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殺戮機械が思い出に浸るとき 109

 さすがに普通のトラップはネタ切れという感じでオンドラは止まることなく五十メートルほど洞窟を奥へと進んだ。左右が急に開けて天井が高くなる。


「どう見る……雇用主様」 


「壁面を見る限り風化や落盤で出来た空間じゃありませんね。重機で削り取った跡を整えてそれっぽくしたって言うところじゃないですか? 」 


「ご名答だね。で、あの文字をどう見る? 」 


 オンドラが指さす天井。ネネはすぐにコートから小型のライトを取り出して照らしてみた。文字のようなものが浮かんでいるのが見える。ネネはすぐにそれが本来このような場所にある文字ではないことを悟った。


「オンドラさん。よく文字だと分かりましたね。あれは遼州文字……この星に人が住み始めた時代に使われていた文字です」 


「遼州文字……遼州文明は文字を持たないってのが特徴じゃ無かったのか? 」 


 どこかで聞きかじったという感じで呟くオンドラ。ネネは微笑みながらただ文字を見上げていた。


「確かに現在の記録……つまり地球人がこの星にやってきた時には当時の七王朝は文字を持たない文明でした。彼等の間に伝わっていた伝承の中にはかつて人を不幸にする要素として鉄と並んで文字が上げられています。遼州の先住民、すなわち私達の祖先は意識して文字を捨てて青銅器文明に回帰したんです」 


「ずいぶんと物好きな話だねえ……便利さを捨てて原始に戻るって遼州の前の文明の指導者にはアーミッシュでもいたのかねえ? 」 


 感心したのか馬鹿にしているのか、口笛を吹くオンドラを見てただ慈悲に満ちた笑みを浮かべた跡、再びネネは文字を見上げた。


「『この文字を読める者にのみ、この先の扉は開かれる』って暗号でも記しているんでしょうか? 」 


「おいネネ! 読めるのか? 」 


「先遼州文明の資料は何度か目にしたことがあるので大体は……」 


「さすがインテリ! 」 


「褒めているようには聞こえませんよ……『行く手に現われた道は偽りの道。汝、それを通る無かれ。ただ道は心の中にあり、汝、その道を進むべし』」 


 そこまでネネが読んだときにオンドラは呆れたようにため息をついた。


「心の中の道? なんだよそれ……あれか? 東和軍とかが使っている意識下部プリンティングセキュリティーシステムでもあるって言うのか? 」 


「こう言う謎かけをする人はそんなハイテクを使う趣味は無いと思いますよ……とりあえず続きを読みますね。『心の中は常に乱れるものなり、汝の乱れが我への道なり』……以上です」 


「は? 」 


 オンドラはただ呆然と文字を読み終えて振り返ったネネに答えるだけだった。


「『乱れ』が重要なんですよ」


 ネネの確信のある言葉にただオンドラは首をひねるばかりだった。




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