殺戮機械が思い出に浸るとき 23
「吉田少佐捜しを続ける? 」
カウラは嵯峨の言葉の意味が分からずに首をひねった。要とアイシャは大きく頷いた。
「テメー等は二週間の停職だ。分かるな? 」
厳しい表情のランの口から放たれた言葉に誠はただ呆然としていた。停職はさすがに初めてである。当然のことながら謹慎の時もそうだがその間の給料は天引きされる。誠は思い出せば配属以来まともな給料が支給されたことが無い事に気づいた。
「停職? 」
「そう、これで心置きなく探せるだろ? それに来月頭に第二惑星旧資源探査コロニー跡地で演習やるから。それまでゆっくり骨休めするのも選択の余地ではあるんだけど……」
「探します! 」
嵯峨の言葉に食ってかかるアイシャ。要も天井を向いて何か策でも考えているように見えた。
「停職……圧力ですか? 」
冷静なのはカウラ一人だった。嵯峨はその言葉にしばらくランの顔を見た後、腕を頭の後ろに回しながらつぶやきを始める。
「まあね……東都警察は本当にうちを目の敵にし始めててさ。何かって言うとやれ証拠がどうだだの、捜査方法の遵法性に問題があるだの……この前の水島とか言う法術師。結構いい弁護士がついてね……どこから金が出てるのか知らないけど」
「金の出所は米軍だろ?どこを経由しているかは知らねえけど」
要の言葉に嵯峨はとりあえずと言うように頭を掻く。
「うちは全部報告書にまとめて送ってるから義務は果たしているわけだが……そもそもうちが捜査に噛んだことを弁護士が相当突き上げてるみたいでね。検察からそのことで散々絞られたらしくて……まあ俺達のせいじゃないがこれからは協力は出来かねると言われたよ」
「けつの穴の小さい連中だな」
「一緒にいて分からなかったの? 要ちゃん」
冷やかすアイシャに要が鋭い視線を向ける。嵯峨はとりあえず言うことは言い終わったとそのまま手を机の上の組みかけの拳銃に手を伸ばした。
「じゃあ荷物まとめて寮に帰って良いから。あと吉田の足取りがつかめたら報告してね」
「やなこった! 」
気楽につぶやく叔父に頭に来たと言うように吐き捨てると敬礼もせずにそのまま部屋を出ようとする要。カウラの敬礼を見て我に返った誠とアイシャはとりあえずの敬礼をして部屋を後にする。
「どうするの? 」
挑発的なアイシャの言葉に要の顔はすでに笑みに支配されていた。
「叔父貴がまだ掴んでない情報だ。鼻を明かしてやろうじゃねえか! 」
誠はこれからさらに面倒な事になりそうだと言うことで頭を抱えて詰め所への道を歩き出した。