殺戮機械が思い出に浸るとき 21
ともかく凄いコレクション。誠は呆れつつ眺める。
そんな時要の表情が曇った。
「外に誰か来たな」
カウラとアイシャの顔にも緊張が走る。一応は不法侵入である。これがばれればろくな事にはならない。
「どうするのよ……」
そう言うとアイシャはそのまま隠れようと奥に移動しようとする。
「やべえ……警察だわ」
要の声が絶望に包まれた。完全に吉田の仕組んだ罠にはめられた。誠はその事実にようやく気がついた。
「説明すれば分かってもらえるんじゃないか? 吉田少佐が行方不明なのは確かなんだから」
「カウラ……だからと言って不法侵入していい理由にはならねえだろ? 」
珍しく要の言うことが正論だったのでそのまま誠は頷くしかなかった。
『警察だ! 侵入している人物に告げる! 直ちに出て来たまえ! 』
インターフォンの向こうからの強い語気に奥に隠れていたアイシャも観念して誠達のところに出て来た。
「これは自首するしか無いわね……」
「まあ吉田少佐は行方不明だ。それに私達は一応彼の同僚。起訴もされないが……」
「小言の一つや二つですめばいいがな」
怒られ慣れしてる要は平然として苦笑いを浮かべるだけ。誠はと言えばすっかり萎縮してただ動悸が止まらないのに焦るばかり。
「行くぞ」
普段通りの要はそのまま諦めたと言うように出口へと向かう。カウラもアイシャも項垂れたまま彼女に続いた。
「神前!置いていくぞ!」
要に見放されれば誠には立場がない。慌てて彼女の後を付ける。そのままがらんどうの玄関ロビーに出た三人は玄関先で厳しい視線を送る三人の警官の前にたどり着いた。
「君達は何者かね? 防犯装置が作動しているのだから……物取りか何かか?」
あまりにあっさりと出て来た要達に拍子抜けしたような調子で巡査部長の階級章を付けた警邏隊員と思われる初老の警察官が尋ねてくる。
「いや……物盗りというわけでは……ちょっと話すと長くなりそうですから署につきあいますよ」
慣れた調子の要の言葉に逆に当惑する警察官。それが要に出来る唯一の強がりだと分かって誠も同じような苦笑いを浮かべるしか無かった。