殺戮機械が思い出に浸るとき 149
「この眼……どっかで見たみたいな……」
『どこかもなにもしょっちゅう見ているだろ?あの目を少し垂らしてみろ』
吉田の言葉でシャムはイメージしてみた。
「要ちゃん?要ちゃんの親戚?」
『かっ……かっ要?西園寺の姫のことか?』
口元が緩んでいるパイロットの言葉にシャムはなんとも言えずに苦笑いを浮かべた。
『おい!金吾!』
ネオナチが去った宙域に進出してきた西園寺のダークグレーのアサルト・モジュールが真っ赤な金吾と呼ばれたパイロットの機体の前に立ちはだかった。
『相馬金吾曹長。父は西園寺孝基』
『なっなんだ知っているのか?』
「西園寺孝基って西園寺三兄弟の長男でしょ?次男が要ちゃんのお父さんの西園寺義基、三男が西園寺新三郎こと嵯峨惟基隊長。でもなんで苗字が相馬なの?」
『オメエはくだらねえこと知ってるんだな。孝基の伯父貴は結婚しなかったからな。そのまま相馬の家の私生児として育ったから相馬姓なんだ」
「ふーん」
要の言葉に納得しながらもシャムは要の背後からゆっくりと進んできた美少女のデザインされた白銀の機体に目をやった。
「誠ちゃんお疲れ様!」
『やっぱりナンバルゲニア中尉も笑います?』
完全に脱糞がトラウマになっているらしい誠の言葉にシャムは大きく首を振った。
「だって誠ちゃんが数億の人の命を救ったんだよ。偉いよ!」
シャムの言葉に誠はモニターの中で大きなため息をついた。
『じゃあねぐらに帰るぞ』
要の言葉にシャムはうなづくとそのまま機体を『高雄』向けた。
『あっあのー。ぼっ……僕も要の顔が見たいんだな』
『ああ、勝手にしろ』
『西園寺。そんなことをオメーが決めることなのか?うちは東和の最新式を運用しているんだぞ。胡州の人間をおいそれと入れるわけにはいかねーな』
突然ランが通信を入れてくる。
『アタシも胡州の人間だぞ……今更』
『別に許可は出さねーとは言ってねーだろ?貴官の活躍に感謝する。大したもてなしはできねーがゆっくりしてくれ』
ランの言葉を聞いているのかぼんやりと焦点の合わない瞳をぱちくりさせて金吾はうなづいた。
「要ちゃん……今秘匿回線使って通信するから」
シャムの言葉に要ははっきりと目を輝かせた。
『なんだ?悪巧みか?』
「違うよ、金吾君てかなり残念?」
シャムの言葉にがっくりと肩を落とす。そして大きくうなづいた。
『徹底的に残念だな。まあゲーム好きのオメエにもわかるように言うと武力90知力1ってところだな。能力値的には』
要の言葉にただシャムは苦笑いだけを浮かべていた。