殺戮機械が思い出に浸るとき 141
『目標はL24宙域へ侵入!繰り返す!目標はL24宙域へ侵入!』
パーラの言葉にパイロット達はそれまでの軽口をやめた。ランからの連絡事項とネネからの報告では主砲のエネルギーチャージまでの時間は30分だった。
『おい、カタパルトはまだ準備ができないのか?』
『馬鹿か貴様は。この段階で展開してもこちらの戦力が拡散されるだけだ』
『誰が馬鹿だ!誰が!』
要とカウラのやり取りをパイロット達は漫然と聞き流している。
『作戦注意機まであと5分です!我慢してください!』
整備完成室から島田が声をかけてきた。それを聴いたことを合図とするように迎撃部隊の第一波であるロナルドが機体の固定具をパージした。
『お姉様は私がまも……』
『いいから黙っていろ!』
迎撃部隊に振り分けられている第三小隊長の楓の言葉に明らかにめんどくさそうに要は答えた。
『目標はL24宙域で停止。エネルギー反応が見られます!』
『いよいよ始まりってことか?』
パーラの言葉をアイズにするようにロナルド、岡部、フェデロが出撃していくのを見ながら要が軽い調子で口走る。誠のモニターからも明らかにカウラは苛立っているように見えた。
『デブリが濃いな』
ロナルドの声に誠はここが東和宇宙軍の演習で使った宙域だということを思い出した。
「ここって結構サーチが難しいんですよね。デブリが濃くて」
『なんだよ、来たことあるのかよ』
「ええ、宇宙軍の戦闘訓練で何度か……」
『だったら早く言えよ!』
要が吐き捨てるように言う。誠はただヘルメットの上から頭を軽く叩いてカタパルトの発射準備態勢に入るシャムのクロームナイトを眺めていた。
『ナンバルゲニア・シャムラード、アルファー・ツー出撃!』
それだけ叫ぶとシャムの銀色の機体は射出されていった。
『オメー等も覚悟決めろよ。一番肝心なのはオメー等なんだからな』
ランはそう言うと専用機のホーンオブブザルージュパーソナルカラーの赤をあしらった05式をカタパルトに固定した。
『アルファー・ワン!出る!』
そのままランの機体が射出されるのを確認すると静かに誠は機体をカタパルトへと勧めた。
「僕が一番ですよね」
『言うまでもないことを言うんじゃねえ』
誠の間抜けな質問に呆れ果てたというように要が呟いた。そのまま苦笑いを浮かべながら誠はそのまま乗機の05式を、ランの機体の射出のために前進していたカタパルトが戻ってくるのに合わせて前進させ、脚部を固定した。
「じゃあ行きます」
『おう!行ってこい!』
ハンガーのコントロールルームから島田のどら声が響いた。次の瞬間、期待は足を中心に一気に艦外へ射出された。白ぽい艦内の景色から星空へと世界が一気に切り替わった。