過去1
「宮下ってさ、なんか本心から笑ってないよな」
何で悠晴くんは分かったんだろう・・・・・・
――10年前――
春、入学式前
私はもう直ぐ小学生でランドセルを背負ってお母さんに自分の姿を見てもらおうと思った
「おかーさんおかーさんっ見てー」
「・・・・・・」
だから何?と言いたげな目で見られた
私はまだ小さく返事が無いので母にしつこく似合う?と聞いていた
「五月蝿いっっ静かに出来ないのっ!?」
顔を叩かれた、凄く痛くて、頬も心も痛かった
お母さんは私の事嫌いなのかな・・・・・・
「見なさい、充はあんなに静かなのに貴女お姉ちゃんなのにいつもいつも騒がしくて、大人しく出来ないの?」
お母さんは私に怒鳴りながら弟の充を指差して私と充を比較した
私はお母さんが大好きだから頑張って大人しくなろうと思い自分の事を喋らなくなった
するとお父さんには
「なんで何も喋らないし笑わないんだ、気味が悪い」
冷たく言われた
だってお母さんに大人しくしなさいって言われたからしたのに今度はお父さんに気味悪がられた
お父さんのことも大好きなのに
数ヵ月後、父と母は離婚した
「あの人と離婚する事になったのも全て澄夏のせいよっ」
お母さんは私に八つ当たりをするようになった
誕生日もクリスマスも充の時はケーキやプレゼントもあるのに私には何もなかった
私って何のために生まれたのかな
泣きたかったけど涙を堪えた
充はいつも褒められていた
充は頭も良く明るくて大人しくて母さんと仲が良くて幸せそうな親子だった
どうして私はあの中に入れないのかな・・・・・・
私には元々入れる隙間なんてなかったのかな
16歳になった私は母にも弟にも反発する様になった
皆の前では気付かれないように猫被って居た
こんな家早く出てやる
母はこんな時でも
「充は受験も近いんだから邪魔したら駄目よ、貴女なんかよりも頭の良い高校に行くのよ」
言われなくても弟とも母なんかとも話す気になれなかった
充が悪いのに全部私が怒られる
そんなくらいならこっちから関わらないわ
そうして私は小学校の頃から心を閉じて仮面を被った