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殺戮機械が思い出に浸るとき 39

「ずいぶんと遠慮がちなのね……」 


 皮肉の入ったアイシャの言葉にネネはただ無言でジュースをすすることで答える。


「なあに、あの吉田俊平の関連の情報を集めるんだ。いくら金があってもねえ……」 


 ちらちらとオンドラは要の顔を見た。その表情は明らかに経費は別立てにしろと要求しているそれだった。


「オンドラ。それ以上は取らない方がいいわよ。定期的なお仕事をくれるお得意先は大事にしないと」 


 またもはっきりとしたネネの言葉にオンドラは気分を換えようと手を挙げた。表情一つ換えずにウエイターが歩み寄ってくる。


「済まないがジンを! 」 


「その金はお前が出せよ」 


 去っていくウエイターを見送りながらつぶやく要にまた卑下したような笑みを浮かべるオンドラ。だがその目がネネの鉛色の瞳を捕えるとすぐに俯きがちに懐から財布を取り出して札をテーブルに置いた。


「吉田俊平の居所だけならこの金額は大きすぎるんじゃないかな。当然その素性も……」 


 カウラの言葉にネネは気に入ったというように初めて見る笑顔をカウラに向けた。


「吉田俊平の名前は何度も聞いているから興味があったの。だから今回の仕事も楽しみにしているわ」 


 それだけ言うとネネはそのまま立ち上がった。ジンの入ったグラスを手にしたウエイターが驚いた表情でネネが目の前を通るのを見守っている。驚いたのはオンドラも一緒でウエイターの手の上の盆から素早くジンの入ったグラスを奪い取るとすぐさま喉の奥にアルコールを流し込んだ。


「じゃあ、結果は後で! 」 


 手を振りながら去っていくオンドラ。ただ誠達は呆然と彼等を見守った。


「ずいぶんな出費ね。期限も切らずにおくなんて……お人好しも良いところじゃないの? 」 


 アイシャの言葉だが、要は満足げに手にした水割りを啜っていた。


「相手は預言者ネネだ。こちらが情報を本当に必要になる時までにはレポートができあがっているもんだよ。さもなきゃあんな餓鬼が裏社会で生き延びられるはずはねえ」 


 そう言い捨てると要は立ち上がった。


「他のあては無いのか? 」 


 意外そうな表情のカウラににやけた表情を向けたまま要は札束の詰まったボストンバッグを背負って店内を見回す。


「なあに、クエンの旦那と預言者ネネ。それ以上のニュースソースはアタシにも覚えが無くてね。行くぞ」 


 そのまま勝手に歩き出す要。アイシャと誠は慌ててその後ろに付き従う。カウラは大きくため息をつくと静かにジャケットのポケットから車のキーを取り出してくるくる回しながら彼等についていくことに決めた。



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