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殺戮機械が思い出に浸るとき 143

『ちょっと待て!』 


 フェデロの叫びがネットワーク上に広がる。


『なんだって……質量が』 


『デコイか』 


 要とカウラの声に誠はようやく事態を把握した。


『敵は機動兵器三機、あとはデコイだ』 


 ロナルドはそう言うと苦々しげな笑みを浮かべて次々と標的を撃ち抜いてみせた。発射された散弾で残り21機の分のデコイが爆散した。


『シャムは?』 


 ランの言葉に誠は一気にシャムの移動していた空間を拡大してみせた。火線が次々と走り、そこで激戦が行われていることを知らしめていた。


『シャム!』 


『大丈夫……ランちゃん。もう二機落とした』 


 通信をするのもやっとと言うようなシャムの状況にランは静かに目を閉じた。


『私達がフォローに……』


『今からじゃ間に合わねえ……やはり吉田のコピーだよ。一本取られた』 


 負け惜しみのシャム。デコイを牽引していた三機の機動兵器を撃破したロナルドの第四小隊がシャムのフォローへと向かうがすでに砲台はエネルギー充填を開始していた。


『いきなりトラブルか。さらに何か起きるんじゃねえのか?』 


『西園寺、不吉なことを言うもんじゃない』 


 要の言葉にカウラが唇を噛む。状況は明らかに暗転しつつあった。


『要ちゃんの予想は合ってるみたいよ、エネルギー充填速度が予想より30パーセント早いわ』 


 艦長代理のアイシャの言葉に誠はレーダのエネルギーチャージ画面を覗いてみた。確かに充填速度は予想を上回るペースだった。


『速射が可能なのかあるいは……』 


『カウラちゃんもなかなか鋭いわね。計算では予想より威力が50パーセントでかいわよ』 


「え?」 


 誠はアイシャの言葉に呆然として振り返った。青ざめた表情のランがじっと誠を見つめているのが分かった。


『シャム!間に合わねえのか!』 


『ごめん!無理だよ!』 


 六機目の機動兵器の胴体にサーベルを突き立てながらシャムが叫んだ。21対1でなんとか互角に戦っていること自体、シャムの腕前ならではというところなのにそれ以上を求めるのは誠にも難しい話だった。


「死ぬんですかね、俺」 


 誠は干渉空間を展開しながら呟いた。要もカウラも黙っていた。


「西園寺さん、カウラさん。死ぬのは俺一人でいいですから離れてください」


『馬鹿言うな!部下を見捨てられるかよ』


『そういうわけだ。射線上にいれば多少の砲撃威力の低減くらいの役には立つ』 


「二人共!」 


 誠は自然とヘルメットの下から涙が流れていくのを感じていた。目の前の空間がピンク色に染まり、曖昧だった干渉空間が数キロにわたり明らかに分厚い質量を持って目の前に展開される。要とカウラは誠の機体に寄り添うようにしてその光の中で敵の砲撃を待つ様子を見せていた。


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