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出会い

   「あなた!何ボーッとしてるの!!早く仕込み、手伝いなさい!!」

   「すみません師匠!!」


 ここは緑溢れる街アルモニー。僕はこの街のケーキ屋「シャルール」で働く見習いパティシエだ。


  「ほら、もう開店するから準備しな!」

  「はい!!!」


  がやがや……がやがや……


  僕が働くシャルールは、この街でも屈指の人気を誇るお店で、人が絶え間なく訪れる。お客さんの多さに圧倒されながらも、無事に一日を終えた。


  「じゃ、お疲れ様。私はもう2階に上がるから、厨房は好きに使いな。」

  「ありがとうございます。」


(よし、今日もやるぞ……!!)

 

  この世界には職人が作ったものに、妖精が宿ることがある。それはとても稀なこと。職人にとって、作ったものに妖精が宿ることはとても名誉なことで、それぞれに称号が与えられる。

  パティシエには「パティスリーレフェクチュール」が与えられ、その店には一口でも食べたいと願うお客が絶えず買いに求めると言われている。

  ここシャルールは、代々パティスリーレフェクチュールの称号を与えられている有名なお店なのだ。そんな偉大なパティスリーに弟子入りできたのは僕が師匠にドン引かれるほどしつこく頼み込んたからである。弟子入りしたからには、必ず称号を手に入れなければという一心で、閉店後に厨房を借りて必死に特訓している。


(僕もはやく妖精が宿るほどのケーキが作りたいな。)


  この店には、歴代の残したレシピがある。このレシピを元にすれば、きっと妖精が宿ってくれるはずだ。


(よし、今日はガトーショコラを作ろう!)


  ほのかにカカオが香るふんわり生地につやつやのチョコレートをかける。均等に、ムラなく、丁寧に。

  更に粉砂糖を全体的にまぶして、ホイップクリームを一絞り。ホイップクリームはほんのり甘さを感じる秘伝の味。これが作れなければ弟子失格だ。

  こだわりクリームの上に真っ赤に熟れた甘酸っぱいいちごを乗せたら完成だ。


  「今日はいつもより上手くいったぞ。このしっとり感と見た目の良さ。完璧だ。」


  「うん、いい焼き加減だね。」


(……ん?)


  「ガトーショコラは焼き加減が重要だ。キミはなかなか才能があるね。いい気分だよ。」


(……だれ?!)


  そこに居たのは、チョコレートのような色の女の子。歴史の本に出てくるような衣装を着ている。明らかに知り合いでは無い。混乱している僕を、髪で片目が隠れた金色の目でこちらを見つめていた。


(ここは一旦落ち着いて、話を聞こう。)

  「ど…どちら様?」


  「ボクの名はコーコル。全てのガトーショコラを代表して君の元へ訪れた。」


  訳が分からない。突然のこと過ぎて、何がなんだかわからなくなってきた。でも、ガトーショコラを代表して?普通の人がそんな事言うはずない。だとしたらもしかして…この子が妖精?


  「ボクは長き甘味の物語を見守ってきた。ケーキにはそれぞれの物語があるんだ。そしてパティシエは物語の序章を作る。」


  「……キミは、新たな物語を紡いでくれるかな?」


  話が壮大すぎてよく分からないけど、この子はずっとガトーショコラという歴史を一人で見てきたのはわかった。それなら、僕が歴史を繋げていかなきゃいけない。僕はパティスリーレフェクチュールになるんだから。


  「もちろん。約束するよ。」

  「…ははっ!おもしろい!やはりボクが見込んだ通りだ!」


  おもしろそうに、けれどどこか嬉しそうにコーコルは言った。


  「それなら、ボクはキミと共にいよう。」

  「それって……!!!」

  「あぁ、キミがその称号を手にするその時まで、ボクがついているよ。その先はキミ次第だ。」


  とうとう、妖精が来てくれた。今までの努力は無駄じゃなかった。あまりの嬉しさに涙が出てきそうだった。


  「僕……妖精を宿らせることができたんだね。僕はパティスリーレフェクチュールになれたんだ!!」


  「いいや?」



  「……え?」


  時が止まった気がした。まだパティスリーレフェクチュールではない?でも妖精が来てくれた。どういうことだ?


  「残念ながら、キミはまだまだ見習いだよ。ボクがここに来たのは理由があるんだ。」

  「理由って?」

  「それは教えられないな。」

  「そんなぁ……」


  さっきまでの感動が飛び去り、今はショックでしかたない。少し俯いていると、コーコルが前に立った。


  「落ち込んでいる暇はないよ。ガトーショコラの歴史は長い。そしてこれからも続く。」



  「迷わず、進みたまえ!キミの甘美なる未来は、このボクが保証しよう。」

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