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殺戮機械が思い出に浸るとき 36

「渋いわね……要ちゃんにはもったいないわ」 


「おう、ならオメエにやるよ」 


「相手にされないわよ。それにしてもあの人……遼南マフィアと言う触れ込みみたいだけど、軍人ね」 


 アイシャの鋭い指摘に要はウエイターから水割りを受け取ると静かにグラスを傾ける。


「共和国軍の残党って話だ。なんでも海兵隊崩れだとか言ってたな」


 何となく納得したように頷くアイシャ。


「正規部隊じゃないな。海兵隊だと武装偵察隊かなにかの出身じゃないのか? 」 


 カウラの言葉に誠も頷く。弱兵と言われた遼南共和国軍だが一部には精強な部隊も存在した。ランの所属した陸軍国府防衛隊や南都軍閥の息の掛かる海兵隊南部戦闘集団。そして人民軍勢力下深くに最低限の武装と装備で侵入し、情報収集活動や破壊工作、煽動欺瞞任務を遂行する海兵隊武装偵察隊、通称『遼南レコン』はその活動の国際法規すら無視する性格上、人民軍の憎むべき敵として所属の経歴があったと言うだけで処刑の対象になるほどの存在として知られた。


「まあ裏の世界じゃかつての仕事や今の所属は知らぬが花ってわけで誰も詮索したりしないものさ。それでも確かにレコン出身ならあの旦那の武勇伝がフィクションの世界からリアルの世界に感じられる話だな。それにあの人には子飼いの独自勢力もいるとかいないとか……」 


「おう、久しぶり! 」 


 淡々と話をしていた要の頭の上に長い黒髪が垂れ下がる。驚いて要はそのまま上を見上げた。


 要を見下ろしているのは切れ長の細い目をした長身の女性。そしてその隣には小柄なローブをまとった少女が立っていた。


「オンドラ!テメエの髪がグラスに入ったじゃねえか! 」 


「なんだよ……久しぶりに会ったと思えばいきなりいちゃモン付けか? つれないねえ……人望の無い早苗の為にわざわざ手を貸してやろうとやってきてみれば……ああ、本名は西園寺要お嬢様か? 」 


 明らかに挑戦的な表情を浮かべてオンドラと呼ばれた女性は遠慮することもなくクエンの座っていた座席に陣取る。


「ネネも座りな! 公爵令嬢の奢りだから好きなの飲もうじゃねえか! 」 


「テメエを呼んだ覚えはねえぞ……」


 ネネと呼ばれた少女が黙ってオンドラが叩くソファーに腰掛けるのを見ながら要は怒りに震えながらオンドラを睨み付ける。


「私が呼んだの……私一人じゃ安全を確保できないから。迷惑だった? 」 


 か細い声で俯きながらつぶやくネネと言う少女の言葉に要は怒りの表情を引っ込めて素直に首を振った。


「良かった……私はトマトジュース」 


 ネネは静かにそれだけ言うとそのまま俯いて黙ってしまった。誠もアイシャもカウラも、この二人のコンビがどうして要の情報網に引っかかったのか疑問に思いながらウエイターが近づいてくるまでの時間を過ごしていた。




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