コウイチ
「・・・・・・っっ」
急に足に激痛が走った
ズボンを捲って見てみると糸で皮膚が切れて血が滴っていた
やっぱ慣れないな・・・・・
溜息を吐いてノートをとろうとしたら後ろに先生が立っていて小声で
「月神どうした、その足血まみれだし保健室へ行ってきなさい」
と言ってくれた、流石担任良く見てるな・・・・
そう思い足を引きずって教室を出た
保健室に行くと先生は居らずベッドの所のカーテンが閉まっていたので誰か休養中かと思い
椅子に座って足の手当てをしていた
するとカーテンが弱弱しく開き中には若柳が居た
咳をしていて息を乱し顔が赤く風邪で熱があるのかと思い取り合えず寝かせて看病をする事にした
(僕もつくづくお人好しだな・・・・)
そう思いながらも冷やしたタオルを頭にあてたり汗を拭ってあげたり水を飲ませたりした
「大丈夫か、若柳」
「大丈夫・・・・っ」
明らかに大丈夫では無いのに強がる
本当に素直じゃない
そして時々思いつめた表情になる
悲しそうで陰のある顔だまるで自分を責めるような
なぜコイツはこんな顔をするんだろう
こんな顔するくらいならあんな風に虐めなんてしなければ良いのに
「若柳って身体弱いの?」
「・・・・・・」
今度は無言で僅かに首を縦に振った
良く休んで居たけど身体が弱かったのか・・・・・・
コンコン
ドアを叩くノックの音がした
僕は若柳から離れてドアを開けると思いもよらなかった訪問者だった
「宮下・・・・・」
「あ、悠晴くんだ」
彼女は少し驚いているのか目を大きく開けていた
その仕草を少し愛らしいと思えた
「どうしたんだ?」
「んー、サボり」
そんな堂々と答えるなよと笑いながら俺は言う
彼女もそれに答えるように笑う
僕は少し忘れそうになった人物の名前を口にした
「若柳、悪い五月蝿かったか・・・?」
「いや・・・・・・大丈夫、・・・・・・」
「・・・!」
若柳は宮下には気付いていない様子だったが宮下は驚いていた
なんでとでも良いたげだ
そして淡い黄緑色の糸はピーンと張っている緊張している様だ
僕が割り込む事じゃないのかな・・・・・・
でも気にせずには入れない自分はおせっかいなんだなと思う
「宮下って若柳のこと嫌いなのか?」
小声で聞いてみた、若柳は眠ってるようだ
その質問に図星のような顔をした宮下が居た
「悠晴くんだって嫌いでしょ、アイツ幼稚園の頃から良く悠晴くんのこと泣かして意地悪してたじゃない」
「え・・・・・」
若柳が同じ保育園?そんなはずは無い卒園写真にアイツの顔や名前は無かった
それにその頃の記憶が全く無いんだよな・・・・・・
「まぁ、アイツは途中で親の都合で違う幼稚園に行ったけどね、私あの後たまたま小、中学校同じだったの」
「そうなんだー・・・・・・」
成る程だから写真や名前が無かったのか
でも小、中学校一緒だったからってそんなに嫌がる事なのだろうか・・・・・・
「でも一緒の学校だっただけでなんでそんなに嫌いなんだ?」
「・・・・・・だってアイツに中学の卒業式で告白されてさ、私は断ったのにしつこいから」
新しい発見だった、まぁ二人の関係も分かったし若柳がどうして俺を嫌いなのかも分かった気がする・・・
つまり、嫉妬されてたのか・・・・・
そう言えば、この子はどうして本心から笑ってないんだろう
宮下はいつもいつも糸がピーンと張り詰めている何かを隠しているかのようにそれがバレないようにと気を張っているのだろう
「宮下ってさ、なんか本心から笑ってないよな」
「・・・・・・・・・え?」
彼女は驚いたのか持っていた紙コップを落とし中に入ってたお茶が零れた
急いで僕は拭きにかかったが彼女は呆然としていた
゛なぜバレたのだろう゛と、そんな顔だった
図星か、・・・・
なんで何だろう昔何かあったのだろうか
彼女は俯いてしばらくスカートを強く握り締めていた