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殺戮機械が思い出に浸るとき 7

「菰田君」 


 最初に話しかけてきたのがアイシャだったことで菰田の機嫌はさらに損なわれた。アイシャの詮索癖と騒動好きは周りを巻き込むだけ巻き込んでおいて自分は逃げ去るという要領の良さ。巻き込まれる可能性があると悟っただけで菰田も十分不機嫌になる。


 手にしたカップ麺を静かに机に置き。大きく深呼吸をして何ともしれない騒動を巻き起こそうとしている紺色の髪の闖入者を忌々しげに見つめる。


「なんでしょうか……クバルカ少佐。今日は鈴木中佐が出て来ているんですから引き継ぎの方を……」 


「いいのよ、そんなこと。それより……聞きたいことがあるんだけど」 


 不機嫌を突き抜けた表情。ともかく菰田の顔を見て誠はそんな感じだと確信した。ここにカウラがいなければ菰田はその場から立ち去っていただろう。偏屈な上司がこれから災難に遭うと言うことで女子職員は興味深そうに誠達を眺めている。


「実は吉田少佐の件なんだ」 


 その質問の核心がカウラの口から放たれたものでなければ答えなど期待できない。カウラも菰田とは話をするのも嫌なのだが仕方なく口を開いた。


 菰田の表情が急に和らぐ。そしてそれに比例してカウラの口元の引きつりが大きくなる。


「ああ、ベルガー大尉。吉田少佐が休んでいる件ですか? 」 


「知ってるのか? テメエ! 」 


 今度は菰田の襟首を要が締め上げる。すぐにカウラと誠で間に入ったから良かったものの、放っておいたら島田と同じく窒息するところだった。しかも菰田は島田と違って首を絞めたら死ぬのだからまさに危ないところだった。


 咳き込み、しばらく下を向いてもだえる菰田。


「大丈夫? 」 


 背中をさするアイシャを恨みがましい目で見つめる菰田。彼の予想はすでにこの時点で的中していた。カウラが少し心配そうな顔をしているのを見つけて何とか機嫌を直した菰田は自分の気を落ち着かせながら椅子に座り直した。


「知ってるも何も……休んでいるじゃないですか」 


「そりゃあ見れば分かる! そう言うことじゃなくてだ。あいつがなんで休んでいるのか知らないかって聞いてるんだよ! 」 


 さすがの要も同じ間違いは起こさない。机をたたき壊さないように寸止めして軽く叩くようにして腕を振り下ろす。備品の発注伝票を処理しないで済むことを確認した菰田はしばらく思いを巡らすように首をひねる。


「なんで? そりゃあ用があるからじゃないですか? 」 


「知らないんだな! じゃあアイツが休んで済む理由は知って……」 


 要に任せたららちがあかない。そう悟ったアイシャが要を突き飛ばす。いつもなら反撃で突き飛ばし返す要も自分の話の持って行き方が間違っていたことに気づいたようで頭を掻きながら菰田にしなだれかかるアイシャを眺めていた。


「吉田さんの雇用関係の契約書……ここで保管しているじゃなくて? 」 


 突然の甘えるようなアイシャの言葉。だがアイシャの本質をよく知っている菰田はただ助けを求めるように視線を誠に飛ばすだけだった。



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