀の体毛が陽光を反射して、全身がキラキラと光を反射している。


 一気に王宮前広場を走破した森螺は、巨大な廃龍(ニドヘック)相手に、じわじわと混沌の領域を押し広げている真珠を目に留め、にやりと笑い、それから厳しい目でいまだ健在なその身体の大部分を眺めた。


「貴様は確か『聖光』が弱点であったな。ならば我こそは貴様の天敵よ! 喰らえっっっ!!!」

 まさに獅子吼と呼べる咆哮と共に、森螺の(たてがみ)が扇のように広がり、そこから極太の熱線(ビーム)のように、凄まじい威力の聖光が放たれ、光に当たった廃龍(ニドヘック)の身体が、火に炙られたバターのように溶ける。


 さすがに苦痛を感じたのだろう、廃龍(ニドヘック)の全身から牙門と白夜を襲った麻痺光線(パラライズ・ビーム)が放たれるが、森螺に命中する直前、すべてその両の目の中に吸い込まれ、一拍遅れて数倍に威力を増した麻痺光線(パラライズ・ビーム)が、逆にそこから放たれた。


「我にビームやレーザーの類いは効かんぞ! さっさとくたばるが良い!」

 スパスパとナイフでロールケーキを切り分けるように、廃龍(ニドヘック)の身体を輪切りにする。


 切られた部分をなんとか融合させようとするが、通常の攻撃ではなく聖光で焼かれた部分は火傷のようで、容易に癒着しようとしない。

 しかもこの時を満を持して待っていた、親衛隊の天使たちが、そうはさせじと『聖』属性の攻撃を傷口へと叩き込み、さらに増殖した真珠の混沌がこれを侵食する。


 不利を悟った廃龍(ニドヘック)が、この戦いの間ずっと囲っていた居城【アルマミス】を守る肉の壁を移動させ、本体の質量に廻した。


「いまだ! 竜戦士隊全力で剥き出しになった敵の居城を攻撃!」

 刹那、守りの薄くなった【アルマミス】へ向け、上空を舞うドラゴンたちが一斉にブレスを放射した。


「『サンダルフォン』来い!」

 親衛隊長・榊の声に応えて、巨大と言うのもおこがましい、ちょっとしたビルほどもある大砲(?)――使用方法としてはバズーカに近い運用で肩にかけた、バカみたいな兵器を装備して、真上から【アルマミス】へ向け照準を合わせる。

「フルチャージ! “ドーラ・インパクト”発射!」

 ズン!という大気を震わす腹の底に響く震動とともに、超巨大殲滅兵器『サンダルフォン』の薬室に当たる部分が後退(ちなみに1発撃ったら終わりの使い切り)、銃口からプラズマを伴った閃光が流れ落ち、【アルマミス】を貫通し、一瞬遅れてこれを粉々に砕いた。




 ◆◇◆◇




 空中庭園ではあり得ない地震のような突き上げに、広大かつ豪華絢爛な廊下を小走りで走っていた、どこか野暮ったいスーツ姿の男が、足を止めて「おやぁ?」と首を捻った。

「なんかいままでにない衝撃だったけど、ひょっとしてやられたかな?かな? しょうがないにゃあ」

 ふざけた調子で一人ごちる、彼の背後には6人ばかりの鎧冑姿の騎士らしい男達が続いていたが、誰も口も聞かず無言で男に従っていた。

 もしここに聖教関係者がいれば絶句しただろう。

 彼らの装備、武装、顔ぶれは間違いなく、全滅したはずの聖堂十字軍カテドラル・クルセイダーツ、その騎士団長である『聖人(セイント)』ベルナルド・グローリア・カーサス以下、中隊長クラスの指折りの実力者ばかりであったのだから。


「まあ、気にしてもしかたないにゃ。さっさと目的を果たすよん」


 そう言って先を促す男の顔には、真っ白い仮面が被せられていた。

 にこりとも、一言の同意の声もなく、男の指示に従って人形のように動き出した騎士達だが、再び先頭を走る男の足が止まったことで、音もなくその場に整列した。


 見れば廊下の先を立ち塞がるようにして立つ、大柄な2名の男の姿があった。

 そのうちの一人、白と蒼の鎧をまとい、赤い鬼面の仮面で顔の上半分を隠した赤に近い金髪の青年が、肉厚の大剣を抜き身で持ったまま、一歩前に出た。


「念の為に待機してればビンゴか。ここで大将格を討ち取れるとはな」

 その背後に控えている長身の青年よりもなお頭一つ大きな、こちらは無手の大柄の老人が顎鬚を撫でながら同意する。

「おぬしの読み通りだったな。まさかここまで派手な陽動をするとは思わんかったが」


「あー、すまんけど、そこ通してくれないかな? ちょっと急いでいるもんで」

 そんな二人へ向かって白仮面の男が、馴れ馴れしく語りかける。


「通したらどうするんだい?」

 赤い仮面の青年が面白そうに聞き返す。


「もちろん! このまま緋雪ちゃんの部屋に行ってパンツを貰って行きます!」

 大真面目な口調で、ふざけた答えを返す男に向かって、青年は剣の先を向けた。

「なら絶対に通すわけには行かないな。姫のパンツもなにもかも、俺が貰うと決めてるんでね」


 大仰な仕草で肩をすくめる白仮面。

「おやぁ。もしや恋敵(ライバル)? むう、はじめて逢った時から、同じ仮面同士として、白黒つけないといけないとは思ったけど、やはり相容れるものはなかったようですね」


「そうだな。そういうことで、ここで決着をつけておこうか」

 無造作ともいえる足運びで距離を縮める青年にあわせて、老人も自然体で足を進める。


「――ふむ?」

 なんとなく身の危険を感じて後ろに下がった男の前に、元聖堂十字軍カテドラル・クルセイダーツの聖騎士達が剣を抜いて進み出た。


「とりあえず、助さん格さん、やっておしまいなさい!」

 男の投げ遣りな指示に従って、ベルナルド以下、騎士たちが二人を包囲する形で広がった。


「老師、こいつらの装備から見て、噂の最強騎士団聖堂十字軍カテドラル・クルセイダーツの聖騎士のようですよ」

「ほほう。音に聞こえた聖王国の虎の子か。これは楽しみだ」

「俺もですよ。思いがけない形ですが相手にとって不足はないってところですね。……さて、一応名乗りはあげておくか」

 中段に大剣を構えたまま、青年は騎士達の隊長格らしい、鋼鉄のような謹厳な顔立ちの男へ剣を向けた。

真紅帝国インペリアル・クリムゾン国主、緋雪様の眷属にして剣、稀人(まろうど)。参る」

「同じく真紅帝国インペリアル・クリムゾン武術指南役、獣王」


 その名乗りに、これまで一言も口を聞かなかった男が、腰の二刀を抜いて始めて名乗りを上げた。

「元聖堂十字軍カテドラル・クルセイダーツ騎士団長ベルナルド・グローリア・カーサス。いざ参る」


 次の瞬間、稀人の伝説級武器レジェンドリィ・ウエポンハワルタ-ト・ブレードと、神剣・真十字剣及び伝説級武器レジェンドリィ・ウエポンクォ・ヴァディスとが、火花を散らして激突した。

緋雪がまったく出てないことにいま気が付きました。どーしましょう。

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