殺戮機械が思い出に浸るとき 147
シャムは黙って下を向いた。何も考えられず下を向いた。直撃弾がコックピットを襲う。
『シャム!寝てる場合じゃねえぞ!』
吉田の言葉が耳をおそう。ただシャムは思い出していた。
「こんなこと……前にもあった気がする」
そう呟くとシャムは思い出そうとしていた。
『前って……』
吉田がきっかけだった。シャムはかつてを思い出した。
シャムは戦闘用に作られた古代文明の作品だった。戦線を離脱して逃げようとする力を持たぬ人々を守るためにシャムは同じように戦っていた。
ときの中央政府は逃げ隠れようとする人々を平然と殺戮し続けた。シャムは今と同じように機動兵器で敵に攻撃を仕掛けた。
「反撃できない相手だからか!」
シャムの攻撃に敵は次々と多大な損害によりついには撃退した。
人々は彼女を称えることなく静かに封印する道をたどった。
『どうした』
かつてを思い出したシャムに吉田がつぶやく。無意識の間にも敵からの攻撃を自動的に避けていた自分に苦笑いを浮かべる。
「わかったよ……アタシも俊平と一緒なんだ4」
『何が一緒だよ……』
吉田の問いに答えることなくシャムは迷いをなくしてそのまま敵アサルト・モジュールに攻撃を仕掛けた。サーバルの一撃、レールガンの機動部品への攻撃により瞬時にアサルト・モジュールは沈黙する。
『お前……』
「俊平も知ってたんじゃないの?アタシが古代の生体兵器だってあってこと」
シャムの問いに生身を持っていたら吉田はニンマリと笑っていたことだろう。
『ようやくわかったみたいだな。いいじゃないか。それでも今貴様は生きているんだから』
吉田の言葉に迷いをなくしたシャムはそのまま一気に動力炉へと道をとった。
中心部の近く。もはや敵もいない。
「こんなにあっさり行くとは思わなかったね」
『相手もビビってるんじゃないか』
目の前に砲台のエネルギー炉が見えた。
『君等と僕が……』
「問答無用!」
話かえけてくる砲台の石にシャムは叫んでレールガンを全弾動力炉にうちこんだ。
『うわー!』
シャムの攻撃に動力炉はそれだけ叫ぶと息絶えたように沈黙した。周りの動力系もそれをきっかけにして店点灯をやめた。
『終わったか……』
「終わったんじゃない……始まりなんだ」
シャムはそう言うと静かにうなづいた。
『始まり?」
よしだが少しばかり不機嫌に呟いた。
「始まりなんだ。すべてがね」
『始まりねえ』
吉田は静かにつぶやく。シャムが現れた通路に第四昌泰小隊の面々が顔を出した。
『無事か?』
『美味しいところぐらいとっておけよ』
岡部とフェデロの言葉にシャムは苦々しげな笑みを浮かべた。