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殺戮機械が思い出に浸るとき 131

「また出かけるんですか……」


 新港、司法局実働部隊活動艦『高雄』の部隊長室を出ようとする嵯峨惟基を呆れたような顔をしてクバルカ・ランは眺めていた。


「すまねえな。お前さんは転属して以来ずっと苦労ばかりかけちまって」 


「まあわかっちゃいたんですがね。それに軍のエリートよりも伸び代があるからそれなりに楽しんじゃいますがね」 


「そりゃいいや」 


 半分負け惜しみのようなランの言葉をまるで聞いていないようにそのままカバンを手にして通路を進もうとする嵯峨。ランはその背中を眺めながら再びため息をついた。


「そんなに俺に期待するなよ」 


「いやね、隊長の人の悪さに呆れてれだけですよ。アイツ等のいつもの探偵ごっこ。今回はちょっと遊びがすぎたって思ってまして」 


「まあな。今の状況になりゃ吉田も自分の足跡を俺なりお前さんなりに言うだろうとは読めてたからな」 


 それだけ言うと嵯峨はポケットからガムを取り出して口に放り込む。


「まあ吉田の野郎が身を寄せるなら口が堅い人物の睨みが利く場所ということになる。となると誰も口を割ることを矯正しない人物を頼るのが一番賢い」 


「まあな。あの地上最強の生物相手に取引するバカはいねえだろ」 


 ガムを噛みながら嵯峨は頭を掻いた。


 同盟構成国の中でも貴族制の体制を持ち、その頂点に君臨する四大公家の筆頭西園寺家。その私兵である摂州党を率いる西園寺康子は嵯峨にとっては血縁では叔母に、戸籍上は姉に当たる人物だった。彼女の法術師としての能力はランが知る限りでも最強の部類に属する。そして弟のためとあればいくらでも骨を折るその姿勢からして吉田が当初から自分の身柄を隠すのに利用していたことは、吉田からの連絡があってみれば当然のことに思えた。


「で、うちの演習……と言うか実戦になるでしょうが、予定時刻より5時間到着時間が遅れるわけですが……」 


「まあ法を犯して内惑星域で軍艦をワープさせることはしねえだろうな。あの砲台が火を吹けば億単位の人間が蒸発するが、同盟上層部にはそれを理解するオツムがねえから」 


「理解するおつむがねえんじゃなくて何も起きなかった時に責任を取らされるのが嫌なんでしょ」


 ランの皮肉に嵯峨は苦笑いを浮かべながら天井を見上げた。


「ラン。そんときのためにこれから同盟加盟国のお偉いさんに頭を下げに行くんだから」 


「まあそれも隊長の仕事というわけですか」 


「そういう事」 


 それだけ言うと嵯峨は決心したようにそのまま歩き始めた。


「要の奴にはなんて言います?あのバカ自分の小遣いが減ったって怒りますよ」 


 ランの言葉に嵯峨は足を止めるとそのままひとつ首をひねったあと手を軽く振って歩き始めた。


「なあに。自分の金遣いを反省するのも悪くないんじゃないの?それに無駄にはならないと思うよ、長い目で見りゃ」 


 投げやりな佐賀の言葉にランはただ一つ大きなため息をついた。


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