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殺戮機械が思い出に浸るとき 123

「そう言う叔父貴は……知ってるのか? 」 


 振り絞るような要の一言。誠達は息を飲んで嵯峨に目をやる。嵯峨は相変わらず天井にタバコの煙を噴き上げていた。


「噂はねえ……どれも信憑性が乏しいからねえ。まあ確実に言えるのは……次の手を読むのが上手いってことは確認できるな」 


「次の手? 」 


 要がゆっくりと顔を上げる。うちひしがれていた姪が少しばかり元気が出たのがうれしいのか、にんまり笑いながら嵯峨は言葉を続けた。


「横流し品、横領品、密輸品。どれもモノが動き出した時点じゃ情報を売り買いして飯を食っている二流の連中でもその様子は熟知しているもんだ。動き出す直前、そこですでにその品物の輸送ルートのパターンを想定して対立勢力や関心のある連中に情報を売りつける。まあそれも一流とは言えないねえ……本当の一流はすでにその時点でどこがその品物に関心を持っているか、官憲などはどこまでその動きを把握しているか、そしてその品物の行方によって状況はどう変わるのか。そこまで分析できて初めて一流だ。だがそれでも伝説の情報屋にはほど遠い」 


「もったい付けるなよ」 


 すでに嵯峨の話に身を乗り出している要の変わり身に呆れながらも誠は嵯峨の言葉の続きを待つ。


「ネネってのはそんな情報屋。一流どころが手にするだろう情報の内容を当ててみせるんだ。つまり情報屋の情報を売りつけるってわけだ……情報屋も頭がネットとつながっているサイボーグばかりじゃ無いのはお前さん達も知ってるだろ? そんな人様のおつむの中身をぴたりと当ててみせる。まあ伝説にもなるわな」 


 そこまで言うと嵯峨は満足したように咥えていたタバコを真新しい灰皿でもみ消す。


「そんな芸当……占いの類か何かじゃないですか」 


 誠の当然の疑問に嵯峨は満足そうな笑みを浮かべる。


「それが出来るから『預言者』の二つ名で呼ばれるんだよ。鈍い連中には予兆も感じない人の流れや物資の動き。時には時代さえもぴたりと当てる。確かにこいつは『預言者』と呼ぶしか無いよな」 


「時空間干渉能力……法術師ですね」 


 しばらく黙って嵯峨の話を聞きながら自分の顎に手を当てて考え込んでいたカウラの一言。嵯峨は曖昧な笑みを浮かべる。


「時間……俺達の次元の把握能力じゃただ流れていくとしか思えないもんだ。それをまるで俺達がサイコロを見て裏の目を当てるように自然に分かる力のある奴がいる……気分のいい話じゃ無いがヨハンに聞いたらあってもおかしくはない能力なんだそうな」


 嵯峨の言葉に部屋に沈黙が拡がった。未来を読む能力を持つ予知能力者。その存在はある意味これまでの法術に対する誠達の考え方を根底から揺るがすことになる。


「でも……それならお仕事を受けた時点で吉田少佐が何者かってことくらい教えてくれても良いんじゃないの? 」 


 それとなくアイシャが呟いた言葉に誠も大きく頷く。


「そりゃあ『預言』だけで飯が食える世界にネネが生きているならな。だが……それを言ったとしてオメエ等がネネの言葉を信じるか? 」 


 嵯峨のふざけたような口調に誠はむくれながら隣の要の顔をのぞき見た。




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