過去3
――13年前――
俺に糸が見えるようになったのはこの頃からだ
糸が見え始めると皆が自分をどう思っているかが分かった
先生に泣きつくと先生は
≪五月蝿いなぁ、子供って何でこんなんなんだろう≫
そう糸が言っていた
その度に自分の足や手や腕は傷つき
皆からも虐められることになった
母親も父親も自分のこの行動を気味悪く思っただろう
まもなく母は持病で死んでしまい父に育ててもらった
父は女たらしで良く愛人を何人も連れてきていた
それに加え父は放浪癖があり
良くどこかに行ってしまう
お金は置いていく、自分で買って作って食べろと
自分は必死に読めない字は辞書で調べ料理も頑張り
大変な苦労をしたが今になっては普通に出来る
小学校ではまだ友達は居たが
中学になり友達はばらばらになり虐められることになった
殴られたりモップや汚れた雑巾などで顔や服を拭かれ
パシリにされたり言うことを聞かなかったり先生にチクると殴られて蹴られて
自分の昼ご飯の弁当の中に虫なども入れられた
周りは皆知らん振り
それもそうだよな助けたら虐められるし
チクると周りの皆もチクリ魔などと虐めてくる
集団虐めに変わった
上履きの中には死んだ鼠やゴキブリなども入れられた
学校に来るなとも言われた
本当にやってる事が低脳だ
馬鹿とかノートに書いてある
女子や男子の仕業だが、
じゃぁお前らが俺に脳味噌で勝てるのか?
俺は万年テストでブッチギリの1位だ
なのに馬鹿とかお前らは低脳で俺に勝てたことがあるだろうか
成績もオール5で先生からの指示も熱い
アイツ達に俺を抜かせるのか
そう思った
そして中学3年の冬
虐めも落ち着きもうあまり激しいことはされなくなった
その途端コイツと居れば優しい子と思われるしコイツと結婚したら生活には困らないだろうと思われたのか
女子に告白されることが多くなった
その時俺は毎回同じ事を言う
「キミ俺の事を好きだとして、俺が虐められるときに助けてくれたか?寧ろ一緒に虐めてたくせに」
毎回そうやって言い女子をフる
そんな生活にも飽きてきた
高校になり彼女に出会った
宮下はちゃんと俺を見てくれている
とても嬉しくて嬉しくて
俺もアイツに惹かれているのかも知れない
俺には無いものを持っている
本当に優しくて
でも、本当は怯えている
隠している
笑わない
本心から笑わない陰のある彼女
優しくて強がりな弱虫
あの子に何時か本当の笑顔を取り戻してあげたい――――・・・・