殺戮機械が思い出に浸るとき 27
「なあに……仕込みに時間がかかってな」
それだけ言うと要はそのまま厨房の前のカウンターに向かって歩き出した。そのままポットとインスタントコーヒーを手にするとそのまま誠達の座るテーブルに置く。
「何……気味が悪いわね。そんなに気が利くなんて。コーヒー入れてくれるの? 」
「入れるのはテメエだよ。アタシの仕込みの話。聞きたくねえのか? 」
いかにもやり遂げたような表情の要に首をひねりながらアイシャはそのまま立ち上がるとカップを取りに立ち上がる。カウラはただ呆然とその有様を見ながら不思議そうな表情でどっかと腰を下ろす要を見つめていた。
「何を仕組んだ」
カウラの質問に素直に答える要ではない。にやにや笑いながら食堂に備え付けられた戸棚をあさっているアイシャの後ろ姿を満足そうに見ている要。しばらくすると不機嫌そうな表情でお盆に人数分のカップと砂糖とミルクを持ってアイシャが帰ってくる。その有様。十分話を切り出すまでの時間を貯めたと満足するように頷くとそのまま顔を突き出して口を開く。
「オメエ等には何も期待出来ねえからな。カウラは製造から八年。同じロットの連中は公務員ばかり。アイシャはまあ稼働時間が長いがつきあいの幅は……まあ誠とどっこいだ」
「ほっておいてよ」
あっさり切り捨てられたアイシャがめんどくさそうにカップにコーヒーを分けながらつぶやく。要はそれが満足できる反応だったというように嫌らしい笑みを浮かべながら話を続ける。
「その点、アタシは裏社会でのコネがある。確かに叔父貴はいろんなコネがあるが、すべての世界を知ってるわけじゃねえ。もしそうならこれまでのアタシ等の苦労は半分くらい無駄だったことになるからな。そう考えるとアタシの昔のコネを使うっていうのが一番だと思うんだ」
「信用できるのか? 」
アイシャからコーヒーの入ったカップを受け取りながら渋い表情を浮かべるカウラ。要はまだ平然として見つめてくるカウラをにらみ返す。
「相手は電子戦、情報戦のプロだ。ネットでその動向を捜すのはまず無理。こちらが捜していると分かればひねくれ者の旦那のことだ。いくらでも妨害工作をしてくる。その点実際に足を使える人間を揃えておけば相手は物体だ。さすがの旦那も蒸発するってことが出来る訳じゃないだろ? 」
「そう言えば昔液化出来るサイボーグの出てくるアニメがあったような……」
茶々を入れるアイシャを要は怒りの表情で睨み付ける。
「そんなことは無理だから大丈夫ですよ。でも……今は正規任務の部隊員ですよね、西園寺さんは。そう言う裏の世界の人ってそう言う立場とかで人を見るんじゃ無いですか? 」
誠の質問に機嫌を直した要が懐からカードの束を取り出した。
「地獄の沙汰もなんとやらだ。どうにか話を付けてみせるよ」
「さすが財閥。凄いわね」
珍しく嫌みのない調子でアイシャが見たこともない特典付きと思われるカードを手にとって感心したように眺めていた。