殺戮機械が思い出に浸るとき 140
「各部チェック」
誠はいつものアサルト・モジュール起動作業を始めた。
『例の砲台。どう動くかね』
同じように作業を続けている要から通信が入る。
『現在L23宙域から動かないそうだ』
カウラの言葉に要の苛立ちを感じながら誠は作業を続けた。
『なあに、24機の無人機落とすだけだ、簡単じゃないの』
『フェデロ、軽口は止めろ』
第四小隊のフェデロ・マルケス中尉の言葉に隊長のロナルドが苦笑いを浮かべる。
『お姉様は私が守ります』
『私も』
『オメエ等は静かにしてろ』
楓と小隊員渡辺かなめ大尉の言葉に要が心底嫌そうな言葉を紡ぐ。
『じゃあ僕も』
第三小隊のシャム言うところの『期待の新人』アン・ナン・パク曹長の言葉に誠は背筋に寒いものが走るのを感じていた。
『オメー等今回は相当苦戦するだろうからな。シャム、オイシャム!』
部隊長であるクバルカ・ランの言葉に呆然としていたシャムが一気に意識を取り戻したというように目を見開く。
『大丈夫なのかよ』
カウラの言葉に一瞬目を見開くが再び腑抜けのような表情に戻るシャムに、誠は不安のようなものを感じた。
『アタシは神前のフォローに入るからオメエはそのまま一人で突入する形になるんだ。気合い入れろよ』
『ランちゃんに言われなくてもわかってるわよ』
多少腹が立ったというように口を尖らせるシャムに誠は安心感を覚えてにやりと笑った。
『本当に一人で大丈夫なのかね、あのお子様』
閉鎖通信で要が誠にだけ本音をつぶやく。ただ誠は根拠はないが何故か大丈夫なように感じていた。その直感が全く根拠が無いことはわかっていたが、全てがうまくいくような気がしているのに誠自信少し不思議に感じていた。
『各機へ、現在目標はL24宙域へ移動中、繰り返す、L24宙域へ移動中』
管制官のパーラ・ラビロフの言葉にこれまでにない緊張感がハンガーを支配した。
『L24宙域。胡州系コロニー狙いか……それとも』
『西園寺、予想屋の真似はやめることだ』
要の軽口をカウラが軽くたしなめた。誠は右下のブリッジを映す画像の中の艦長席で無意味に手を振る艦長代理のアイシャの姿に呆れながら苦笑いを浮かべていた。
『吉田のコピーだからな。P24宙域に侵入してそのまま遼北、西モスレムあたりに一撃しないとは思っちゃいたが……』
ランが静かにつぶやく。彼女の出撃の命令を待ちつつ誠はただじっと時間が過ぎるのを待っていた。
『いえ!L24から方向を転換!目標は急旋回しています!』
ピンク色のパーラの髪が揺れてブリッジのパイロット達に緊張が走った。