殺戮機械が思い出に浸るとき 11
仕方なく誠はソーセージを食べる。味気ない感じ。
「旨いか? 」
「ええまあ」
形式的なやりとり。要は特に感慨も無いと言うように立ち上がる。
「じゃあ十分後に駐車場。アイシャ。遅れたら置いていくからな」
「要ちゃんの車じゃないじゃない」
不服そうなアイシャを置いて立ち去る要をただ呆然と誠達は見送った。
「やる気ですね」
「ろくでもないことになりそうだ」
誠とカウラはため息をつく。ただアイシャは一人やる気があるというように元気よく立ち上がった。
「準備ですか? 」
「まあね」
そう言って誠とカウラは遅い朝食の食堂に残された。
「本当に大丈夫なんでしょうか?」
「まああれだ。ハンドルを握っているのは私だ。その意味はわかるだろ? 」
カウラもそれだけ言うのが精一杯だった。確かにこの下士官寮に住む要、カウラ、アイシャの三人が通勤や移動に使っているのはカウラの赤いスポーツカーだった。だが要も一応は自分の大型バイクを持っている。やるとなったら自分で動く可能性も無きにしもない。
「でも本当に大丈夫ですか? 」
ソーセージを食べ終わると誠は念を押すように聞いてみた。カウラはただ儚く笑う。実際それ以上の事をカウラに求めることは酷だった。
「まあうちも遼北と西モスレムの軍事衝突が起きれば招集されるでしょうから……無理せずに行きますか」
誠は半分は自分自身に言い聞かせるようにしてそう言うと立ち上がった。カウラも力なくそれに続く。二人だけの食堂。二人の思いは一つ。場合によってはロマンティックな場面になるのだが、それが要と言うトラブルメーカーに頭を抱えての場面と言うことなので全く持ってしまらなかった。
「行きますか」
どうしても誠の出す声には倦怠感ばかりが浮き上がっているように感じられた。




