クリスマス
クリスマス。それはケーキ屋にとっては戦争の日。シャルールともなればなお過激。一日に一週間分のお客さんが押し寄せる日なのだ。覚悟を決めて僕は厨房に立つ。師匠の顔はいつもよりも真剣だ。
「見習い。今年も戦いの日が来た。気を抜くんじゃないよ!!」
「もちろんです!!!」
そうして長い戦いの幕が開けた。
「見習い、大変そうだね。」
「そうねぇ。私達にも何か手伝えることがあればあればいいんだけれど…。」
厨房の扉の隙間からコーコルとブラムが様子を伺う。視線の先には鬼と化した見習いと師匠。日が昇る前からあの調子なのでとても心配になっている。
「クリスマスか…。ボクもよく見ていたけれど、買っていくお客さんは幸せそうでボクまで嬉しくなるんだよ。」
「まぁ!!そうなのね!私はクリスマス、あまり見た事がないけれど、とっても気になるわ!!皆が笑顔になるところ、見たくなっちゃう!」
「そうだね……。ブラム、少しボクに付き合ってくれるかい?」
「それは全然いいけど…、どこに行くの?」
「フフッ。ボクに着いてくればわかることさ。」
コーコルはブラムを連れて商店街通りに来た。ここもすっかりクリスマスムードで溢れている。
「わぁ!どこもかしこもお祭りみたいね!!楽しそう。」
「そうだね。せっかくだし、見習いにお土産を買っていこうか。」
「え…?でも、私達は他の人には見えていないし、お金も持っていないわ!」
「ボクに任せてくれ給えよ。」
そんなこんなで街を歩いていると、スノードームの店を見つけた。どれもキラキラ輝いていて、なかで微かに雪が舞っている。
「ねぇコーコル!このスノードームなんていいと思うわ!」
「確かにこれがいいね!これにしようか。」
コーコルは懐から1枚のお札を取り出し机に置いておく。
「さぁ、引き続き街を周ろうか。」
ブラムは買った?ばかりのスノードームを抱えて街を歩き始めた。
「いらっしゃい!おや?こんなところにお金とメモが…」
『スノードーム、一つ頂くよ。お金は置いておく。』
「一つ?!この額ってスノードーム一個の10倍だぞ?!!」
そんな事とは露知らず、コーコルとブラムは街を見物している。行き交う人皆、笑顔に溢れていてブラムはにこにこしていた。
「クリスマスって素敵ね!どこを見ても笑顔で溢れてるわ!!」
「フフッ。そうだね。そろそろ店へ戻ろうか。」
「そうね!見習いさんにプレゼント渡さなくっちゃ!!」
そう言ってくるっと回ると、シャルールの方向に歩き始めた。
「クリスマスケーキですね!お待たせしました!」
「見習い!!ショートケーキできたから追加してくれ!!!」
ここでは日が暮れても、朝と変わらず戦場が続く。カットケーキよりもホールケーキが売れるお陰で、すぐにショーケースから在庫が無くなってしまう。
「見習いさん!!ただいま!」
「ボクも戻ったよ。」
「2人ともおかえり!!まだ当分休めないから部屋に戻ってていいよ!」
そういう見習いの顔には明らかに疲労が見える。
「私達も手伝うわ!在庫を追加していけばいいのよね!」
「ボクも手伝おうか。」
「2人とも〜!!助かるよ!」
カウンター3人係でようやくスムーズに周りだし、数時間があっという間に経った。
「ショートケーキですね!良かった、最後の1個ですよ!」
「ほんとうに?!やったぁ!お母さん、これでサンタさんとお祝いできるね!」
「そうねぇ。早く帰りましょうか。」
最後のお客さんが帰っていく。嬉しかったのか、女の子はぴょんぴょん跳ねながら帰っていった。
「やっぱり笑顔って素敵だわ!見ていたら私達も幸せになれる。あ、そうだ!見習いさん、これお土産よ!」
「気に入ってくれると嬉しいな。」
「スノードーム?きれいだなぁ!ありがとう!!」
スノードームの中には、3人のパティシエがお店の前に並んでいた。
「今日も疲れたなぁ。あれ?しまっておいた財布が机の上に出てる。」
中を確認すると、唯一の1万円(相当)札がきれいに消えていた。
「コーコル!!!!ブラム!!!!」




