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異世界美容院Angeli  作者: イタズ
第4章 変わりゆく異世界編

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パーマ講座

新しく完成したパーマ液を携えて、俺は髪結い組合会館にマリオさんと向かっている。

勿論マリオ商会の馬車を使って。

車内でも軽快なトークを繰り広げる俺達、最早盟友と呼べなくもない関係性だ。

マリオさんには本当にお世話になってます。


「次は何の美容商材を開発するのですか?ジョニー店長は?」


「そうですね、次はカラー剤ですが、こちらは当てがありますので直ぐにでも完成すると思いますよ」


「ほう!それは心強い!流石はジョニー店長ですね!」


「それほどでも・・・」

フフフ・・・もっと褒めてくれてもいいのだよ・・・


「カラー剤もユリメラさんがお造りになられるのですか?」


「その予定です」

ウンウンと頷くマリオさん。


「彼女は最早『ANGELI』いや、美容業界にとってはなくてはならない存在ですね」


「全くです、彼女の貢献無くては考えられませんね」

その通りだ、彼女の献身無くしてはこの世界での美容院はなりたたないのだ。

ユリメラさんとは最高の出会いが出来たと感謝が絶えないよ。


「して、その当てとは?」


「それは・・・秘密と言う事で・・・」

流石にマリオさんでも原材料については話せないな、情報漏洩は無いものとは分かってはいるが、ここは念には念を入れてですね。

すいません、マリオさん・・・


「これは失敬・・・無遠慮に踏み込んでいい箇所ではありませんでした・・・」


「いえ、分かって貰えればいいのです」


「ありがとう御座います。それにしても・・・美容院『AGENLI』が開店してからというもの・・・この世界そのものが変わってきております・・・この先も急ピッチで発展していくのでしょうなあ・・・」


「うっ・・・なんだかすいません・・・」


「いえいえ!良い事ですのでお気になさらず」


「そう言って貰えると助かります」


「美容院その物が、この世界にとっては初であったことなど随分遠い過去の様です」


「そうですね・・・さて、そろそろ着きますよ」


「畏まりました、では行きましょうか」

髪結い組合会館の前に着くと、お迎えの髪結いさん達に誘導されて、いつもの練習場とは違う応接間に通された。

其処ではアイレクスさんと、幹部の二人が待っていた。

この二人は副会長のブレンダさんと、フィービーさん。

先日のシャンプー試験では試験官をしていた人物である。

今と成っては顔見知りだ。


ソファーに腰掛けると早速俺は話し掛けた。


「お三方、よく聞いてください」

身構える三人。


「「「はい・・・」」」


「ついにパーマ液が完成しました!」


「おおっ!」


「やっと・・・」


「これで・・・」

三者三様の反応をしている。

共通しているのは、このパーマ液を待ち焦がれていたことだ。

実は既にクイックマーケルは鋳掛屋のヤンレングスさんの手によって、開発されている。

そのクイックマーケルにて、この三人は他の髪結いさん達よりも先駆けてパーマの練習をおこなっていたのだ。

だがパーマは一筋縄ではいかない、練習に練習を重ねてやっと手に出来る施術なのである。

実際、美容師試験の実技ではクイックマーケルを使用した実技が用いられているからね。

美容師のスキルを計るのに、最たるものなんですよ。


「ではマリオさん、お願いします」


「畏まりました」

俺の隣に座っているマリオさんが徐に瓶を二本取り出した。

その瓶を見入っている三人。


「先ずはこちらが一液で御座います」

瓶を受け取るアイレクスさん。


「なるほど・・・」


「そしてこちらが先日完成した二液にて御座います」

今度はブレンダさんが瓶を受け取る。


「これが二液・・・」


「二人共、瓶の蓋を開けて匂いを確かめて下さい」


「匂いですか?」


「そうです・・・強烈ですよ・・・」

そう、強烈な匂いがするのである、特に一液が・・・

食虫植物の粘液は思いの外、臭いのである。


「では・・・」

瓶の蓋を外して匂いを確かめる二人。


「うっ!・・・」


「うーん・・・」

案の定アイレクスさんは眉間に皺を寄せていた。


「まだまだ開発の余地のある商材ですが、品質は保証できます」


「そうですか・・・」


「匂いに関しては、目下ユリメラさんが手を加えて解消しようと頑張っています」


「はい・・・」


「先ずはこの商材で練習を始めましょう」


「ジョニー先生がそうおっしゃるのでしたら・・・」

気持ちは痛いほどに分かる。

いくらパーマができるからと、この匂いに耐えられるお客さんはどれぐらいいるのだろうか?

お客さんファーストに考えればどうしてもそういう視点になってしまう。

その為、薬液のブラッシュアップは避けられない。

この点についてはユリメラさんには強く要請してある。

今は一日でも早く、納得できる薬液の完成を祈るばかりだ。


「気持ちはよく分かりますが、今は重要なのはそこではありません。ユリメラさんは必ず匂い問題を解決すると、頑張ってくれています。私達はその言葉を信じて今やることに集中しましょう!」


「「「はい!」」」

今やる事とは何なのか?

それはパーマの施術を習得する事に他ならない。

要はオールパーパスですよ、これを習得出来れば髪結いさん達も美容師に更に一歩近づけるということだ。


「さあ!練習練習!」


「「「はい!」」」

三人はモニター役の髪結いさん達を呼びに行った。


これまでにもオールパーパスの練習はこの三人には先行して行って貰っている。

その為、それなりにロッドが巻けている。

やはり髪結いさんとしてこれまで第一線で頑張っている証拠だ。

マリアンヌさんや、クリスタルちゃんの時にも感じたが、櫛の扱いが上手い。

一から学んできたシルビアちゃんとは大きく違う処だ。


三人は熱心に練習に励んでいた。

その様を俺とマリオさんが見つめている。

そしてオールパーパスを巻き終えた者から、パーマ液の一液を髪に塗っていく。

モニター役の方が何とも言えない複雑な表情を浮かべていた。

やはり匂いが気になるみたいだ。

でも俺がいる建前、苦情を入れる事は憚られるといった処であろう。


放置時間となった。

この時間の為にどうやらマリオさんが何かしら用意してくれていたみたいだ。


「こちらは最近温泉街ララで流行っている甘味で御座います、皆さん如何でしょうか?」

有難い気遣いだ、こういった処にも気を使えるマリオさんは流石だなと感じる。

一流の商人だ。

見倣いたいものだよ。

「これはなんですか?」


「これは温泉饅頭で御座います」


「へえー、なるほど・・・」


「マリアンヌさんの義息子さんが大判焼きからヒントを得て開発した商品の様です、美味しいですよ」

やるじゃないか・・・確かこの世界には饅頭は無かった筈・・・誰の入れ知恵だ?・・・美幸か?・・・いや・・・親父だな・・・


「では皆さん、頂きましょう」


「「「はい!」」」

そして俺はこんな事も有ろうかと、2Lサイズの水筒に温かいお茶を準備していた。

お茶にしておいて良かったー、コーヒーと迷ったんだよね。

万人受けするのはお茶だろうと考えた俺、ナイス!

俺はアイレクスさんに水筒を手渡す、我が意を得たりとコップを準備しだした。


放置時間が終了した。

一本だけロッドをバラして髪の状態を確かめる。

うーん、後五分は放置かな?


五分後、再び髪の状態を確認する。

うん!いいでしょう!


「いいでしょう、二液を塗ってください」


「「「はい!」」」

俺の指示に従って二液を塗布し出した三人、真剣に髪に向き合っている。


「そこ!もう少し全体的に塗ってください!ばらつきは無くすように!」


「はい!」

こうして初めてのこの世界のパーマ液による、パーマ講座は終了した。

仕上がりはまあまあといった具合だった。


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