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殺戮機械が思い出に浸るとき 102

「それと……おもしろ現象が起きてましてね」 


 岡田は再びキーボードを叩き始めた。切り替わった画面には味も素っ気もないグラフが表示される。


「まあ同じく検索回数のデータなんですが……」 


「結論から先にちょうだい」 


「いつもながら厳しいですね。遼南系のシンジケート『南聖会』の警察のサーバへの違法アクセスの回数ですが……見ての通り、この一週間急激に伸びている……」 


 岡田の指の先。確かにそれまで平坦だったグラフが跳ね上がっていた。


「最近は抗争の話も聞かないし……幹部の逮捕の噂もない……」 


「そう、増える理由がどこにも見当たらない……まあ偶然にしてはおかしな話ですが……まあ気にしておいて困る話じゃ無いでしょ」 


「主にどこに? 」 


 目をグラフから離さずに呟く安城に予想していたと言うように岡田はキーボードを叩く。死体、義体、放置、遺棄、紛失などの文字が並ぶ。


「狙いは絞れないんですが……死体を、それもサイボーグ絡みの死体を捜しているような雰囲気はありますね……時期とタイミング、そして狙いがサイボーグ。無関係にしちゃあできすぎている」 


「でもシンジケートが動くほど大物なの? そのオンドラは」 


「まあ凄腕ってことで評判らしいですが……租界でも屈指のシンジケートが動くには小物と言うのが正直なところでしてね……」 


 安城は岡田の言葉に考え事をまとめようというように親指の爪を噛む。


「東都の街中なら胡州四大公の筆頭の次期当主の看板は役に立つ……塀の向こう側ではその地位が生み出す経済的利益が注目を集める……最近の西園寺家の金の動きも掴んでるんじゃ無いの? 」 


 鋭い目つきが岡田に向かう。岡田は苦笑いを浮かべながら再びキーボードを叩いた。天文学的な総資産額が並ぶ帳面、そこに一財産と呼べる金額が一日で引き出されている事実が表示されていた。


「まあ確かにたいした金額だ……それでも西園寺家にしたらはした金。出資者が西園寺家と知ればシンジケートが動く額にはまるで足りない金額……」 


「それでもお人好しのお嬢様が仲間を助けようと引き出す額にしちゃあ十分よ。つまり彼女はあなたより先に真実にたどり着くと言う訳ね」 


 安城の言葉に頭を掻きながら岡田は頷いた。


「癪な話ですが現実はそうなりそうですね……オンドラは東都では手配中の身ですから、代理の人物が近々あのお嬢さん方と接触をするはずですよ。出来れば……」 


 今にも揉み手をしそうなにやけた表情を浮かべた岡田に呆れたような笑みを浮かべて安城は立ち上がった。


「まあ報告書に必要な分だけの情報が入れば連絡するわ」 


 それだけ言い残すとそのまま安城は岡田に背を向けて部屋を出ようとした。


「助かります」 


 岡田はそれだけ言うと再びモニターに向き直った。入り口の大仰なドアが開こうとする瞬間、岡田は思い出したように首だけ入り口に向ける。


「ああ、それと……国防軍うちのシステムの攻性防壁の設計者の名前なんですが……偶然にも『吉田俊平』と言うそうですよ……まあ200年も前の話ですが……」 


「いくら義体化していても脳幹の細胞が死滅するほど昔の話ね。まあ参考程度に聞いておくわ」 


 それだけ言い残すと安城は自動ドアの向こうへと消えた。




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