殺戮機械が思い出に浸るとき 10
翌日の朝。誠は気まずい雰囲気の中食事をとっていた。右隣には要、左隣にはアイシャ。どちらも今日は休暇を取ることにしていた。
「自宅に行ってどうにかなるのか? 」
トーストを囓りながら正面のカウラがつぶやく。誠もその言葉にただ苦笑いを浮かべる。
「ともかくそこからだろ。アイツの自宅。見たことないしな」
「要ちゃん……単なる好奇心? それなら休みなんか取るんじゃ無かったわ」
すでに食事を終えたアイシャがゆったりとコーヒーを啜りながら目を誠越しに要に向ける。要は不機嫌そうにスクランブルエッグの皿を手に持つとそのまま口に流し込んだ。
「自宅に行ったとする。不在ならどうする?」
「あれだ、アイツが制作に絡んでたアーティストの所属会社を片っ端から訪ねてだな……」
「要ちゃん。それだといつか通報されるわよ」
誠もただ呆れるしかなかった。誠もカウラもこうなった要のやる気をとりあえず空振りでもいいからガス抜きしてやる程度の気持ちで休みを取ったのだが、明らかに要は暴走を始めていた。
「まあ……ある程度調べて駄目ならまた叔父貴に聞くさ、一番付き合いが長いのは叔父貴だからな。自分じゃ動かねえがアタシらにヒントくらいくれるだろ」
さすがの要もカウラと誠の冷ややかな視線を察してトーンダウンする。大きなため息を誠はついた。
「それにしても……あんまり食べないわね。誠ちゃん」
トースト一枚とスクランブルエッグ。それにソーセージ一本で食事を終えた誠を不服そうにアイシャが見つめていた。
「まあ朝ですから」
「昨日は飲んで無いじゃないの……もしかして何か作ってるの? 」
誠の趣味のフィギュア作りの話を聞き出そうとしているアイシャだが。誠には特に話すことは無かった。確かに正月に実家に帰ったときに道具の一式は持ってきていたがそれは倉庫に眠ったままでとりあえず手を付けるめども立たない。
「まあ今日はいろいろとありそうなので」
「なら食っとけ! 」
要が自分の皿の上のソーセージを誠の皿に移す。そしてにんまりと笑うわけだが、誠はどうにもただ愛想笑いを浮かべるしかなかった。
「なんだよ、気が向かないなら来なくて良いぞ」
「行かないとお前が何をするか分からないんだ。ついていくよ」
皮肉めいた笑みを浮かべながらカウラは静かにそうつぶやいた。