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冒険者ギルドの掃除人  作者: 沼平 甫
冒険者狩り
13/37

接触

 その場所は、冒険者ギルドとは思えないような雰囲気だった。


 喧騒とは真逆の静かな空間には、職員が書類にペンを走らせる音だけがやけに響いている。


 昼下がりを過ぎ、夕方に差し掛かろうという時間にも関わらず、冒険者はまばらにしか見受けられない。


 冒険者ギルド名物の受付待機列も無ければ、騒ぎ立てるような輩も居ない。


 それもそのはずだ。ここは、Bランク以上の冒険者を対象に依頼の斡旋等を行う、通称“上級ギルド”なのだから。


 “上級ギルド”と呼ばれてはいるものの、設備は他のギルドと大差ない。受付などの窓口が並ぶ実務的な場があれば、当然、酒を伴う飲食を提供する場もある。


 ここでは、ギルド業務を行う場所の反対側、壁と扉を一枚挟んだ位置に“それ”はあった。




 窓から射し込む仄かに赤みを帯びた自然光が、酒場を薄暗く照らし出す。


 黒檀製の大きな円卓が幾つか配置され、その周囲には丸椅子が無造作に置かれている。


 磨き上げられた床。手入れが行き届いているらしく、隅や床板の隙間にも埃一つない。


 酒場は利用者以外にも開放されているはずなのだが、流石に敷居が高いらしい、設置されている円卓の数とは不釣り合いな程にがらんとしている。


 Bランク以上の冒険者は、全体の二割に満たない。上級ギルドの受付が待機列と無縁なように、酒場もまた、雑然とした喧騒とは無縁なようだ。


 客の少なさには慣れ切っているようで、光沢のある焦茶色のカウンターの向こうには誰も居ない。酒場のマスターは休憩がてら、厨房に引っ込んでいるらしい。


 外から聞こえてくるのは、行き交う人々の話し声や足音が混ざり合ったもの。


 対照的に静かな酒場で、端に置かれている円卓を囲む一団の姿は、やけに目立って見えた。


 “暁の獅子”。六人の冒険者からなる、Aランクパーティである。


「……暇だな」


 ふと呟きを漏らした、全身鎧に身を包んだ、金髪を短く刈り上げた大男。座った状態でも、十分過ぎる程に体格の良さが見て取れる。


 重戦士のゲレル。


「こんなに暇だと分かってたんなら、誘いを断るんじゃなかったぜ。最低あと三回は……あの女に天国を見せられたのによ」


 言いながら、若干の下劣さを含んだ豪快な笑い声を上げる。


「……ゲレル。前々から思っていたのですが」


 溜息混じりに口を開いた、美しい黒い長髪を頭頂部の少し後ろで一纏めにして垂らした女性。


 東方の民族衣装に似た、袖のゆったりとした道着を纏っている。


 剣士のヒカリ。


「そのような事を、女性の居る席で話すべきではないでしょう。貴方の卑賤な品性が透けて見えますよ」


 生真面目さと神経質さが見え隠れする口調に、ゲレルは思わず片眉を押し上げた。


「言いやがったなこのクソ女……。テメェ、表に出ろ。二度と口が聞けねぇようにしてやる」


 椅子の横で自立していた戦鎚の柄に手を掛けながら、ゲレルは殺気を隠さない様子で吐き捨てる。


「望む所です。二度と睦言(むつごと)すら交わす事が出来ない体にして差し上げますよ」


 言いながら、ヒカリも殺気を隠さない様子で、腰に提げた長刀に手を掛ける。


「お、おい! 止めろよお前らこんな所で! 何回同じ遣り取りすりゃ気が済むんだよ!」


 慌てて間に割って入った茶髪の青年は盗賊のフォズだ。


 だがその仲裁は、円卓の対角線上で睨み合う二人には無意味だった。


 一触即発。一歩間違えれば爆発しかねない緊張感が漂う。


 しかし緊迫した空気を破ったのは、ゲレルでもヒカリでもフォズでもない、円卓を囲んでいたもう一人の存在だった。


「“彼方より出でし風は雪と氷を纏いて吹き荒ぶ”……」


 魔力を乗せた力ある言葉が、歌うかの如く紡ぎ出された瞬間、凍てつくような冷気を帯びた風が酒場全体に吹き荒れる。


 極寒の平原。それを連想するが早いか、風は直ぐに収まり、酒場は元の平静を取り戻していた。


 霜のこびり付いたグラスを除いて。


「頭は冷やせたかしら? あまり無駄な魔力を使わせないで頂戴。本当に面倒くさいわね、あなた達二人は」


 若干の軽蔑を含んだ冷ややかな口調。魔術師のルシア。


 腰まである栗色の髪を揺らしながら、ルシアはさも興味が無さそうに、自らの指を彩る種々の指輪を眺めている。


 赤、青、緑、紫、透明……。填め込まれている石は色もカッティングも様々だが、共通しているのは、そのどれもが魔力を帯びた代物であるということだ。


 一際真新しい輝きを放っている薬指のそれに、ルシアは愛おしげに唇を落とした。


「すみません、ルシア。下劣な相手の低俗な発言に心を揺らされるなど、私もまだまだ修行が足りませんね」


 思い切り棘のある言葉を繰り出しながら、着席するヒカリ。


 対するゲレルはわざとらしく大きな舌打ちをしながら、不機嫌そうに腰を下ろした。


「……そういえば、グローは?」


 場の繋ぎ程度のノリで、ルシアはこの場に居ない僧侶の名前を出す。


「教会に顔出しに行ってるらしい。納金も兼ねて、だとさ」


 パーティ分裂の危機を脱し安心した様子のフォズが、伸びをしながら答える。


「盗賊も一応、盗賊ギルドに上納金納めたりするけどよ、教会はそれに輪を掛けてえげつないよな……」


 何時だったか、グローから聞いた教会の内部事情を思い出しながら、フォズは思わず溜息を吐いた。


 僧侶以上の地位を目指すのであれば、余程卓越した才能か、莫大な金、もしくはその両方が必要なこと。そして、才能による地位昇格はこの数年皆無であること。


「結局、何をするにも金だものね。命ですら、最後に物を言うのは金だもの。本当に、世も末だわ」


 カラスが鳴くように、ルシアは乾燥した笑いをからからと上げる。


「だが、有って困るモンじゃねぇ。金が有りゃあ、美味いモンも食えるし、イイ女だって抱ける。それこそ食い散らかし放題だ」


 言いながら、ゲレルは下品な笑みを浮かべる。


 全く懲りてないなこいつ、と言いたげなフォズの表情を尻目に。


「……ところで、我らが頭領はどちらに?」


「どうせ他の女の所だろ。今頃ベッドの中でいちゃついてやがるんじゃねぇのか?」


 氷雪魔法のお返しだとでも言いたげに、ゲレルはニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべながらルシアを見遣る。


「あら、それは無いわよ。だって私とリヒターは愛し合ってるんですもの。昨日なんて一晩中ね……」


 両手で頬を覆いながら、夢見る乙女のようなうっとりとした表情になるルシア。


 途端に、何処となく居心地の悪い雰囲気が周囲を包み込む。所謂(いわゆる)“のろけた空気”というものである。


 半ば呆れた様子で、互いに視線を送り合う他の面々。


「と、とにかく。持て余す時間があるからこそ、このような無用で不快な(いさか)いが起きるのです」


 居心地悪い雰囲気も、ゲレルの下品な言動も、完全に無視することに決めたヒカリが、皮肉めいた風味で口を開いた。


「クソ女の言う通りだな。流石に前回から間が空きすぎちまって、いい加減体が鈍ってきちまいそうだ」


 言いながら、肩を回すゲレル。


「真に不本意ながら同意見です。前回の相手は多少骨がありましたが、所詮は多少に過ぎません。次は、もっと手応えのある相手だと良いのですが」


 この会話だけが耳に入ったならば、十人が十人とも、魔物のことだと思うだろう。


 実際には、もっと(おぞ)ましいものを含んでいるのだが。


「“依頼”を探してくる、とは言ってたけどよ……どうなることやら」


 “依頼”。それは果たして、一般的にイメージされるものと同じものなのだろうか。


「前回は結構実入りが良かったじゃない? ああいうのだったら、こちらとしても楽なんだけど」


 懐から革袋を取り出すと、言いながらルシアは中身を円卓の上に開けていく。


 転げ出てきたのは、幾つかの楕円形の宝石。色はバラバラだが、カッティングと大きさは全てほぼ同じだ。


 その中から透明な宝石を親指と人差し指でつまみ上げながら、ルシアは魔力を込める。


 魔力が十分に蓄積された合図のように、徐々に宝石が鈍い光を帯びていく。


 彼女が二つ目に手を伸ばそうとした時に、酒場の扉が開いた。


「悪ィ、待たせちまったか?」


 呼び掛けながら、男は背中の中ほどまである黒髪をなびかせつつ、円卓に近付いていく。


 “暁の獅子”のリーダーである、戦士のリヒター。


 彼の後ろには、白いローブを纏った、やさぐれた顔付きの無精髭の男が居る。僧侶のグローだ。


 そして更にその後ろに、灰色の髪を後頭部で結んだ男が立っていた。


「頭領、そちらの男性は?」


 灰色の髪の男に視線を向けながら、ヒカリはリヒターに問う。


 リヒターが男に目配せすると、その灰色の髪の男は、円卓を囲む面々の前に歩み出た。


「俺はイェルグ。あんた達が……あの有名な“暁の獅子”、なんだよな?」


 値踏みをするような四人の視線が、イェルグに注がれる。


 少し変色した白い厚手の生地の長袖シャツに、色褪せた焦茶色の厚手のズボン。脛までの高さの黒い革製ブーツに、服の上からは革鎧。


 木製の枠で形作られた大きな背嚢(はいのう)を背負い、腰には芯に巻き付けた地図らしきものと、(なた)ほどの長さの刃物が収められた鞘を提げている。


 歳の頃は三十代半ばから四十代前半といった所だろう。革紐を通して首に掛けた銀製のリングが、彼がBランクの冒険者であることを如実に物語っていた。


「いや、本当に助かった。初めての街でギルドに寄ったらいきなり依頼を振られて、ちょっと途方に暮れてたんだよ」


 イェルグは頭を掻きつつ、少しだけ苦みを含ませながら笑う。


「依頼ってのは?」


「ああ、急ぎで荷物を届けて欲しいってやつなんだが……生憎、俺はこの辺の地理にはさっぱりでな。どうしようかって悩んでた時に、声を掛けて貰ったんだ」


 言いながら、イェルグは依頼書を円卓に置いてみせた。


『スコルツェのギルドへの、薬草配達依頼。期限は五日。納品時、依頼書の持参者に報酬支払いのこと。』


 その文面と共に、ギルドマスターであるスマルトの判が押されている。


 スコルツェとは西側諸国の玄関口となっている街の名だ。山越えが最短経路だが、それも、この辺りの地理にある程度明るくなければ厳しいだろう。五日間という期限があるならば、尚更だ。


「でも、私達に同行する分の報酬を支払ったら、貴方の取り分は?」


 如何にももっともな、ルシアの疑問。


「まあ俺の場合、金を稼ぐことが目的じゃないからな。最低限、食っていけるだけの金が手元にあればそれで良いんだ」


「……成程。お前さんは“渡り鳥”ってヤツか」


 大きな背嚢と言動から、ゲレルはそう推理した。


「その呼ばれ方は、ちょっと抵抗があるんだがな。俺はただ、旅をするのが好きなだけなんだが……」


 “渡り鳥”。一箇所に留まらず、依頼をこなしながら街から街へと渡り歩き、場合によっては大陸をも越えるような冒険者の通称である。


「で、どうする? グローは了承済みだけどよ、一応、お前らの意見も聞いておきたい」


 リーダーであるリヒターがここまで連れてきた時点でほぼ確定なのだが、念の為、意見を仰ぐ方針らしい。


「良いんじゃない? リヒターが決めたんなら、私は賛成」


「私もです。頭領が決めたなら、異論を挟む余地はありません」


「まあ、暇を持て余しているよりはよっぽどマシだからな」


「良いと思うぜ。お前が決めてきた仕事にハズレはねぇし」


 円卓の面々は、それぞれに賛成の意思を表明する。


「……つー訳だ。改めて、よろしく頼む」


 リヒターはイェルグに、軽く頭を下げる。


「ああ、こちらこそ! 頼りにしてるからな、“暁の獅子”さんよ!」


 すっかり不安が晴れ、すっきりとした表情のイェルグ。


「明日の正午、街の西門の外で落ち合うということで良いか?」


「了解した。一応、あんたが依頼主なんだから、遅れないでくれよ?」


 茶化すようなリヒターの台詞に、イェルグは笑う。


「分かってるさ。今日は早く寝るようにする。では、また明日」


 深々と礼をすると、イェルグは駆けながら酒場を出て行った。


 その場に残されたのは、“暁の獅子”の面々のみ。


 酒場には、不自然ささえ感じる程の静寂が差し込み始めている。


「…………やっと行ったか」


 口を開くなり、煙草に火を点けるグロー。


 椅子に乱暴に腰を下ろした衝撃で、床板が小さく軋む。


「相変わらずのヤニ中毒かよ、テメェは」


 余りにもキツい煙草の臭いに、流石のゲレルも思わず顔を(しか)める。


「うるせぇ。聖職者ってのはストレスが溜まりまくるんだよ。むしろ初対面のヤツ相手にここまで我慢したことを褒めろってんだ」


 数時間ぶりの煙草の味を噛み締めるように、グローは虚空にゆっくりと紫煙を吐き出していく。


「分かっちゃいたけど、あんたも大概だよな。そんだけ煙草吸ってたら、ローブだってヤニ臭くなるだろ……」


 呆れたように呟くフォズ


「お前、今度から回復術値上げな。銀貨五枚から銀貨二十枚だ」


 それなりに痛い所を突かれたらしい。明らかに不機嫌になったグローが、あからさまに不機嫌な態度で言い放つ。


 そりゃねえよ、などと言いながら、フォズは頭をペコペコ下げている。


「盛り上がっているところ悪ィが」


 着席しながら、リヒターは円卓の面々を見回す。


 改めて、酒場に自分達以外が居ないことを確認しながら。


「“アレ”、どう思った?」


 “アレ”。最早人称代名詞すら使われない。


「楽そうで良いんじゃない? 面倒臭くない相手は大歓迎よ」


「弱そうだったな。Bランクだから、それなりにはやるんだろうが」


「お前ら、もう少し小さな声で喋れよ。もし誰かに聞かれてたらどうすんだ……」


 少しだけ顔色を青くしたフォズが、ささやかに注意を促す。しかし、聞き入れられた様子は無い。


「手応えの無さそうな相手ではありますが」


 しかし、とヒカリは言葉を繋ぐ。


「腰に提げていたあの得物は、中々の業物と見受けられました」


「あれは、恐らく“星銀”だ」


 相槌を打つように、ヒカリの言葉に続けるリヒター。


「何度か武器屋で見掛けたことがあるが、あの色にあの光沢、まず間違いねぇな」


 戦士でありながら、リヒターの鑑定眼は折り紙付きだった。金に聡い結果、とも言うが。


「確かに、俺も見たことあるな。主教座大聖堂の無駄に豪華な儀式用振り香炉が、似たような色と輝きだった」


 煙草を無造作に灰皿に置くグロー。今度は懐から取り出したスキットルに口を付けている。


 ややスモーキーな癖のある香りが微かに漂う。


「おいおい、マジで“星銀”だとしたら、あんな短刀でも最低金貨五十枚で売れるぞ……」


 フォズの言葉に、円卓の空気が途端に張り詰める。


「…………“最初に()ったモンが総取り”、そういう決まりだったよな?」


 念を押すような口調で、他の面々に視線を送りながら、ゲレルは言う。


 口元には下品な笑みが浮かんでいるが、目は全く笑っていない。


「正直、金には全く興味はありません。ですが、素材としては余りにも魅力的過ぎますね。星銀を使って打ち直せば、私の剣の道も新たな領域に踏み込めるというもの」


「金貨五十枚ね……。それだけあれば、魔力保存用の宝石も山程買えそうね。おまけに新しい指輪も。ねえリヒター、私、特別な指輪が欲しいんだけど?」


 生真面目なヒカリとは裏腹に、(しな)を作りながらリヒターに秋波を送るルシア。


「ちっ、俺だけ不利じゃねぇか。おいゲレル、俺と組め。俺と組んだら、今度女を充てがってやる。最近教区に新しく入ったいけ好かねぇ見習い修道女だ。お前好きだろ、そういうヤツを“教育”するの」


 およそ僧侶とは思えない発言。


「見た目次第だな。上玉なら考えてやる」


「勿論、上玉中の上玉に決まってんだろ。金髪に近い銀髪で、見た目は如何にも聖女様って感じだ。見てぇよな、そういうヤツが“汚れる”ところ」


 くくっ、という笑いと共に、酒と煙草の臭いが混じった息が漏れ出る。


「最高じゃねぇか。あぁ、想像するだけで滾ってきちまった。取り分は六四でどうだ?」


「お前が六で俺が四か。良いぜ、それでな」


 下品な笑いが二つ、酒場の空気に消えていく。


「……話は纏まったみてぇだな」


 改めて、リヒターはぐるりと円卓の面々を見渡す。


「決行は明日だ。なに、普段通りやりゃあ良い。普段通り、いつも通りに、な」


 面々の瞳に、昏い光が宿る。


 その中で一人、フォズは何も言えないまま押し黙っていた。


(……いつから、こんな風になっちまってたんだ。こいつら、怖ぇよ……)


 フォズが不安げに人差し指で円卓を叩く音が、空しく響いている。


 “暁の獅子”の面々の、笑い声とは裏腹に。




 上級ギルドから抜け出し、一歩、二歩と離れていく度に、イェルグの顔から表情が失われていく。


 イェルグ。グレイを逆から読んだだけの、単純なアナグラムだ。


 仕上げを行うように、大きく息を吐く。


 先程までの、表情と感情のある人間“イェルグ”は、すっかり“グレイ”へと戻っていた。


──さて。


 グレイは腰に提げた短刀に触れる。


──今頃、“これ”をどうするか話している頃だろうな。


 “星銀の短刀”。彼の、かつての親友の形見。


 グレイがヴィオレッタに、印象に残らない服装を揃えるよう頼んだのには理由がある。


 一つは当然ながら、対象以外の人々の記憶に残らないようにするため。


 もう一つは、この“星銀の短刀”を相手に強く印象付けるためだ。


 薄い色に塗られたキャンバスの中で、原色の飛沫は極めてよく目立つ。それと同じことだ。


──後は、連中の策に乗れば良い。


 沈み始めた太陽の光が、グレイの背を照らす。


 彼はもう、上級ギルドの方を振り返ることは無かった。

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