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殺戮機械が思い出に浸るとき 76

「首長会に……かけて見る必要がありそうだな」 


 まさに苦渋の一言だった。『妥協よりも名誉ある死を!』と叫ぶ保守派学生の気持ちが今こそラディフに会う言葉はなかった。


 事態を悪化させた彼への突き上げが反主流派の首長から出るのは間違いなかった。この場にいる彼の親類縁者もまたその派閥に押されてラディフ非難を始めることだろう。


「ところで……遼北の説得はどうなのかね」


 気分を換えようとラディフは目の前で笑みを浮かべる大統領に声をかけてみた。


「あちらは素直に非武装の線で呑んだそうですよ……市民の自暴自棄な暴言がネットの切断で止まっている今なら大胆な妥協が出来る……そう踏んだんだと思いますが」 


 シュトルベルグの言葉をラディフはとても鵜呑みには出来なかった。あちらに向かった使者はラスコーの義理の兄である西園寺義基だ。こいつも喰えない奴なのは十分知っていた。


「一党独裁体制はうらやましいものだな……我々は簡単には妥協できない」 


「絶対王政の方が自由がきくように見えますがいかがでしょうか?」 


 ああ言えばこう言う。またもラディフは出鼻をくじかれた。どうにも腹の中が煮えくりかえる感情が顔に出ているのが分かってくると気分が悪くなる。隣のアイディードは腹違いでどうにも気に入らない弟だがそれでもこれほどまでにラディフを腹立たせたことなど無い。


「ワシの王政はそれほど絶対的なものでは無いと思うのじゃが……のう」 


 左右を見て同意を求めてみる。あからさまに浮ついた笑みが並ぶ。


『どいつも……馬鹿にしやがって』 


 叫びたい衝動に駆られるのを必死で耐えるラディフ。


「破滅は避けられそうなんですから……そんなに顔をこわばらせる必要は無いんじゃないですか? 」 


 シュトルベルグのとどめの一言だった。ラディフは怒りに駆られて立ち上がっていた。


 不敵に激情に駆られた王をあざ笑うシュトルベルグ。驚いたようにあんぐりと口を開け、ターバンに手を当てる宗教指導者。


「少しばかり外の空気を吸ってきたいと思うのじゃが……」


「どうぞ。ただ急いでいただきたいものですな……状況は一刻を争う」 


 皮肉を言い始めたらおそらくとどまることを知らないだろうシュトルベルグの口から放たれた言葉に思わずラディフは怒りの表情をあらわにしながらそのままテーブルに背を向けて会議場を後にするしかなかった。




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