表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/152

殺戮機械が思い出に浸るとき 79

「シャムちゃん? 何かあったの? 」 


 何気ないアイシャの言葉に神妙な顔の小夏はそのまま彼女の正面の椅子まで行くと腰をかけた。


「最近連絡がないんです。それで今日、電話を入れてみたら……隊にも出てないらしくて……」 


 思わずカウラと誠は顔を見合わせた。


「ああ、あの娘は有給たくさん残ってるから」 


「違うんです!それだけじゃなくてグリンも一緒にいなくなって」 


 小夏の言葉に場が瞬時に凍り付いた。グリン。フルネームはグレゴリウス16世という名前のコンロンオオヒグマの子供である。子供と言っても成長すれば10メートルにもなるコンロンオオヒグマである。優に五メートルはあるあの巨大な熊が行方不明となると問題は質が変わってくる。


「警察には……ってうちに連絡がないってことはランちゃんは手を出さないつもりね……」 


「でもあの巨大な熊が行方不明なんだぞ。クバルカ中佐……何を考えているのか……」 


 こう言う問題では最初からなにもしない隊長の嵯峨を無視して副部隊長格のクバルカ・ラン中佐にアイシャとカウラの心は向かう。


「でもあれだけの巨大な熊ですよ……歩いていたら見つかるでしょ……」 


 苦笑いを浮かべながら呟く誠の顔をアイシャはまじまじと見た後大きなため息をついた。


「誠ちゃん……自分の胸に手を当てて考えてごらんなさいな。あなたもあの娘も法術師。干渉空間を展開して自由に移動できる訳よ……」 


「あ! 」 


 誠も言われてみて初めて思い出した。その視線の先では呆れた顔でカウラが誠を見つめている。その視線に誠はただ申し訳なくて俯いてしまった。


「でもどこに……遼南まで跳ばれてたらまずいわね」


「遼南ですか! 」 


 アイシャの一言に小夏が叫びを上げる。シャムの出身地遼南。この東都からは数千キロ西の山奥がシャムの育った森のある山岳地域である。コンロンオオヒグマを初めとする猛獣が暮らす広大な大自然を一匹の熊と小さな女の子を捜して走り回るなどとうてい無理な話だった。


「それは無いな」


 確信のある語調でカウラが断言する。そのあまりにはっきりとした口調にアイシャは感心しながらその切れ長の視線を投げた。


「この前入国手続きの件でナンバルゲニアには話をしたんだ。空間転移で跳んで他国に入国することは不法入国になると教えてやったらちゃんと頷いていた」 


「なに? それだけの理由? 」 


 呆れるアイシャだがシャムの単純な思考を考えると誠もカウラに同調しなければならなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ