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殺戮機械が思い出に浸るとき 85

「さっきまで警察の本部気取りだったのに……」 


 クスクス笑うアイシャを見ながらにんまりとしてそのまま腕を組んで座席にもたれかかる要。ただ誠はその周りの景色の早く変わる様に緊張を続けていた。


「さっき警邏隊の状況は把握していると言いましたけど……白バイが流していたらどうするんです? 」 


 おそるおそる呟く誠に要は満面の笑みを浮かべる。


「ああ、白バイはこの先にはいねえよ。南陽峠で族が集会を開いているという連絡が入っているはずだからねえ……忙しいんだろ」 


「要ちゃん。警察無線に割り込んで嘘の情報を流したわね……」 


 呆れるアイシャだがカウラは満足げにアクセルを踏み込む。すでに市街地は過ぎて左右の景色は目の前の東都の西に広がる山脈の足下の観光客目当ての果樹園に変わっている。


「あの馬鹿……捕まえたらただじゃおかねえ! 」 


「心配したり怒ったり……本当に要ちゃんは忙しいわねえ」 


 のんびり構えているアイシャだが誠が見る限りその表情は硬い。


 誠も聞かされてはいるがシャムは遼南内戦でのエースとして熾烈な戦場を生き抜いたタフな心臓の持ち主である。実業団の試合の際にも常に明るく元気で強豪菱川重工豊川相手にも打ち込まれる誠に明るく声をかけてくれる気さくな性格である。


 そんなシャムがこれだけ周りに迷惑をかけることをやるほど追い詰められている。ある意味意外に思えた。


『信じているから』 


 周りが相棒の吉田の指名手配の話を振ってもその言葉と笑顔で返してきた元気なシャムの逃避行。誰もがあまりに突然で意外に思っているのは誠も感じていた。


「でも……なんでこんなことをしたんですかね……」 


「知るか! 」 


 誠の言葉が出たとたんに要は叫んでそのまま狸寝入りを始める。


「吉田少佐の件とは無関係とは思えないけど……あの娘が突然居なくなるなんて……それ以外に何かあったとしか思えないわね」 


 アイシャの言葉にカウラも静かに頷いた。


 ギアが下げられ、エンジン音が激しく変わる。道は緩やかに登りはじめた。一応国道だというのに道も左右の歩道が消えてすっかり山道という感じに変わっている。


「でも……吉田少佐とシャムちゃん……どんな関係なのかしら? 」 


 突然のアイシャの問題提起に静かに要が目を開く。


「男女関係って訳じゃ無いよな……吉田はそれなりに名の知れた傭兵だ。甘い戦友としての友情なんてもんでも無いだろうしな……」 


 要の言葉に誠も静かに頷きながら目の前に見える白く雪を湛えた山脈を臨んだ。




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