殺戮機械が思い出に浸るとき 100
今度は画面いっぱいに吉田俊平に関する記事が並ぶ。
「国防軍のサーバーから直接入れるデータはすべてトラップが仕掛けられているのに……見ての通りですよ」
「まあうちの仕事は受けたくないってことでしょ。嫌われてるのよ」
あっさりと言う安城に岡田は苦笑いを浮かべる。
「で、それを確認するためだけに……ってなに? その顔」
「いやあ、変わらないところもあるものだなと……」
「余計なお世話よ。続けてちょうだい」
すねたように呟く安城を薄ら笑いで眺めながら岡田はキーボードを操作し続ける。
「まあそれを確認してそれだけで終わるってのも癪だったんで、三日ぐらいこの画面とにらめっこをしていましてね……そしたらあることに気づいたんです」
画面が切り替わる。一番上の『バリスト内戦における吉田俊平旗下の部隊の無差別殺戮行為に関する調書』と言う文字が消え、『タイタン総督暗殺犯を予想する』と言う記事に切り替わる。
「ずいぶんと物騒な話が並ぶのね……伝説の傭兵らしいというかなんというか……。でも今は同盟司法局の仕事で相当拘束されている人物についてそんなに調べて回る顧客が租界にそんなにいるのかしら? 」
「そうなんですよ……アングラの検索サイト。元々アクセス数なんてたかが知れているはず。その順位が数日でころころと変わる……そこでアクセスしている物好きを捜したわけです」
「全くご苦労なことね」
再び画面が切り替わり、文字列が並んだ。住所。しかもすべて同じ『東和共和国東都港南区港南2-12-6』と言う文字列に変わる。
「同一人物が……でもおかしくない? 港南は現在は再開発ブロックのはずだから人なんて……ダミーね」
安城の笑みに岡田は満足そうに頷くとそのまま住所をクリックした。すぐに画面が切り替わり、エラーが表示される。
「そう、ダミー。まあ租界の中の連中が正直に自分の身元を明かすわけがない……でもまあそこは俺にも維持がありますから……この住所でいくつか知り合いに問い合わせをしたところ……出て来たのはこの女」
画面に映し出されるピンクのサングラスのにやけた女の顔。そしてその隣には銃を構えて走る長い髪の女の写真が映し出された。
「物騒な写真ね……」
「六年前……港銀行西口支店襲撃事件の実行犯の写真ですよ……フィルターをかけましたが同じ人物と出ました」
「六年前……東都戦争の激しかった頃ね……で、身元は? 」
安城の言葉に岡田は力なく肩を落として上目遣いに安城を眺めた。