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武将 古田織部 第29話 父が応対する

使者が家の前で馬を止めたあと、

家の中の空気がゆっくり変わっていく。

信長の軍役改めの知らせを受けるのは、

この家にとって初めてのことだった。

父は当主として応対に出るため、

土間の奥から静かに歩いてくる。

父の足音が土間に落ち、

その音が家の中に広がっている。

裾が揺れ、

光が布の面で白く反射した。

家の者が戸口の脇に下がり、

息をひそめている。

土間の暗さが動かず、

外の光だけが白く差し込んでいた。

父は敷居の前で立ち止まり、

使者の方を見た。

視線がまっすぐ伸び、

朝の光の中で静かに止まっている。

使者は烏帽子に手を添え、

短く頭を下げた。

「信長様の御意により、

 古田家へ申し渡す。」

声は低く、

谷の空気に沈んだ。

父はゆっくり頷き、

言葉を返した。

「承る。」

声は短く、

敷居の木に落ちて静かに止まった。

使者が懐から巻物を取り出し、

朱の印が押された面が光を受けている。

その赤が朝の白い光の中で濃く見えた。

父は巻物を受け取り、

指の動きが止まらず続いている。

紙の端がわずかに揺れ、

光がその面を細く走った。

重然は柱の影から見ている。

父の背がいつもより少しだけ重く見え、

その影が土間の上で長く伸びている。

使者は短く言葉を続けた。

「軍役の人数、

 装備の改め、

 至急のこと。」

声は一定で、

風に混じらずに届いた。

父は巻物を閉じ、

静かに言った。

「心得た。」

その声が家の中に落ち、

空気がゆっくり固まっていく。

使者が馬に戻り、

鞍の金具が短く鳴った。

馬の足が土を踏み、

その音が村の奥へ遠ざかっていく。

重然は父の背中を見た。

背中は動かず、

光を受けたまま静かに立っている。

その姿が、

家の空気を変えていくのがわかった。


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