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吸血姫は薔薇色の夢をみる  作者: 佐崎 一路
第五章 吸血の魔神
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第十三話 魔城破壊

今回で七禍星獣全員がでました。

 まずは最初に廃龍(ニドヘック)の前に立ち塞がったのは、七禍星獣の№7.《アプサラス》七夕(たなばた)であった。

 自前の純白の翼――一見すると天使のような姿だが、これは白鳥の化身たる彼女の象徴でもある――で、廃龍(ニドヘック)の進行方向真正面に降り立つと、速やかに翼を消し、恐れ気もなくその柔和……というには妖艶すぎる顔に、蠱惑的な笑みを浮かべた。


 直径だけでも数百mはありそうな廃龍(ニドヘック)に比べれば吹けば飛ぶようだが、現在の彼女の身長は普通の人間の3倍ほどもある。

 その両脇に彼女を守る形で2匹の麒麟が待機していた。……いや、2匹というのは正確ではない、麒麟の『麒』は雄を指し、『麟』は雌を差すように雌雄2匹で1対の七禍星獣の№5.麒の『五運(ごうん)』と麟の『五雲(ごうん)』である。


「……このあたりでよかろう。なにかあれば我が盾となるゆえ。七夕、汝は存分に姫様の勅命を果たすが良い」

「万一の怪我などがあれば、わたくしが癒しましょう。ご武運をお祈りしていますわ」


 交互に声を掛ける同輩に微笑を返して、七夕はゆっくりと前進しながら廃龍(ニドヘック)との距離を縮める。その足取りは軽くすでに恍惚たる忘我の域に入っていた。

 短い腰衣をまとっただけで、豊満な胸を誇るように惜しげもなく、さらけ出した美女。その魅惑的な全身には、額飾り、髪飾り、耳飾り、首飾り、胸飾り、指輪、腕輪、足輪などがふんだんに飾り立てられ、それらすべて金細工の装飾が施され、歩くたびにシャラーン、シャラーンと振るえ、鈴のような涼しげな音がこだましていた。


 やがて全身でリズムをとり、七夕はその場で舞を踊り始めた。装飾品を打ち鳴らし、ステップを踏みながら、手足の先、視線、髪の先までもすべて淀みない流れのような、柔らかでかつ力強い動きで、肢体すべてをゆるやかにくねらせる。

 まさに神舞。霊妙かつ幻想的な音と動きは、見る者の魂まで引き込まずにはいられない、天上の踊りであった。


 周囲を警戒するため、この辺りまで先行していた聖王国と帝国の歩哨たちも、いつしか状況を忘れて見入っていた。いや、ろくな知性がないはずの廃龍(ニドヘック)ですら、その場に留まり彼女の舞に目を奪われているようであった。


 やがて、周囲の光景が少しずつ色褪せ…まるで蜃気楼のように、ゆらゆらと揺れ、自分が立っているのか座っているのかすらわからないような、感覚そのものが不明瞭となる不可思議な現象が、その場にいた全員へと襲い掛かってきた。


「……《幻力(マーヤー)結界》。見事なものだ。こうして心構えをして、目を閉じていた我々さえも、しかと現実と虚構とが区別できん」

 溶けた絵の具で構成されたような周囲の光景を眺めながら、五運が思わず……という風に感嘆のため息を漏らした。


「ですが完璧でもありません。さすがにあの巨体すべてを結界に閉じ込めるのは不可能でしょう。先頭部分を幻惑させても、それ以外の部分が正気であれば、ほどなく力ずくで突破されるのは必至。注意してください」

 硬い声で窘める五雲。

「ふん。そのために他の者が配置されているのだろう。仮にも円卓の魔将、この程度の雑事がこなせぬようなら、さっさと引退するべきだな」

 五運が嘲笑う。




 ◆◇◆◇




「ふん。図体ばかりでかいウスノロ相手というのは、いささか面白みがないが……まあ、他に能がない分、せめて大きさでなんとかしようという肚か」

 目の前で蠢く廃龍(ニドヘック)の横腹を眺め、十三魔将軍・牙門(がもん)は「ふん」と鼻を鳴らした。

 とは言え、そういう彼自身も身長50mの巨人――巨神である。

 彫りの深い端正といっても良い顔立ちに分厚い胸板、鍛え上げられた腹筋、巨岩のような両足。ただし下半身には蛇のような尻尾が生えとぐろを巻き、両腕はメインの逞しい2本を別にして、太さも長さもまちまちな副腕が計98本の合計100本ある――嵐の怪物テューポーン。それが彼の真の姿であった。


「――さて。どうやら七夕も始めたようだ。姫様もご覧になってらっしゃる、こちらも無様な真似はできんか」

 そう一人ごちながら、おもむろにすべての腕を広げる牙門。

「――かああああああああああああああああっ!!」

 咆哮とともにすべての掌の上に牙の生えた口が開いた。一見すると無数の蛇のようである。

 それらが一斉に周囲の空気を吸い込み始めた。


 凄まじい勢いで吸い込まれる風に、土砂が舞い上がり、岩が削れて粉々になり、廃龍(ニドヘック)の巨体ですら、吸い寄せられられ、ズルスルと引き伸ばされて来た。


 程なく、充分な空気を溜め込んだ牙門の腕の口が、今度は先ほどの勢いの数倍の威力で、轟々と風を吹き出し始めた。

 さらに両腕を振り回し、トドメとばかり、尻尾を基点に全身を回転させる。

 いつしか彼を暴風の中心として、凄まじい勢いの砂嵐が廃龍(ニドヘック)の巨体すべてを、すっぽりと覆い尽くした。


 困惑した様子で身をよじる廃龍(ニドヘック)

 しかし、牙門の回転は留まることを知らず、暴風は竜巻と化して、天に届かんばかりの砂色の柱と化した。


「行くぞっ」

 牙門の巨体が自らの生み出した大竜巻に飲み込まれて浮き上がる。

 凄まじい回転エネルギーで加速しながら、一気に竜巻の最上部まで達した牙門は、真下に見える廃龍(ニドヘック)の中心部に狙いを定めると、弾丸のような勢いで螺旋を描きながら、超弩級の蹴りを放った。


 音速を突破する勢いで放たれた50mの弾丸が、廃龍(ニドヘック)の中心部をごっそりと抉り取る。

 純粋な物理攻撃に、あらゆるエネルギーを吸収し得る、さしもの廃龍(ニドヘック)も成すすべなく、身悶えして苦痛の声をあげた。


「――ふむ。少し外したか? 一撃で両断するつもりだったのが」

 着地の衝撃で作られたクレーターから、のっそりと這い出した牙門が、攻撃の成果を見て、若干不満そうに呟いた。


「おいおいおいおい! 面白いことやってるじゃないか、牙門! てか、お前の役目って、足止めだったんじゃないのかよ、おい?」

 そこへ愉しげな口調で、上空で待機していた十三魔将軍 《ハヌマーン》 白夜(びゃくや)がやって来た。

 同じ風属性ということで、牙門が作る《暴風結界》を維持するサポート役のはずだったのだが、彼の行動を見て、押さえが利かなくなって降りてきたらしい。


「ふん、《暴風結界》で足止めしろとは命令されたが、別に斃して悪いとも言われておるまい。言われたことを言われたままに行うだけでは、忠臣とは言えまい。それに第一、面白みがない」

 詭弁とも言える牙門の説明に、呵呵大笑する白夜。

「その通りだな! いや~~っ、お前、固い奴かと思ってたら、意外とおもしれーわ! そーだよな。さっさと斃しちまえばいいんだもんな! よしっ、やるか!!」


 白夜も勇躍飛翔すると、風に乗って超高速で飛び回りながら、三面六臂のそれぞれの腕に、金剛杵(ヴァジュラ)、三叉戟、金剛鈴、金剛剣、輪宝、羯磨金剛(かつまこんごう)を、どこからともなく取り出して構えた。


「ふん。肝心の《暴風結界》の維持を疎かにするなよ」

 その背中に声を掛けつつ、再びその場に竜巻を作り出す牙門。


「ぃやっほおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 嬌声をあげながら廃龍(ニドヘック)の全身を、ズタズタに切り裂く白夜。

 廃龍(ニドヘック)は怒りの唸りと共に、ついに全身に魔眼を開くが――、

「はははははっ! そんなトロトロするわけねーぜっ!!」

 まさに目にも止まらない動きに加え、瞬間的な時間の跳躍・停止・逆行まで使用する白夜を捉えきれるわけもない。


 さらにそこへ再び、超加速で撃ち出された牙門の蹴りが炸裂する――かと思われた瞬間、廃龍(ニドヘック)の全身から、紫色の熱線(ビーム)が全方向へランダムに発射された。


「――ぬう。これは熱量もさることながら、痺れが……!」

 何本かの熱線(ビーム)の直撃を受けた牙門は、手足の先に痺れを感じて、背中にある《アルマミス》を狙った蹴りが、大きく狙いを外して背中の一部を削るに留まった。


 轟音と共に大地へ不時着した牙門へ、追撃の熱線(ビーム)が襲い掛かる。

「ぐううううっ。接近し過ぎたか……」

 麻痺効果で身動きが取れない牙門は、じりじりと削れて行くHPを感じて歯噛みした。

 見れば白夜も、ほとんど無秩序な熱線(ビーム)の乱射に逃げるので精一杯の様子である。


 これまでか。

 そう思われた時、不意に牙門の前に現れた何枚もの鏡が、彼を直撃しようとした熱線(ビーム)をすべて反射した。

 自らの攻撃を自ら受け、身悶えする廃龍ニドヘック

 見れば、まるで雪の欠片のように、廃龍ニドヘックの周囲を、きらめく鏡が覆って、ほとんどの攻撃を反射させていた。


「……《鏡面結界》。八朔(ほずみ)の仕事か。助けられたな」

 ほっと息を吐いた牙門は、安堵と自虐がない交ぜになった口調で呟いた。




 ◆◇◆◇




 戦場の上空。

 朝焼けを浴びて雲のように浮遊する白い(ばく)――七禍星獣の№6の《白澤(はくたく)陸奥(むつ)に平行して飛行する、単眼にコウモリのような翼の生えた同七禍星獣の筆頭・周参(すさ)の分身体が、げんなりした口調で現状を説明していた。


廃龍ニドヘック熱線(ビーム)攻撃――麻痺効果も付随しているな――を獲得。基本は以前に確認した細胞(セル)を自滅させての聖光弾(ホーリー・ライト)と同一のものだが、アレンジを加えてきおったな。よほどエネルギーが有り余っているのか、はたまた牙門と白夜(お調子者)の二人が放った物理攻撃が功を奏したか……どちらとも取れんが、藪をつついて余計な攻撃手段を獲得させてしまったわい。まあ、この調子で無駄弾を撃って、エネルギーを使い果たしてくれれば御の字なのだが……いかんな、やはり学習し始めた。段々と牙門と白夜への集中が正確になってきた」


「まったく、好戦的な武闘派はこれだから困るねぇ。まぁ自業自得とは思うけど、流石に見殺しにするわけにはいかないからねぇ。助けないとまずいだろぅ……お願いできるかなぁ、八朔(ほずみ)ちゃん?」

 陸奥が眠たげな口調で、かなりどうでもよさげに、自分の背中に乗る同僚へと語りかけた。


「……ん」

 陸奥の背中の上、吹けば飛ぶような赤い着物を着た黒髪の小さな――10歳くらいの女の子が、無表情な顔で小さく頷いた。

 その手の中には、4×4マスの小さな鏡でできたキューブが存在する。

「1枚が2枚、2枚が4枚、4枚が16枚、16枚が256枚、256枚が65,536枚、65,536枚が……」

 ぶつぶつと言葉を発しながら、手の中のキューブを組み合わせる。そのたびに少女の周囲に四角い鏡が現れ、次々と周囲の空間を埋め尽くしていった。

「鏡は魔を映し、真実を暴き、魔を退ける……《鏡面結界(ミラー・ラビリンス)》」

 ぽつりと最後に付け加える少女――七禍星獣の№8.《雲外鏡(うんがいきょう)》八朔。


「さすがだねぇ」

「うむ。見事である」

 陸奥と周参の賞賛の声にも特に感じた風もなく、八朔はさらにキューブを操作する。

「――展開っ」


 鏡が一斉に空中を移動して、あるものは牙門を守る形で、あるものは白夜をフォローする位置へ、そして残りは廃龍ニドヘックの全身へと散らばり、麻痺光線(パラライズ・ビーム)を完璧に反射した。


 凄まじい勢いでキューブを操作する八朔だが、その顔にはまだまだ余裕があり、涼しげですらあった。


「ふむ。牙門も離脱したか。まったく……言われたことをやっておれば良いものを、どうにもウチの連中は血の気が多すぎて連携には向かんな」

 慨嘆する周参。

 目標がなくなり、攻撃がすべて反射される痛みに遅まきながら気が付いたのか、廃龍ニドヘック麻痺光線(パラライズ・ビーム)が、目に見えて少なくなってきた。


 進行方向を欺く七夕の《幻力(マーヤー)結界》。全体を砂嵐で囲んで惑乱させる牙門の《暴風結界》。そして反撃を無効化させる八朔の《鏡面結界(ミラー・ラビリンス)》。

 三重の結界を現状維持することで、足止めという当初の目標は達成できたか。と、そう判断する周参。


 その目の前で、どことなく不満そうな表情で、八朔(ほずみ)が素早くキューブを操作した。

「……照魔光発射」

 その途端、すべての鏡から浄化の光が放たれ、廃龍(ニドヘック)の全身を焼き始めた。


「――っ! なにをしておる、八朔!? 攻撃しろなどという指示はだしておらんぞ!」

 周参の怒号に、八朔はぷいと顔を逸らした。

「ずるい」

「なにがだ?」

「牙門と白夜だけ、好き勝手やって、ずるい」


 だから自分も攻撃するというのか!?

 唖然とする周参を取り成すように、陸奥が眠たげな口調で言い添えた。

「まぁ、僕らなんだかんだ言って、全員、負けず嫌いの武闘派だからねぇ……」




 ◆◇◆◇




「……まったく。どいつもこいつも“足止め”という意味を履き違えているな」

 そこからさらに離れた上空を浮遊していた直径70mを越える光り輝く多面結晶体。十三魔将軍の筆頭《ヨグ=ソトース》斑鳩(いかるが)が、不満げな唸りを発した。


 まあ、最初に調子に乗ったのは牙門と白夜の奴だからな、私の監督不行き届きと言われればそれまでだが。

 取りあえずこの件が終わったら、あの二人には厳重注意を行うことにして、斑鳩はその巨大な単眼を《暴風結界》に覆われた廃龍(ニドヘック)に向けた。


 いかなる分厚い雲や土砂に覆われていても、空間自体を感知できる彼にとっては、この程度の障害などないも同然である。

 素早く全身を走査して、焦点を狙うべく急所――敵の居城たる《アルマミス》――へと向ける。

「高エネルギー反応あり。このエネルギー量は間違いなくプレーヤーだな。これ見よがしに城を乗せているので、或いは囮かと思ったがどうやらご在宅だったらしい。ふざけた相手と憤慨すべきか、肝が据わっていると賞賛すべきか、少々判断に迷うところだな」

 おそらく昔は戦ったこともある筈だが、ソロで立ち向かってきたらぽっくや、自分の攻撃をことごとく避けて攻撃を加えてきた緋雪と違って、今回の相手は生憎と彼の記憶にはなかった。

「……つまりは記憶に残らぬほど小物だったというわけだな」


 本来なら戦いに先駆けて名乗りを上げるのが彼の流儀で、今回のような不意打ち・闇討ちの類いは、好みから外れている。


 ――まあ、その程度の相手なら好みだなんだ言うほどもあるまい。


 そう折り合いをつけて、斑鳩は全身の魔力を次元断層斬ディメンジョン・スラッシュのため、集中し始めた。


「全力で《アルマミス》を破壊せよとのことであるが、次元断層斬ディメンジョン・スラッシュをこの一点に集中した場合、確実にマントル層まで貫通するな。下手をすれば中心核と地軸にも深刻なダメージを与え、地上の住人が全滅する恐れもあるが……まあ、いい。所詮は塵・芥のようなもの、我の知ったことではない」

 淡々と恐ろしい予測を立てて実行しようとする斑鳩。


「まてっ。斑鳩、姫からの指示が来た。そのまま少し待てとのことだ」

 と、機先を制して、傍を併走していた周参の分身体から、待ったが掛かった。

「どういうことだ? すでにエネルギーは臨界なので、さほど時間は置けんぞ?」


 周参が斑鳩の質問に答える前に、天涯に乗った緋雪が、大慌てで降下してきた。


「――ちょっ、ちょっと待ったーっ!!!」


「これは、姫様。このような場で陛下の玉顔を拝し奉り、この斑鳩、無上の慶び」

「いやいや、挨拶はいいから。とりあえず、マントル層破壊とかそれなし! なるべく他に被害がでないように、希望としては地味に、限りなく目立たないように、世間に知られず控えめに、ひっそりと何気なく殲滅してくれればいいから!」


 緋雪のかなり無茶な要求に、「ふむ」と全身の触手をくねらせて考え込んだ斑鳩は、なんでもない事の様にあっさりととんでもない提案を口に出した。

「それでは、一点突破ではなく広域殲滅――多連複合次元断層斬マルチプル・ディメンジョン・スラッシュにて、この廃龍(ニドヘック)とやらを消滅させてご覧にいれましょう」


「消滅……って、できるの?」

 最大火力を誇る天涯と、それに及ばないながらも破壊力だけなら真紅帝国インペリアル・クリムゾンでも3本の指に入る出雲(いずも)の2面攻撃でも、斃しきれなかった相手を、あっさりと殲滅すると言い切る斑鳩に、当然のことながら緋雪が疑問の声をあげる。


「勿論でございます。確かに私は天涯殿には破壊力で及びませんが、その分、敵の占有する空間を捉えて、無駄にエネルギーを垂れ流さず、最小限のロス――計算したところ0.3%というところでしょうか――で効果的に空間破砕を行う自信がございます。これであれば、確実に廃龍(ニドヘック)を消滅可能かと」

 慇懃ながら、ところどころ皮肉る言葉尻に、天涯がギリギリと奥歯を噛み締めた。


「成功率97%。当方の計算でも斑鳩殿の攻撃で、廃龍(ニドヘック)を消滅させられると算定しております」


 周参も太鼓判を押したことで、緋雪も腹をくくったらしい。

「わかった。全力で廃龍(ニドヘック)を消滅させて!」


「承知いたしました。――危険ですのでお下がりください」

「ふん! 私めが姫の玉体に傷ひとつつけるものか」

 斑鳩の指示に、ぶ然と答えて天涯がその場を離脱する。


「さて。行くか」

 改めて《暴風結界》越しに廃龍(ニドヘック)を確認すると、諦めたように動きを止めているのが見えた。

 的にしてください、と言わんばかりの態度に、一瞬ながら不審を抱いた斑鳩だが、すでにエネルギーは臨界すれすれまで収束している。

 なにか相手が手を打つ前に破壊すれば良いまでのこと。


 そう判断した斑鳩は、全魔力を精密に測定した廃龍(ニドヘック)の全身へと叩き付けた。

多連複合次元断層斬マルチプル・ディメンジョン・スラッシュっ!」

 虹色の光芒が、廃龍(ニドヘック)が占有していた空間ごと、ごっそりと消し飛ばした。

【七禍星獣メンバー】

№0・・・零璃(あまり):水の最上位精霊(番号外)

№1・・・壱岐(いき)魔剣犬(ソードドック)(欠番)

№2・・・双樹(そうじゅ)緑葉人(グリーンマン)(欠番)

№3・・・周参(すさ):ゲイザー

№4・・・蔵肆(くらし):翼虎

№5・・・五運(ごうん)五雲(ごうん):麒麟の麒(雄)・麟(雌)

№6・・・陸奥(むつ)白澤(はくたく)

№7・・・七夕(たなばた):アプサラス

№8・・・八朔(ほずみ)雲外鏡(うんがいきょう)

№9・・・九重(ここのえ)鬼眼大僧正(きがんだいそうじょう)

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