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殺戮機械が思い出に浸るとき 3

 廊下をただ一直線に要は進む。人気がないのが幸いだと誠は思った。もしいればまた勢い込んだ要が尋問して回るかもしれない。隣を見れば呆れた顔のカウラが上官だからつきあうのだという顔をして歩いている。


「おい! 叔父貴! いるんだろ! 」 


 ノックと言うより破壊しない程度にドアをぶん殴る要。驚いて止めに入ろうとする誠だがすでに要は勝手にドアを開けて隊長室に入っていた。


「おい! 」 


「なんだよ……聞こえてるよ。でかい声出せばいいってもんじゃねえだろ? 」


 いつものように手入れの行き届かない嵯峨の七三分けの髪が書類の山の向こうから顔を出した。疲れているのか、眠いのか。半開きの目が迷惑そうに詰問を始めようとする要を眺めていた。


「じゃあそのでかい声をださせた原因は……」 


「吉田の話か? 」 


 誠もいつものこういうときの嵯峨の察しの良さには感心させられた。要も図星を付かれて黙り込んでいる。それを確認すると嵯峨は制服の胸のポケットからしわくちゃのタバコの箱を取り出して一本取り出す。


「こう言う季節だ……旅にでも出たくなったんじゃないの? 」 


「旅だ? 許可は取ったのかよ」 


「そりゃあふと梅の頼りに誘われての一人旅に許可なんて野暮なものを求めるのは……」 


 タバコに火を付ける為に黙り込む嵯峨。だが誠が聞いても嵯峨の言っていることは十分無茶苦茶だった。


「あいつは何か? 芸術家か何かなのか? え? おい兵隊だろ?兵隊」

 

 要の頬に怒りの引きつりが走る。また面倒なことになった。誠はそう思いながらゆっくりとタバコを吹かす嵯峨に目をやった。


「あいつがいないとお前等は何か困ることがあるのかねえ……さっきからの口ぶりだと仕事が進まなくなるような被害があるみたいな感じだけど」 


「直接の被害はねえけどよう! 突然の出動とかがあったらどうするんだよ! 」 


 要が右手を振り上げて殴りかかろうとするような仕草を見せる。ただそれを見慣れている嵯峨にはまるで効果がないのは確かだった。


「アイツが出るほどの事態が起きりゃあアイツの方からのこのこ出てくるよ。それにだ……」 


 そこまで言うと嵯峨はタバコを咥えたまま隊長の椅子から立ち上がりそのまま外に向かって顔を向けた。


「コンビを組んでるシャムが困ってないから今日まで気づかなかったんだろ? シャムがアンに施している特訓の為のシミュレーションメニュー。ちゃんとシャムの提案通りに提出されてるからアイツも文句を言うこともない。部隊の管理部のメインフレームの交換作業も渉の奴の報告じゃあ遅れが無いどころか予定より早く切り上がりそうだって……仕事はしてるんだからどこにいようが俺の知ったことじゃねえよ」 


 嵯峨は静かに開いた窓の隙間からタバコの煙を吐き出す。すきま風が微かに冷たく誠達の頬をなでた。




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